ファクタリングは担保なしで利用できる資金調達法です。会社運営のために利用するのであれば、その内容について詳しく理解しておきたいものです。
また、ファクタリングと言葉のニュアンスが似ている売掛債権担保融資(ABL)があります。ファクタリングとの違いについても知っておきましょう。売掛債権担保融資(ABL)がおすすめのケースもありますが、ファクタリングがおすすめのケースもあるものです。
売掛債権担保融資(ABL)の特徴、担保なしで利用できるファクタリングの利便性を知り、ビジネスにうまく活用したいものです。この記事を参考にしてください。
ファクタリングが担保なしで利用できるのはなぜ?
まずは、ファクタリングが担保なしで利用できるのはなぜかを理解しておきたいものです。ここではファクタリングが担保なしで利用できる理由を2つ説明します。
・ファクタリングは融資ではない
・ファクタリングは資金調達の手段
担保なしで利用できること以外にも、ファクタリングのありようを正しく理解しておきましょう。
ファクタリングは融資ではない
担保が必要なのはお金を借りる融資です。ファクタリングは融資ではないため、担保は必要ありません。そんな担保とはどんなものなのか詳しく説明しましょう。
担保は将来的に生じるかもしれない不利益に対する保証です。または保証のためのモノと解釈できます。
そんな担保には種類があります。ざっくり分けると、民法上の保証を意味する人的担保、物を扱う物的担保の2種類があります。
このように、担保についても理解しておきましょう。融資を考える際に役立つはずです。
ファクタリングは資金調達の手段
ファクタリングは借金ではなく、資金調達の手段です。したがって、ファクタリングに担保は必要ありません。
そんなファクタリングは、国に認められた安心できる手法です。その根拠として「債権譲渡」が法律で認められている事実があります。民法第466条には、債権譲渡を認める内容が記されています。
そして、金融庁においても、ファクタリング会社が売掛債権の買取りを行い、その債権の管理や回収を行う業務を金融業務とし、ファクタリングと定義しています。
このように、ファクタリングは国に認められた正当な資金調達の手段です。
売掛債権担保融資(ABL)と担保なしのファクタリングとの違い
売掛債権担保融資(ABL)と担保なしのファクタリングには、どんな違いがあるか紹介します。以下の3つのポイントにスポットを当ててみます。
・売掛債権担保融資(ABL)は売掛債権を担保にした融資
・ファクタリングは融資ではない
・担保が必要か否かの違い
これらについて知っておけば、売掛債権担保融資と担保なしのファクタリングには、どのような違いがあるか明白にわかります。ビジネスでどちらかを選択しなければならない時などに役立つでしょう。
売掛債権担保融資(ABL)は売掛債権を担保にした融資
売掛債権担保融資(ABL)で担保にするのは、その名の通り売掛債権です。融資を受ける先は銀行などの金融機関となっています。
この融資は安い利息がメリットです。しかし、その一方で、会計上は負債扱いになる、厳しく長い審査があるといったデメリットも存在します。
また、担保にした売掛債権は、すぐさま契約した金融機関に移動します。それに伴い、売掛債権の所有者は、売掛債権を担保にした金融機関になります。
すなわち、自社の売掛債権であっても自由に使えません。売掛債権をファクタリングで現金化することは違反行為になります。お気を付けください。
担保不要のファクタリングは融資ではない
上記で説明した売掛債権担保融資(ABL)と異なり、担保不要のファクタリングは融資ではありません。資金調達のための手段と解釈されます。
負債にならないので、今後融資を受ける際のマイナス点にはなりません。しかし、日本では海外ほどファクタリングが知られていないため、ファクタリングという名の借金ではないかと誤解する人も存在します。
そのため、取引先がファクタリングを借金と誤解している場合も考えられます。負債があると赤字経営の会社と解釈されます。そして、リスクがあるために取引を中止される可能性もあるものです。
担保が必要か否かの違い
ここまで書いた通り、ファクタリングは売掛債権担保融資と異なり、担保がありません。そこは売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングによる大きな違いです。
つまり、担保が必要な売掛債権担保融資(ABL)は負債にあたります。したがって、定期的に残高を銀行に報告する義務があります。
