ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社の譲渡して、売掛金を入金期日より前に受け取る資金調達法です。
ファクタリングの特徴は、貸金契約ではなく、債権譲渡契約になるという点。貸金契約ではないため会社の信用情報に影響を与えることなく資金調達ができる方法となります。
では、そんなファクタリング契約において交わされる契約書ではどのような点に注目し、どのような点に注意すべきか、そのあたりを解説していきたいと思います。
ファクタリング契約の契約書でチェックすべき項目
ファクタリング契約とは債権譲渡契約です。契約ですからもちろん契約書が存在します。
まずはそんな契約書において、チェックすべき点を紹介していきましょう。
債権譲渡契約と明記されているか
まずはなんといっても大前提となる部分です。
ファクタリングは債権譲渡契約ですので、債権譲渡契約である旨がしっかりと明記されているかどうかを確認しましょう。
ファクタリング会社の中には、ファクタリング会社を装う悪徳業者が紛れ込んでいる可能性があります。こうした悪徳業者の中には、ファクタリング契約と見せかけて、法外な金利の貸金契約を結ぶことで、厳しい取り立てを行うなどの行為を働く業者もいます。
こうした悪徳業者と契約を交わさないためにも、まずは債権譲渡契約であるときっちり明記されているかどうかを確認しましょう。
手数料や諸経費に関して
続いて注目すべきは、手数料や諸経費、さらに違約金や損害賠償金など、お金に関する項目です。
特に手数料はファクタリング契約の肝といってもいい部分です。事前に行われる審査の結果、提示された手数料と相違がないかなどをしっかりと確認しましょう。
また、ファクタリング契約では、登記に関する費用や事務手数料など、手数料以外にも諸経費がかかり、原則この諸経費も利用企業の負担となります。どんな費用がどの程度かかるのかという点もしっかりとチェックしましょう。
償還請求権の有無
ファクタリング契約において重要になるポイントとしては、償還請求権があります。
償還請求権の付随されている契約においては、万が一売掛金が回収できなかった場合、ファクタリングを申し込んだ企業が、持ち込んだ売掛債権を買い戻す必要が生じます。つまり、売掛金未払いのリスクを、申込企業が負う契約ということになります。
ファクタリングは債権を売買する契約ですので、原則として売掛金の未回収リスクは、債権を買い取ったファクタリング会社が負うべきものとなります。そのため、償還請求権は付随しない契約が基本です。
実際に過去の判例を見ると、償還請求権が付随された契約は、ファクタリング契約(債権譲渡契約)ではなく、売掛債権を担保とした貸金契約であるとした判決もあるように、ファクタリング契約ではこの償還請求権が付随されないのが一般的です。
償還請求権のない契約はノンリコース契約とも呼ばれ、ファクタリング契約はノンリコース契約であるべきともいえます。
償還請求権がある契約は利用者にとって非常に不利な契約となりますので、その有無に関してはしっかりとチェックしましょう。
契約期間に関して
ファクタリング契約の大まかな流れを簡単に紹介しておきましょう。
利用企業は売掛債権をファクタリング会社に持ち込み、審査を受けた上で契約を結びます。契約が結ばれると、契約書にある通りの金額が利用企業に振り込まれます。後日取引先から売掛金が入金されたら、その売掛金をファクタリング会社の送金して契約は完了となります。
こうした1回限りの契約の場合、契約期間も利用企業がファクタリング会社に売掛金を送金するまでが契約期間となります。
しかし、ファクタリング契約の中には継続的な契約もあり、こうした場合は契約期間も長くなります。自社がどのような契約を希望しているのかによって契約期間も変わりますので、しっかり自社が必要な期間の契約になっているかどうかが、契約書に記されているかを確認しておきましょう。
債権譲渡登記に関して
ここからは特に2社間ファクタリングの契約書でチェックするべき項目をいくつか紹介しておきます。まずは債権譲渡登記に関してです。
特に2社間ファクタリングの場合は、債権譲渡登記が必須となるケースがほとんどです。これは、債権の二重譲渡を防ぐために行われます。
債権譲渡登記に関しては、外部の司法書士にその業務を委託するのが一般的で、登記に必要な登録免許税や司法書士への報酬も利用企業負担となります。債権譲渡登記の有無や、その登記に関する費用に関しても契約書上で確認しておきましょう。
債権譲渡通知の有無
債権譲渡通知とは、債権が譲渡された旨を、売掛先である取引先に通知するという契約です。
2社間ファクタリングのメリットとして、取引先に知られることなく利用できるという点がありますが、債権譲渡通知がある契約書の場合、このメリットを享受できないということになります。
特に取引先に知られたくないという方は、債権譲渡通知があるかないかは重要なポイント。契約書を隅々までチェックし、通知の有無に関して記載されているかどうか、契約書に記載されていない場合はどうなるのかなどを確認してから契約書にサインするようにしましょう。
報告義務の有無や内容
ファクタリング契約の契約書には、報告義務の有無が記載されているケースがあります。報告義務とは、契約期間中に売掛先である取引先の業務状況が変化した場合、特に悪化した場合にファクタリング会社にその旨を報告する義務のことです。
売掛先の経営状況などに関しては、ファクタリング会社よりも利用企業の方が知る機会が多いため、こうした事態になった場合に報告すべきかどうかが契約書に記されています。
もし、報告義務があるのに報告をしなかった場合、違約金が発生するケースなどもあるため、報告義務の有無を、また義務がある場合はどのような事態で報告をすべきなのかなどをしっかりと確認してから報告書にサインしましょう。
ファクタリング契約を交わす際の注意点
ファクタリング契約は、取引する売掛債権によっては、数千万円単位の取引の契約書となります。当然その契約書はそれだけの価値のある契約書となりますので、契約の際は慎重になって然るべき契約書といえるでしょう。
そんなファクタリング契約を交わす際の注意点を紹介しておきましょう。
必ず控えを受け取る
契約書である以上、まずは何より細部までしっかりとチェックするというのは基本です。契約書に書いてあることすべてにおいて、不明点がないことを確認した上でサインをしましょう。
また、サインをした後には必ず契約書の控えを受け取ってください。契約締結後に何か問題があった場合、手元に契約書の写しがないと、相手との話し合いもできません。
契約の基本ですが、契約書の写しを受け取り、契約完了まで大切に保管してください。
2社間ファクタリングでは業務委託契約書も必要
2社間ファクタリングでは、ファクタリング契約の契約書のほかに、業務委託契約書も必要になります。これは、ファクタリング会社に代わって、利用企業が売掛金の回収を行うためです。
2社間ファクタリングの契約では、債権の所有者はファクタリング会社になりますが、売掛金の振込口座は変更されません。
つまり、債権者であるファクタリング会社に代わって、利用企業が売掛金を一旦受け取るという形になりますので、業務委託契約書が必要になるわけです。
ファクタリング・契約書のまとめ
ファクタリングは非常に利用しやすい資金調達法です。しかし契約である以上契約書が存在し、その契約内容は契約書にすべて記されています。
そのため契約書のチェックは非常に重要です。特に細かなポイントに関しては、つい見逃してしまいがちですが、ファクタリング契約の契約書はしっかり隅々までチェックし、不明点がない状態でサインするようにしましょう。