「ファクタリングを国が推奨しているって本当?」
「なんで推奨しているの?」
経済産業省、中小企業庁、金融庁などのHPでは、明確にファクタリングの利用が推奨されています。つまり、日本が国として推奨している資金調達法といえます。
まだファクタリングがそこまで浸透していない日本では、ファクタリングという契約が合法なのかどうか?そこを疑う声も少なくありません。
この記事ではなぜファクタリングは合法なのか?という点を法律を紹介しつつ解説し、さらになぜ国がその利用を推奨しているのかという部分までしっかりと解説していきたいと思います。
ファクタリングが違法ではない法的根拠
ファクタリングは違法である、もしくは違法とは言い切れないもののグレーな取引であると考えている経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかしファクタリングという取引は法律に則った合法な取引であり、グレーなものでもありません。そんな法的根拠を簡単に解説していきます。
売掛債権は売買できる
ファクタリングは企業が持っている売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を入金期日前に現金化するという資金調達法です。そこでまずは、そもそも売掛債権とは譲渡できるものなのか?この点を確認しておきましょう。
民法第466条の「債権の譲渡性」という法律では以下のように定められています。
「債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない」
ここでいう債権には当然売掛債権も含まれており、売掛債権を譲渡する、つまり売買するということは合法な取引であることがわかります。
債権譲渡禁止特約がついていても譲渡できるように
売掛債権は譲渡できるというのは上で紹介した法律の通り。しかし気になるのが「その性質がこれを許さないときは、この限りでない」という部分です。
企業を経営し、掛け取引を行っているという方は、「債権譲渡禁止特約」というものをご存じの方も多いかと思います。一部の掛け取引の契約に含まれる特約であり、文字通りその売掛債権を譲渡することを禁止するという特約です。
こうした特約がついている売掛債権は、法律の文章で言う「その性質がこれを許さないとき」に該当するものと考えられます。
しかし、2020年に行われた民法の改正で新たな法律が加わりました。同じく民法466条「債権の譲渡性」では、現在以下のようにも定められています。
「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない」
つまり、仮に取引先が債権譲渡禁止特約をつけた売掛債権でも、売買が可能になったということです。
ファクタリングを国が推奨している主な理由
ファクタリングは国が推奨する資金調達法です。ではなぜ国はファクタリングを推奨しているのか?あくまでも推論の部分も含みますが、その理由をいくつか紹介していきましょう。
推奨する理由① 欧米など諸外国では盛んに利用されている
日本国内ではまだそこまでメジャーではないファクタリングですが、アメリカやヨーロッパ各国などでは以前から活用されており、現在も気軽に活用する企業が数多く存在しています。
ベンチャー企業の中には、起業時に債権管理部門、与信管理部門などを自社内に設けず、売掛債権のすべてをまとめてファクタリングに出し、債権管理や与信管理をアウトソーシングするということも珍しくありません。
ファクタリングを利用する以上手数料は必要ですが、その分自社内に設置する部署を減らすことができ、経費や人件費を削減できるため、手数料は大きな問題ではないようです。
欧米各国がやっているから、それを真似して日本もやるのか?
そんな言葉も聞こえてきそうですが、ファクタリングに関して注目すべきはそこではありません。ポイントはファクタリングを活用しても、大きな悪影響がないことが実証されているという点でしょう。
欧米各国がすでに導入しており、一定程度の効果を挙げているということは、日本国内でも効果が見込める。そういった意味で国がファクタリングの推奨をしているものと考えられます。
推奨する理由② 貸金契約ではない新たな資金調達法として
これまで日本国内で、企業が資金を確保する方法といえば、金融機関等からの資金融資が中心でした。もちろん手持ちの資産売却や社債の発行などという方法もありますが、中心となるのは資金融資、ビジネスローン、商工ローンといった、いわゆるお金を借り入れる形の方法です。
貸金契約が悪いということではありませんが、借りた以上返済する義務が発生します。また、借り入れるといっても限度があり、一定以上の資金は借り入れることができないという問題もあります。
ファクタリングは債権譲渡契約ですので、貸金契約ではありません。もちろん返済の義務もなく、債務超過であるかどうかといった信用情報にもあまり影響されない資金調達法です。
こうした方法を国として推奨することで、企業の資金調達法の幅を広げ、より活躍する起業を生み出すというのが国としての大きな目的と考えられるでしょう。
推奨する理由③ 企業の倒産を防ぐため
日本国内の企業は9割以上が中小企業であり、給与所得者の7割がこういった中小企業で働いているのが現状です。
つまり、国を支える大部分の労働者が中小企業に勤務しているため、国としては中小企業の倒産を防ぐことが、失業率の増加を抑える大きな手段となります。
もちろんほかにも中小企業を支援する策はいくつもありますが、こうした策のひとつとしてファクタリングの利用促進があります。国としてもより多くの中小企業が倒産せずに経営を続け、ファクタリングを活用するなどして経営状態を改善できれば、それだけ多くの税収が望めるわけです。
国の経済を支える中小企業の倒産を防ぐためにも、国としてはファクタリングという資金調達法を推奨するということでしょう。
国が推奨するファクタリングの上手な活用法
では、国も推奨するファクタリング。どのように活用するのがベストか。この点に関して簡単に解説していきましょう。
資金繰りが厳しいときに利用する
ファクタリングは最初に説明した通り、売掛債権を譲渡することで、売掛金を早期現金化する方法です。利用に関しては審査にも比較的通りやすく、また返済の必要がないということもあり、手軽に利用できるという特徴があります。
一方、ファクタリングというのは将来入金されるはずの売掛金を先に手に入れる方法です。つまり、売掛金の入金予定日には、入るはずだった現金が入らないということでもあります。
その時にまた資金繰りが難しくなれば、当然再びファクタリングに頼るということになりかねません。こうなるとファクタリング依存の状況に陥り、むしろ経営が悪化する可能性も考えられます。
ファクタリングはあくまでも一時的な資金不足を補うものと考え、資金繰りが厳しいタイミングで上手に活用するのが推奨される利用方法といえます。
ほかの資金調達法と併用する
企業の資金不足にはいろいろな理由があるかと思います。原材料費の高騰や為替レートの急変、原油価格の上昇などはわかりやすい資金不足の原因となります。
それだけではなく、例えば提供している商品の需要が急に高まり、それまで以上に原材料を仕入れる必要が出たという場合でも、資金不足は発生します。売り上げは好調なのに、その商品を作るための原材料費が足りなくなり、資金繰りがうまくいかなくなれば、儲けは出ているのに倒産するという黒字倒産の可能性もあります。
企業の資金繰り改善は、何よりその根本的な部分を改善しないといけません。そのためにはまずは急場を凌ぎながら、その原因を究明し、対処していく必要があります。
こういったケースで急場を凌ぐために有効なのがファクタリングです。ファクタリングで一時的な資金を確保しつつ、根本的な部分を改善するための予算を金融機関などの融資で賄う。これが推奨できる活用方法となります。
まとめ
ファクタリングは経済産業省、中小企業庁、金融庁などでもその利用が推奨されている、国として利用が推奨されている合法な資金調達法です。
一般的な資金融資と比較しても、現金化が早く、審査に通りやすく、しかも返済の義務がありませんので、より利用しやすい資金調達法といえるでしょう。
とはいえ、ファクタリングはあくまでも資金調達法の一部であり、万能な資金調達法ではありません。ファクタリングの特徴をしっかりと把握し、ほかの資金調達法と併用することで、より企業経営はしやすくなるかと思います。
まずはその仕組みやメリット・デメリットをしっかりと把握するようにしましょう。