「接骨院を経営しているけど、ファクタリングは利用できる?」
接骨院のように、施術を行いその報酬をその場で患者から受け取るような業種の場合、原則的に売掛債権が発生しません。
売掛債権がないと、ファクタリングの利用はできないように感じますが、接骨院であればファクタリングを利用する方法があります。それが診療報酬ファクタリングです。
では接骨院でも利用できる診療報酬ファクタリングとはどのようなものなのか?このあたりに関して解説していきたいと思います。
接骨院でもファクタリングは利用できるか?
接骨院とは、国家資格である柔道修復士資格を持つ方が開業している施設です。柔道修復士が行えるのは、医療ではなく医療類似行為。按摩や鍼灸と同様に、医療に類似した行為までです。
しかし接骨院で受ける治療の中には、一部健康保険が適用される部分があり、こういった保険適用診療を行っている接骨院であれば、ファクタリングは利用可能ということになります。
保険適用診療を行っている接骨院であれば利用可能
ファクタリングという資金調達法は、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで、売掛金の早期現金化を図るというものです。つまり売掛債権がなければファクタリングは利用できないということになります。
多くの企業は常に複数の売掛債権を持っているもの。しかし一部業種ではこの売掛債権を持たないというケースもあります。
分かりやすい業種で言えば、小売店や飲食店など。顧客に商品やサービスを提供し、その場でその対価を受け取るような業種の場合、掛け取引とはなりませんので売掛金、売掛債権も持たないということになります。
接骨院もこうした小売店や飲食店と同様となります。施術などを行い、その場で施術料を受け取りますので、売掛債権を持たない業種ということになります。
しかし、接骨院の中でも保険適用診療を行っている接骨院であれば、この保険適用診療を行った分に関してはファクタリングが利用可能となります。この点について次の項で解説していきます。
接骨院が利用できる診療報酬ファクタリング
接骨院を始め、病院や歯科医院など、保険診療が認められている医療機関、医療類似行為機関では、診療報酬ファクタリングという種類のファクタリングが利用可能です。
一般的なファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで売掛金を早期現金化しますが、診療報酬ファクタリングでは、保険団体に対する診療報酬請求を診療報酬債権と見做し、この債権を譲渡することで、診療報酬を早期現金化します。
保険診療を受けた場合、被保険者である患者が負担するのは診療報酬の3割です。残り7割りに関しては、国民健康保険や社会健康保険などの負担となります。
保険診療を受けた方は、その場で診療報酬の3割を支払います。医療機関は残り7割に関して、毎月保険団体に請求を出し、後日保険団体から給付を受けます。一般的に保険負担分の7割が入金されるのは、請求してから2ヶ月後であり、いわゆる掛け取引のような形となります。
接骨院でも一部保険診療を行うケースがありますので、こうした保険診療における、保険負担分である7割分に関しては、ファクタリングを利用できるということになります。
接骨院で保険適用診療となるケース
ちなみに接骨院で行う施術のすべてが保険診療というわけではありません。実際には細かな規定がありますが、保険診療として認められるのは、接骨院において急性のケガであることが条件となります。
また、ケガの症状を具体的にいうと、骨折や脱臼、捻挫、打撲などとなります。
つまり、上記以外の症状であったり、急性ではなく慢性の症状に関しては保険適用外ということ。慢性的な肩こりや腰痛の痛み軽減などに関しては保険診療とはなりません。
接骨院が利用できる診療報酬ファクタリングの特徴
では、接骨院でも保険診療を行えば利用することができる、診療報酬ファクタリングに関して、その特徴を紹介しておきましょう。
診療報酬ファクタリングも、原則は売掛債権の買取型ファクタリングと同様の流れになりますが、診療報酬ファクタリング独自の特徴もいくつかありますので、そのあたりを中心に紹介していきます。
3社間ファクタリングで契約
買取型ファクタリングの契約には、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあり、診療報酬ファクタリングは3社間ファクタリングとなります。
