ファクタリングは手続きが簡単でスピーディーに現金が用意できることから、経営者の間で利用する人が増えている資金調達サービスです。
売掛金があれば法人や個人事業主に関係なく、誰でも利用できます。利用者は売掛金をファクタリングの専門業者に売却でき、専門業者は買取額から手数料を引いた現金を利用者に支払います。利用者は後日、売掛先から支払われた売掛金を、そのまま業者に支払う仕組みです。
ファクタリングでは、「与信限度額」も重要になります。与信限度額とは商取引の際に取引先に対して設定する債務の上限額のことです。
今回はファクタリングにおける与信限度額について、上手に使う方法を解説します。
商取引における「与信」と「与信限度額」とは?
「与信」とは、企業が取引先の信用力を調査・分析して判定することで、取引先から売掛金を回収できなくなるリスクを最小限に抑えるために管理することを「与信管理」と言います。
商取引における「与信」について、詳しく解説します。
与信の意味は?
与信とは文字通り信用を与えることで、商取引においては取引先に信用を与えるという意味で使われる言葉です。
店頭で商品やサービスを提供する際は代金をその場で受け取りますが、製造業の場合は納品後、締め日などを経て代金を支払うのが一般的です。代金を確実に支払ってもらえる確証が「与信」というわけで、このような取引のことを「与信取引」と言います。
与信取引は言わば「ツケ払い」のため、代金が支払われない可能性もあります。そのリスクを最小限にするするため、取引先の経営状態などの情報を収集・分析することを「与信管理」と言います。
与信管理の結果から、取引先ごとに設定した債権の上限額が「与信限度額」です。融資の場合は融資限度額とも呼ばれ、貸し倒れリスクを最小になるよう設定します。
ファクタリングと与信限度額の関係
ファクタリングの利用を申し込むと、取扱業者は審査を行いますが、この審査は融資などの借入をする時の審査とは異なります。
融資など借入時の審査は、利用者の経営状態や信用情報を審査しますが、ファクタリングの審査は売掛先に重点を置いた審査です。つまり、業者は利用者の売掛先の「与信管理」を審査を通してすることになります。
ファクタリング業者はその結果から与信限度額を算出し、貸し倒れのリスクを判断し審査の可否を決定します。
与信限度額の設定方法
与信限度額は次のような情報をもとに決定します。
売掛先の財務情報
売掛先の損益計算書や貸借対照表などを元に、資金状況などを分析し、自己資本や利益や債務の比率を算出します。
売掛先の取引履歴
過去の取引の支払い状況や別の取引先との履歴の調査・分析をします。
売掛先の信用情報
信用情報機関に売掛先を照会し、過去の取引や支払に問題がなかったか調査します。
取引先の業界の景気
取引先の業界の景気動向与信限度額に影響します。社会全体が不況な場合は基準が厳しくなり、業界の景気が悪ければさらに厳しくなります。
売掛先の規模
売掛先の企業規模は与信限度額に大きく影響します。景気が悪くても上場会社や、官公庁などの場合は与信限度額が高くなります。
ファクタリングの与信管理は活用できる
ファクタリング業者は、利用者から買い取った売掛金が回収できなかった場合は、貸し倒れになるため、売掛先の与信管理を慎重に行います。そのため、ファクタリング業者の与信管理や与信限度額は正確で信用できるものと言えます。つまり、業者が優良と判断した売掛先は、今後取引を続けても安全な会社ということです。
ファクタリングが与信管理として役立つ点は、他にもあります。
与信管理のコスト削減ができる
自社で与信管理を行う場合、会計や財務、法律などのスキルや知識がある人材が必要で、取引先の情報収集などに時間がかかります。与信管理システムを導入すれば、人材や時間がかからずに済みますが、コストがかかります。ファクタリングを利用すれば、人員やや時間をかけずに与信管理ができます。
与信管理と資金調達が同時にできる
ファクタリングを利用すれば、与信管理と資金調達が一緒にできるので、大変便利です。
ただし、ファクタリングはあくまでも資金調達サービスのため、与信管理だけのために利用してはいけません。申し込みだけして契約をしない行為を繰り返すと、本当にファクタリングを利用したい時に断られる可能性があります。
自社の与信には影響がない
資金調達の際に金融機関からの融資を利用すると、自社の与信が調査されます。金融機関は、信用情報機関に自社の信用情報を照会するため、信用情報機関に利用履歴が残ってしまいます。
しかし、ファクタリングは借入ではないため、利用履歴が残ることはなく、自社の与信に影響がでることはありません。
ファクタリングの与信限度額算出方法
ファクタリング業者の与信限度額は、売掛金に70~90%を掛けた金額です。この割合のことを「掛け目」と言い、ファクタリング業者の一般的な掛け目は70~90%と言われています。
掛け目の基準はファクタリング業者によって異なりますが、売掛債権の信用度や売掛先の数、ファクタリング業者の利用回数などが影響します。
掛け目が大きければ大きいほど、利用者が手にする資金は多くなる仕組みです。
ファクタリング業者の与信管理で最重要とされるのが、売掛先の信用度です。売掛先の企業規模が大きいかどうか、経営状態がいいかで掛け目が左右します。経営実績も重要で、設立したばかりの会社の場合は実績がないため、信用度が低いと判断され、掛け目が小さくなります。
ファクタリングは1社だけでなく、数社の売掛金を売却して必要な資金を調達することが可能です。その場合、ファクタリング業者は売掛金の回収率が高くなるため、掛け目が大きくなり与信限度額も高くなります。
与信限度額は、同じファクタリング業者を何度も利用する事でも高くなります。ファクタリング業者のお得意様になることで、信頼関係が生まれるからです。
与信限度額は定期的な見直しが必要
与信限度額は、一度算出したら終わりではありません。
対象となる売掛先の経営状況は、急に変動する可能性があるため、定期的に見直しを行うことが大切です。
自社で与信管理を行っている場合は、人員や時間の都合で一度算出した与信限度額がそのままになってしまう可能性があります。しかし、ファクタリングの場合は申し込むたびに見直しを行うため、常に最新の信頼できる情報なので安心です。
ファクタリング業者が算出した与信限度額は、今後の取引に大いに役立てることができます。
ファクタリングにおける与信限度額とは?仕組みを知って有利な取引のまとめ
ファクタリングにおける与信限度額とは、ファクタリング業者が売掛先の与信管理をした上で設定する買取限度額のことです。業者は審査の際に売掛先の情報を収集・分析の上、与信管理を行います。
自社で売掛先の与信管理をすると、人員や時間などのコストがかかるため、ファクタリング業者が代わりに与信管理をしてくれると助かります。
ファクタリングは資金調達サービスのため、与信管理の目的だけで利用するのはタブーです。しかし、ファクタリング業者が算出した与信限度額を上手に利用すれば、資金調達と売掛先の与信管理を一緒にすることが可能です。