それに比べ、ファクタリングは負債にならないので、帳簿を汚さず、また、銀行に報告義務もありません。元々負債があるために、これ以上は増やしたくないと考える企業の場合、売掛債権担保融資(ABL)よりもファクタリングの方が合います。
しかし、その一方で負債が増えたとしても、安い利息で借りられる売掛債権担保融資(ABL)の方が会社にとっては助かる場合もあります。
たとえば、新規事業に取り掛かるために高額な費用が必要だったり、新しいビルを建てる費用が必要だったりする場合です。そんな時に安い利息でお金を借りることが可能ならば、会社としては助かるでしょう。
ファクタリングの場合は、売掛金以上の額を用意できません。そのため、売掛金よりも高額な費用が必要なケースには向いていないでしょう。
このようにして、ご自身の会社に向いているのは、売掛債権担保融資(ABL)かファクタリングかよく考えてみてください。
売掛債権担保融資(ABL)よりも担保なしのファクタリングが向いているケース
売掛債権担保融資(ABL)よりも担保なしで利用可能なファクタリングの方が向いているケースを紹介します。
・負債を増やしたくない
・資金を早めに調達したい
・赤字経営なので融資を受けられない
これら3つのケースについて説明していきます。いくつかのケースを知ることで、売掛債権担保融資やファクタリングについて、より深く理解できるでしょう。
負債を増やしたくない
スタートアップ企業のA社は、立ち上げの際にいくつか借金をしました。そのため、現在も負債をいくつか抱えています。
そんなA社がコロナの影響で資金繰りがさらに苦しくなりました。コロナが5類に移行されてからは、少々回復しましたが、月末近くになると資金繰りが厳しくなります。
そこでファクタリングを採用し、資金繰りが厳しい時期を乗り切ることにしました。通常であれば、2ヶ月先に支払われる売掛金が2日で現金化されるので、助かっています。
資金を早めに調達したい
B社は家族経営の小さな工場ですが、先代からの信頼関係で結ばれている取引先が多く存在します。そのため、経営は安定していました。
しかし、最近は原材料費の高騰で資金繰りが厳しいものになってきました。原材料費を払うための資金を早めに調達したいと考えた社長はファクタリングを行うことにしたのです。
ファクタリングは負債にならないので、帳簿を汚さずに済みます。先代からは、帳簿を汚す赤字にしないようにとよく言われていました。経営陣はなるべく負債を増やさないように気を付けていたのです。
そんなB社は、ファクタリングにより、早めに資金調達ができました。売掛金が3日ほどで現金化されたので、原材料費の支払いに充てられたのです。
ファクタリングの手数料は取られますが、1%で済みます。それというのも、信頼できる取引先の理解があり、3社間ファクタリングができたからです。
赤字経営なので融資を受けられない
C社は赤字経営で四苦八苦しています。コロナの影響でかなり売り上げが落ちてしまったからです。
経営陣はいっそのこと、利息が安いという売掛債権担保融資(ABL)を採用してはどうかと議論を重ねました。その結果、売掛債権担保融資(ABL)の場合は、厳しい審査があるので、赤字経営では受け入れてもらえないだろうという結論になったのです。
その点ファクタリングならば、取引先次第で利用できるとわかりました。さっそく、ファクタリング会社に申し込んだところ、スムーズに話が進みました。
幸い、取引先のD社は安定した経営なので、C社はファクタリングの審査に通りました。つまり、ファクタリングにより、売掛金が早めに現金で受け取れるようになったのです。売掛金は未払いの費用に充てられました。
こうして、C社はファクタリングを採用したおかげで何とか立ち直り、今は安定経営に近づいています。
ファクタリングと担保についてのまとめ
ファクタリングは、借金ではなく資金調達手段の一つです。そのため、担保なしで利用できます。
そして、売掛債権担保融資(ABL)は、売掛債権を担保にする融資です。売掛債権は担保として金融機関に保管されます。
売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングの違いは担保の有無です。ファクタリングは担保なしなので、借金になりません。そのため、これ以上負債を増やしたくない企業などはファクタリングが向いています。
しかし、融資でないと賄えないほどの高額取引であれば、利息が安い売掛債権担保融資の方がおすすめです。ただし、審査が厳しいので、それに通らなければいけません。