2社間ファクタリングは、ファクタリングを利用する企業のみが契約に参加するため、申し込みから契約、現金化までのスピードが早く、最短即日に現金を手にすることもできる契約方法です。その代わりに手数料相場は高めで、10~30%程度と言われています。
2社間ファクタリングのもうひとつの特徴は、取引先に知られることなく利用できるという点。ファクタリングを利用していることが取引先に知られると、「ファクタリングを利用するほど経営状態が良くない企業」という印象を持たれる可能性があります。
どの企業も、経営状態の良くない企業とは取引をしたくはないもの。つまり取引先にファクタリングの利用を知られることで、その後の取引に影響が及ぶ可能性も考えられます。
3社間ファクタリングは、申込企業と取引先がともに契約に参加する方式。ファクタリング会社を含めて3社が契約に参加するため、現金化までやや時間がかかるというデメリットがあります。
ただし、取引先が契約に参加することで、売掛金の未回収リスクは大幅に減るため、手数料相場が安いというメリットがあります。相場は1~9%程度。2社間ファクタリングよりも好条件で契約することができます。
接骨院が利用できる診療報酬ファクタリングは3社間ファクタリング。つまり契約まで時間が多少必要であり、取引先にファクタリングの利用を知られるというデメリットがあるものの、手数料が安いというメリットがある方式となります。
しかし、ここでポイントとなるのが、接骨院が利用する場合、取引先は健康保険団体であるという点。接骨院と健康保険団体の関係性は、取引がある企業間とはやや違い、接骨院の経営状態がどうであろうが、取引自体に影響がないという特徴があります。
つまり、取引先に知られることで、その後の取引に影響が出るというデメリットは考える必要がないということになります。
そう考えると、診療報酬ファクタリングはメリットが非常に大きい契約であるといえるでしょう。
手数料は安く審査も通りやすい
接骨院が利用できる診療報酬ファクタリングは3社間ファクタリングのため、手数料相場が安くなります。さらに、取引先にあたる健康保険団体は、健康保険制度を支える公的機関となりますので、非常に信頼度が高い取引先となります。
一般的なファクタリング契約においても、取引先が信用できる企業・機関であるほど手数料は安くなります。当然公的機関である健康保険団体が取引先となる診療報酬ファクタリングは、かなり手数料が安いということになります。
同時に審査の通りやすさという点も大きな特徴です。
ファクタリング契約においては、必ず審査が行われます。この審査は、売掛金が必ず期日までに入金されるかどうかが最重要視される審査です。上記の通り、健康保険団体が、支払い期日までに診療報酬の給付を行わないという可能性は限りなく低く、それだけ審査にも通りやすいということになります。
審査に通りやすく、しかも手数料が安い、さらに好条件で契約できるというのが、接骨院が利用できる診療報酬ファクタリングの特徴ということになります。
請求額満額がファクタリング対象とはならない
診療報酬ファクタリングの特徴として、診療報酬請求の額面金額満額でのファクタリング契約はできないという点があります。
接骨院などの医療機関が提出した診療報酬請求は、健康保険団体が精査を行い、確実に保険診療として認められた分のみ、診療報酬を支払います。つまり請求金額と給付金額に差が出るケースがあるということ。
そのため診療報酬ファクタリングの場合、請求金額の80%程度がファクタリング対象となり、残りの20%程度はファクタリング対象外となります。
特に保険診療と保険対象外の診療が混ざるケースが多い接骨院などの場合、ファクタリング対象額が厳しくなるケースは多くなると考えられますので、申し込みの際は、どの程度の金額がファクタリング対象となるのかをきちんと確認してから契約するようにしましょう。
ファクタリング・接骨院のまとめ
接骨院は、一部保険適用診療を行うケースがあります。この保険診療を行った分に関しては、診療報酬の7割分が、2ヶ月後の入金となるため、その期間経営を維持するための資金が必要になります。
余裕を持って経営できている接骨院は問題ありませんが、急に支払いが必要になった場合など、現金不足の問題が生じた場合には、診療報酬ファクタリングを利用することができます。
診療報酬ファクタリングは、一般的な売掛債権買取型のファクタリングよりも好条件で契約できるケースが多いので、積極的に利用したいサービスです。
診療報酬ファクタリングには、特徴的な部分もありますので、しっかりと特徴を把握した上で、上手に活用しましょう。