「ファクタリングをしたのはいいけど仕訳はどうすればいい?」
「なんで仕訳の時に未収入金になるの?」
ファクタリングも立派な取引であり、取引が行われる以上現金が移動します。現金が移動するということは、仕訳をする必要がありますので、仕訳の方法は知っておく必要があります。
ファクタリングの仕訳はどうすればいいのか?なぜ未収入金として扱うのか?など、ファクタリングと仕訳に関して紹介していきましょう。
未収入金とは?
まずは未収入金という言葉に関して簡単に解説しておきましょう。
未収入金とは読んで字のごとく、まだ入金されていない金銭のことを指す勘定科目です。特に未収入金は、一般的に本業の活動以外で発生した債権に対して使う勘定科目となりますので、ファクタリングで得た現金の仕訳で活用される勘定科目も、この未収入金となります。
2社間ファクタリングを利用した場合の仕訳
ファクタリングを利用した際、貸借対照表ではどのように仕訳をするべきか。まだファクタリング自体が新しい資金調達法であるため、仕訳に関して分からないという方も多いかと思いますので、このあたりを紹介しておきます。
紹介するのは利用する企業も多い2社間ファクタリングのケースです。まずは2社間ファクタリングの契約の流れを簡単に紹介しておきましょう。
1. 売掛債権が発生する
2. 売掛債権をファクタリング会社に持ち込み審査を受ける
3. 審査の結果問題なければファクタリング契約を結ぶ
4. ファクタリング会社から手数料などを差し引いた金額が利用企業に入金される
5. 取引先から売掛金が利用企業の口座に振り込まれる
6. 売掛金を受け取った利用企業は、ファクタリング会社に売掛金を送金する
簡単なファクタリングの流れは上記のようになります。ポイントは売掛債権の所有権はファクタリング会社に移動しますが、売掛金の入金先は移動しないという点。形としてはファクタリング会社に代わって、利用した企業が売掛金の回収を行う形になります。
この流れの中で、仕訳が発生するタイミングは、2以外のタイミングです。それぞれのタイミングでの仕訳に関して解説していきましょう。
売掛金が発生したときの仕訳
ファクタリング契約の順を追って仕訳の方法を紹介するため、まずは売掛債権が発生したタイミングでの仕訳を紹介しておきましょう。
ここから先は、100万円の売掛債権を5%の手数料でファクタリング契約するケースで考えます。
〇貸方
売掛金 100万円
〇借方
売上 100万円
売掛債権が発生したらまずは貸方に売掛金を計上し、借方は売り上げで記載します。
ファクタリング契約を結んだ時の仕訳
上の売掛債権をファクタリング会社に譲渡する契約を結んだタイミングの仕訳に関して紹介していきます。
〇貸方
未収入金 100万円
〇借方
売掛金 100万円
売掛債権を譲渡しますので、貸方は未収入金の表記になります。売掛債権の譲渡による収入ですので、本業の営業活動での収入ではありませんので、未収入金となります。
借方は売掛金100万円という表記になります。
仮にファクタリング契約と同時に、ファクタリング会社から入金があった場合には仕訳の方法も少々変わります。
〇貸方
普通預金 95万円
売上債権売却損 5万円
〇借方
売掛金 100万円
まずは、ファクタリング会社から95万円が入金されますので、それを普通預金として計上、さらに手数料を売却損として記載します。貸方は売掛金100万円のままで問題ありません。
この状態で次の「売掛債権の譲渡代金が入金された時の仕訳」を飛ばして「取引先から売掛金が入金されたタイミングの仕訳」の項へ進みましょう。
売掛債権の譲渡代金が入金された時の仕訳
ファクタリング会社との契約締結後、ファクタリング会社から売掛債権の譲渡代金が入金された際の仕訳の仕方を紹介します。最初に設定した通り手数料は5%とします。
〇貸方
普通預金 95万円
売上債権売却損 5万円
〇借方
未収入金 100万円
