企業の大小にかかわらず、資金調達方法といえば融資が主流でしたが、ここ数十年の間に「ファクタリング」が広く普及し始めています。ファクタリングは融資とは違い、利用する会社が赤字や債務超過でも利用でき、即日現金化できることから利用する経営者が増えているのです。
ファクタリングに対し、リバースファクタリングもあります。数十年の間に普及したファクタリングもまだまだ馴染みがないので、リバースファクタリングを知らない人も多いようです。
この記事ではリバースファクタリングについて、ファクタリングとの違いや利点を分かりやすく解説します。
一般的なファクタリングについて
そもそもファクタリング自体を詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
ファクタリングの歴史は古く、16世紀頃にイギリスで誕生したと言われていて、日本には1970年代に登場しています。しかし、その頃の日本では手形取引が主流で、ファクタリングは一般に普及しませんでした。それが1990年代、バブルが崩壊して不渡りになる取引手形が続出し、ファクタリングが注目されるようになりました。以後、法改正やインターネットの普及など、ファクタリングを利用する環境整備が進み、近年では広く利用されるようになっています。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングは企業や個人事業主が売掛債権(売掛金)を、専門の業者に買い取ってもらう資金調達方法です。
小売店の場合、商品やサービスを提供するとその場で料金を受け取りますが、卸売業などの場合は納品後に支払いを受けるのが一般的です。卸売業の取引先は締め日を設定しているのが一般的なため、月末が締め日だった場合、その締め日以降に支払いを受けることになります。つまり、月の初めに納品しても、月末あるいはその翌月にならないと収入を得ることができません。
ファクタリングを利用すると、売掛先に納品した時点で売掛金を専門業者に売却できるため、売掛先の支払期日より1ヶ月以上早く収入を得ることができます。
売掛金はファクタリングを取り扱う専門の業者に売却することができます。利用者は売掛金から専門業者への手数料を引いた金額を受け取る仕組みです。手数料はファクタリングの契約内容や、専門業者によって異なりますが1~20%が相場と言われています。
ファクタリングを利用する方法
ファクタリングを利用するには、専門業者に申し込みをする必要がありますが、申し込みから審査・入金まで全てオンラインで完結する業者がほとんどです。
利用者がインターネットで申し込みをすると、必要書類を添付して審査を受けます。必要書類は運転免許証などの本人確認書類や売掛金を証明する請求書などの書類、通帳のコピーなどです。書類提出後は審査がありますが、書類に不備がなく、売掛先の経営状態に問題がなければ、審査はすぐに終わります。
審査の時間は業者によって異なりますが、30分程度のところがほとんどで、問題がなければその日のうちに現金を手にすることが可能です。
リバースファクタリングとは?
リバースファクタリングは、発注した会社が取引先の請求書にある金額を、ファクタリングを取り扱う業者に一時的に立て替えてもらうサービスです。2008年のリーマンショック以降に注目され始めました。
リバースファクタリングは資金調達ではなく、取引先への支払いを先延ばしするサービスになります。
利用者は、自社が支払わなくてはいけない取引先への請求金額を、ファクタリング業者に支払期日までに立て替え払いしてもらいます。利用者は後日、ファクタリング業者にその費用と手数料を支払う仕組みです。
リバースファクタリングとファクタリングはどこが違う?
上記の項でファクタリングとリバースファクタリングについて解説しましたが、それぞれの違いをもっと分かりやすく解説します。
利用者の立場と債権が違う
ファクタリングを利用するのは「商品やサービスを売る会社」、つまり受注企業で、リバースファクタリングを利用するのは逆に「買う会社」、発注企業です。そのため、ファクタリングで対象になる債権は「売掛債権(売掛金)」で、リバースファクタリングは「買掛債権(買掛金)」になります。
目的が違う
ファクタリングの目的は、売掛債権(売掛金)を現金化して予定より早く資金を増やすことです。リバースファクタリングは、支払期限を先延ばしすることで一時的な資金不足などをカバーするのが目的です。
リバースファクタリングを利用する方法
リバースファクタリングを利用するには、ファクタリングの専門業者に申し込む必要がありますが、ファクタリングと違い、リバースファクタリングを扱う会社は限られています。リバースファクタリングはファクタリングに比べ、取り扱う会社が少ないので注意が必要です。
申し込み後はファクタリング同様、審査が行われますが、申し込んだ企業が審査を受けることになります。売掛金を売却するファクタリングと違い、リバースファクタリングは立て替えてもらったお金を返す必要があるため、申し込んだ企業の経営状態などを厳しく審査されます。
審査を通過すると、ファクタリング業者と利用者間での契約が行われ、立替額や立替期日、手数料、返済期日が決まり、利用者は期日までに立て替えてもらった金額を業者に支払う仕組みです。この時、立替額にファクタリング業者への手数料を上乗せして支払います。
リバースファクタリングもファクタリング同様、インターネットで申し込みから契約まで完結することができ、振り込みまでの時間は最短3時間です。業者によっては審査完了まで最短10分、振り込みまで最短40分というところもあるので、早急に支払う必要がある場合は利用業者の選定が必要です。
リバースファクタリングの利点は?
リバースファクタリングを利用すると、利用した企業は支払いが先延ばしできるので資金繰りが楽になります。それだけでなく、受注先は希望すれば買掛金を早く回収することができるため、受注先の資金繰りも楽になります。
また、支払先が何社もある場合、ファクタリング会社を利用して一本化することができるので、利用する企業の支払いの手間を省くことも可能です。
受注先がリバースファクタリングを利用する会社の下請け業者だった場合、下請法への対応ができます。下請法とは「下請事業者に代金を支払う際は、納品されてから60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定める必要がある」とされる法律です。60日を超えると下請法違反になります。リバースファクタリングを利用すれば、自社に資金がなくてもファクタリング業者が立て替えてくれるので、支払いの先延ばしが可能です。
リバースファクタリングの欠点は?
リバースファクタリングを利用するためには「でんさい」を導入する必要があります。「でんさい」とは電子記録債権のことで、手形や振込に代わる決済手段です。でんさいは支払事務や搬送コストの軽減ができるため、導入している企業も多いのですが、導入していない場合は金融機関への申し込みや審査などの手間がかかります。
また、ファクタリングと違い、審査の対象が自社になるため、経営状態が思わしくない場合は利用を断られる可能性があります。
リバースファクタリングとは?ファクタリングとの違いや利点のまとめ
今回はリバースファクタリングについて、ファクタリングとの違いや利点を分かりやすく解説しました。
リバースファクタリングはファクタリングとは全く逆のサービスですが、自社の資金繰りを安定させる点では同じです。買掛金があれば両方を利用することもできるので、資金調達の際にはどちらも検討して賢く利用することをおすすめします。