「手数料10%だから、100万円の債権で90万円が手に入る」
ファクタリングを利用する前、こんな皮算用をしている方もいらっしゃるかもしれません。確かに手数料とは割引率のことであり、単純に考えれば上記のような計算になるのも分かります。
しかし、ファクタリング契約では、手数料以外にも差し引かれる経費や、そもそもの取引金額を決める数値などが存在します。
これらの数値を計算すると、実質的な割引率は、手数料とは大きく変わるケースがありますので注意が必要です。
そんな実質的な割引率に関して、考慮に入れるべき項目などを紹介していきましょう。
ファクタリングにおける割引率とは?
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金の早期現金化を図る資金調達法です。同じ資金調達法のひとつである手形割引と非常に似たシステムであり、手形割引の「割引率」という言葉を、ファクタリングでも使用するケースがあります。
一般的にファクタリングの割引率とは、いわゆる手数料のことであると考えていいでしょう。
また、別の考え方でこの割引率を捉えることもできます。
それが、「売掛債権の額面金額に対して、どの程度の金額が現金化されるのか」ということを表すために、割引率という言葉を使うことも可能です。この記事では、こちらの意味での「実質的な割引率」という点を中心に考えていきたいと思います。
ファクタリングの手数料相場は?
一般的に割引率を指す手数料に関して簡単に説明しておきましょう。実質的な割引率にもっとも大きな影響を与えるのがこの手数料となりますので、まずはその相場観を持つことが重要になります。
ファクタリング契約には、2つの契約方法があります。ファクタリングを利用する企業と、ファクタリング会社の間で結ばれる2社間ファクタリングと、この2社に取引先も加えた3社間で結ばれる3社間ファクタリングです。
2社間ファクタリングの手数料相場は10~30%程度です。対して3社間ファクタリングの手数料相場は1~9%と言われています。
売掛金の未回収リスクが少ない3社間ファクタリングの方が手数料相場は安くなりますので、覚えておきましょう。
ファクタリング契約に必要な諸経費に関して
特に額面金額の低い売掛債権で、割引率に大きな影響を与えるのが諸経費です。諸経費に関しては、ファクタリング会社ごとにいろいろなケースがありますので、ここで紹介する経費すべてがかかるとは限りませんのでご注意ください。
・事務手数料
・審査費用
・登記のための登録免許税
・印紙代
・登記のための司法書士報酬
特に2社間ファクタリングの場合、債権譲渡登記が必要な契約が多くなります。登記を行うことができるのは司法書士となり、その費用などに関しても利用企業の負担となります。
諸経費に関してはファクタリング会社ごとにさまざまですが、概ね5~12万円程度が相場といえます。
掛け目という考え方
ファクタリング契約には「掛け目」という考え方があります。
これは持ち込んだ売掛債権の額面金額全額をファクタリングの対象とするのではなく、額面金額に一定の掛け目を掛けた金額をファクタリングの対象金額にするという考え方です。
この掛け目の相場は75~90%ですので、仮に額面金額100万円の売掛債権で、掛け目が80%であれば、ファクタリングの対象金額は80万円となります。
この掛け目も実質的な割引率に大きな影響を与えますので、契約の際はしっかり確認するようにしましょう。
例をあげてファクタリングの取引金額を計算
ファクタリング契約には、いわゆる割引率とされる手数料のほかに、諸経費や掛け目があるため、実質的な割引率は手数料通りというわけではありません。
実際に例を上げて計算してみましょう。条件を以下のように設定します。
・額面金額 100万円
・手数料 10%
・諸経費合計 10万円
・掛け目 80%
この条件で計算すると、まず額面金額に掛け目をかけた80万円がファクタリング対象となります。ここから手数料10%を差し引きますので、この時点で手にできる現金は72万円。
さらにここから諸経費が差し引かれますので、最終的に早期現金化される金額は62万円となります。
手数料のみを割引率と考えてファクタリングの利用を考えた場合、100万円の売掛債権で90万円の現金が振り込まれると考えてしまうところですが、上記の例では実質的な割引率は38%です。
ファクタリングを利用する際は、手数料を割引率のすべてとは考えず、そのほかに差し引かれる経費なども考慮して予定を立てることが重要になります。
ファクタリング契約で割引率を低くするポイント
ファクタリング契約においては、手数料=実質的な割引率とはなりません。では、実質的な割引率をできるだけ低くする、つまりより多くの売掛金を現金化するためには、どのようなポイントがあるのかを紹介しておきましょう。
手数料を比較検討しよう
まずは何より手数料のチェックです。ファクタリングの実質的な割引率に大きな影響を与えるのがこの手数料ですので、できるだけ手数料の安い契約を結べるようにするのがポイントです。
手数料を安くするためにはいくつかの方法がありますが、もっとも確実なのは複数のファクタリング会社に、相見積もりの要領で審査をしてもらう方法があります。
ファクタリングの手数料には相場こそありますが、法で定められた上限などはありません。手数料はそれぞれのファクタリング会社が独自で決めていますので、相見積もりを取ることで、手数料の安いファクタリング会社が見つかるかと思います。
特に初めてファクタリングを利用する場合は、相見積もりは必須と考えておくことをおすすめします。
債権譲渡登記や諸経費をチェック
諸経費は特に額面金額の低い売掛債権ほど影響が大きいため、細かくチェックしておきましょう。
注目したいのが債権譲渡登記の有無です。多くの場合、債権譲渡登記は必須となりますが、ファクタリング会社の中には、債権譲渡登記ナシでの契約ができる会社もあります。
ほかにも審査に関する手数料が無料であったり、事務手数料が無料であったりするケースもありますので、諸経費が合計でどの程度になるのかはしっかり把握して契約しましょう。
この場合もやはり相見積もりがおすすめ。他社と比較することで、その諸経費が高いのか安いのか判別しやすくなりますので、しっかり比較検討しましょう。
掛け目にも注目
最後に注目すべきは掛け目です。
掛け目は、利用企業の財務状況、取引先の信用情報、売掛債権の額面金額などで大きく影響されますので、こちらも比較検討の材料となります。
上記2点と同様に、相見積もりを取って、もっとも有利な条件で契約してくれるファクタリング会社を見つけましょう。
ファクタリングの割引率についてのまとめ
ファクタリングを利用する場合、注目したいのが実質的な割引率です。
ファクタリング契約では、契約金額に対する手数料以外にも、諸経費や掛け目など、早期現金化できる金額に影響を与える要素がいくつかあります。こうした要素すべて含めて算出されるのが実質的な割引率で、しっかり計算すれば、手数料とは大きな差がある数値になることが少なくありません。
ファクタリング会社のHPなどで手数料だけを確認し、手元の売掛債権に手数料を掛けただけの金額で皮算用していると、想定以上に手にできる金額が少ないというケースも十分考えられます。
実質的な割引率が気になる方は、複数のファクタリング会社から相見積もりを取り、どの程度の金額が現金化されるのかをしっかり計算して比較検討するようにしましょう。