ファクタリング会社から手数料を差し引いた95万円の現金が入金されますので、この分は普通預金となります。手数料分は売却損として貸方に記載します。
借方では、まだ入金されていない売掛金の100万円を未収入金として記載します。売掛金の100万円は本業の営業活動で得る収入ですので、未収入金の表記はおかしいように感じますが、ファクタリング契約が締結されていますので、売掛金を受け取る権利はファクタリング会社に移っています。
状態としてはファクタリング会社に代わって売掛金の回収を代行する立場になっていますので、借方には未収入金となります。
取引先から売掛金が入金されたタイミングの仕訳
後に売掛金の入金期日までに、取引先から売掛金100万円が入金されます。このタイミングでの仕訳を解説しておきましょう。
〇貸方
普通預金 100万円
〇借方
預かり金 100万円
取引先から入金された売掛金100万円は、ファクタリング会社に代わって回収を代行した金銭となりますので、預かり金が100万円となります。もちろん100万円の現金が手に入ったのは間違いありませんので、普通預金が100万円となります。
売掛金をファクタリング会社に送金した後の仕訳
取引先から売掛金が入金されたら、この売掛金をファクタリング会社に送金します。そのタイミングでの仕訳を紹介しておきましょう。
〇貸方
預かり金 100万円
〇借方
現金・預金 100万円
これでファクタリング契約に関する仕訳は完了です。ファクタリングは新しい資金調達法と言ってもその仕組みや契約の流れを把握していれば、仕訳自体はそこまで複雑ではありません。
経理担当者の方にしっかりファクタリングの仕組みを解説し、理解してもらえれば対応してもらえるかと思いますので、説明しておきましょう。
ファクタリングの仕訳の注意点
ファクタリングの仕訳における注意点はいくつかありますが、その中でも特に注意すべきポイントに関して2つほど紹介しておきましょう。
ファクタリングは消費税非課税
まずはファクタリング契約における消費税に関してです。
ファクタリングにおける債権譲渡取引は消費税非課税取引となります。そのため仕訳の際も消費税を考慮する必要はありません。
ただし、ファクタリング契約の中で、債権譲渡登記が必要な場合、この登記費用に消費税が課税されることはあります。債権譲渡登記を外部の司法書士に委託する場合、この司法書士への報酬が発生しますが、この報酬は消費税課税対象です。
また、司法書士へ支払う報酬に関しても、ファクタリングを利用する企業の負担となるのが一般的ですので覚えておきましょう。
決算を跨いだ場合売り上げは課税対象
ファクタリング契約のタイミングによっては、ファクタリング契約が成立してから、現金が入金される間に決算期末を跨ぐ可能性があります。
こうしたタイミングのファクタリングでは、入金がまだでも売り上げは立っていることから、売り上げは課税対象となり、納税の必要がありますので気をつけましょう。
ファクタリング・未収入金のまとめ
ファクタリングを利用する場合、当然ですが仕訳の必要があります。仕訳のタイミングは、債権が譲渡されたタイミングや、現金が動いたタイミングで発生しますので、その都度しっかり仕訳をしていきましょう。
この記事では2社間ファクタリングに関して紹介しましたが、3社間ファクタリングでも仕訳の仕方は変わりますし、買取型ではなくて保証型のファクタリングでもまた仕訳の方法も変わります。
それぞれの仕訳方法も詳しく調べておくといいでしょう。
ファクタリングで得る現金に関しては、本業の営業収入ではありませんので、未収入金という扱いになります。仕訳の際の勘定科目もしっかり未収入金として扱いましょう。
ファクタリングは今後利用する企業も増えていくかと思います。経理担当者の方はファクタリングにおける仕訳の仕方を知るために、まずはファクタリングの仕組みや、どのような流れで契約が進むのかという点を理解して、いつでも仕訳できるようにしておきましょう。