企業の資金調達法として知られる銀行融資とファクタリング。ではこの銀行融資とファクタリング、何が違って何が同じなのか。その違いを解説していきます。

銀行融資とファクタリングの違いや特徴が理解できれば、適切なタイミングでより適切な資金調達が可能となり、企業経営に好影響を及ぼすはず。しっかりと理解して上手に使い分けましょう。

ファクタリングと銀行融資の違い

企業の資金調達方法として知られる銀行融資とファクタリング。資金を手にするという点では共通していますが、その中身はまったく違う資金調達法となります。

銀行融資とファクタリングの相違点はいろいろとあり、大前提として銀行融資は借入金となりますが、ファクタリングは借入金とはならないという点があります。

この点を含め、銀行融資とファクタリングの違いに関して詳しく解説していきましょう。

借入金となるかどうか

銀行融資とファクタリングの一番大きな違いは借入金となるかならないかです。

銀行融資はその名の通り銀行から資金の融資を受けます。これは借入金となりますので、銀行融資を受けた会社の財務諸表には借入金として記載され、その会社の信用情報にも借入金アリという形で情報が掲載されます。

一方ファクタリングとは、売掛債権の譲渡契約のことを指します。会社の持っている売掛債権をファクタリング業者に譲渡し、売掛金を早期現金化するという方法であり、借入金とはなりません。

つまり売掛債権がある限りいくらでも利用することが可能。さらに会社の信用情報にも影響を与えないということになります。

現金化のスピード

続いての違いが現金化のスピードです。

銀行融資の申し込みには、会社の財務諸表の提出はもちろん、何のために必要な資金なのか、どのように返済していくのか、そのために今後どのような事業計画があるのかなど、細かな書類を多数提出し審査を受けることになります。

あくまでも一般論ですが、銀行融資を申し込んでから会社に現金が振り込まれるまでの期間は早くても数週間、長ければ数ヶ月というケースもあります。

ファクタリングを申し込む場合にも審査を受ける必要はあります。手持ちの売掛債権を持ち込み、自社の財務状況、持ち込んだ売掛債権の債務者となる取引先の情報などを提示し、ファクタリング業者から審査を受けます。

審査にかかる時間は、売掛債権の額面金額などにもよりますが、早ければ数時間、遅くとも数日程度であり、多くの場合は申し込み当日に審査結果が分かります。

審査の結果ファクタリング契約が可能となれば、その場で契約書を交わし、最短当日、遅くとも数日以内にファクタリング業者から現金が振り込まれます。

現金化のスピードという点では圧倒的にファクタリングの方が早いと考えて間違いありません。

現金化できる上限金額

銀行融資とファクタリングの違いとして覚えておきたいのが現金化できる上限金額の問題です。

銀行融資の場合、申し込んだ会社の規模や資産はもちろん、今後の事業計画や融資を受ける資金の使途によって融資される金額が決まります。実質上限金額という考え方はなく、銀行が回収できると判断すれば、いくらでも借り入れることが可能です。

一方ファクタリングは債権譲渡契約です。どれだけ好調な会社でも、持ち込んだ売掛債権の額面金額以上の現金化はできません。

審査で注目されるポイント

上記の通り、銀行融資でもファクタリングでも、契約を結ぶ前には審査が行われます。とはいえ、この審査で注目されるポイントにやや違いがありますので解説していきます。

銀行融資の審査で重視されるのは、申し込んだ会社の財務状況と今後の業務の見通しです。銀行としては現金を貸し付けるわけですから、回収できるかどうかが大きな判断材料となります。

ファクタリングの審査で注目されるのは、申し込んだ会社より取引先の信用度です。売掛債権という現物があるため、問題となるのはその売掛金がしっかり期日に入金されるかどうかという点。また、入金された売掛金がすぐにファクタリング業者に入金されるかどうかという点です。

返済が長期間にわたる銀行融資は将来的な見通しも加味し財務状況を重視。一方支払いが1回、しかも数か月後と分かっているファクタリングは、その1回がしっかり守られるかどうかの信用が重要になります。

金利や手数料

銀行融資と言ってもいろいろなケースがあり、金利もさまざまです。一般的に言えば、通常融資で5%程度、ビジネスローンで10%前後というのが相場でしょう。この金利は年利であり、1年間で発生する金利となります。

ファクタリングの場合、借入金ではありませんので金利というものは存在しません。存在するのは手数料。売掛債権の額面金額から、この手数料を差し引いた金額が現金化される金額ということになります。

ファクタリングの手数料に法律の上での定めはなく、実質ファクタリング業者が自由に設定できるようになっています。しかし相場は存在し、ファクタリングの手数料相場は1～30%程度と言われています。

返済方法

銀行融資とファクタリングでは、返済方法が違います。正確に言えばファクタリングは貸金契約ではありませんので返済ではないのですが、分かりやすくするために返済方法として説明していきます。

銀行融資の場合金利を加えた総額を、数年にかけて毎月返済していきます。金利の計算方法や支払いの方法はいろいろな種類がありますが、基本的には数年がかりで返済すると考えておけば間違いありません。

ファクタリングの場合、売掛債権を譲渡し、その時点で申し込んだ会社は売掛金を現金で受け取ります。その後、取引先から売掛金が入金されたら、入金された金額をファクタリング業者に入金しなくてはなりません。

このファクタリング会社への入金を返済と捉えた場合、返済は1回、しかも申し込んでから数か月以内ということになります。

ファクタリングがおすすめな状況

会社の資金調達法として存在する銀行融資とファクタリング。それぞれ特徴があり、それぞれに長所と短所があります。そこでまずはファクタリングの利用がおすすめとなる状況を考えてみましょう。

急に現金が必要になった場合

会社を経営していると突然現金が必要になるケースはたびたび訪れます。原材料費や電気代・原油料金の高騰や、所有している車の故障・買い替えなど急に現金が必要になるシーンは起こり得るものです。

こうした急な出費に対応する場合は、申し込んでから現金化まで時間がかかる銀行融資よりも現金化のスピードが早いファクタリングの方が有利となります。

信用情報に影響を出したくない場合

近い将来事業拡大のため、新たな倉庫を建設予定である、新たな製造機器の導入を考えている、地方に支社を作るつもりであるなどなど、近い将来大きな銀行融資を申し込む予定がある会社なども、一時的な現金不足にはファクタリングの利用がおすすめです。

銀行融資を利用してしまうと、会社の信用情報にその融資の情報が掲載され、後に大きな融資を申し込む際、どうしてもネックになってしまいます。

ファクタリングであれば、借り入れではありませんので、こうした信用情報に影響を与えません。

銀行融資がおすすめな状況

ファクタリングの利用がおすすめの状況があるということは、当然銀行融資の方が有利になる状況もあるということ。そんな銀行融資を受けるべきタイミングに関して紹介していきましょう。

事業拡大などでまとまった資金が必要な時

会社の事業を拡大するためなど、迷わず銀行融資を申し込みましょう。

ファクタリングの弱点は、売掛債権の額面金額以上の現金は手に入らないという点です。さらに言えば売掛債権の額面金額が大きいほど、売り上げのロスも大きくなってしまうという点です。

仮に1億円の売掛債権を10%の手数料でファクタリングした場合、手数料で1,000万円が失われるということになります。これは1億円の仕事を9,000万円に値引きして提供したのと同じことになり、損失分も非常に大きくなります。

このように、大きな金額を現金化しようとした場合、それだけ損失が大きくなってしまうのがファクタリングの問題。大きな金額が必要になった場合は、迷わず銀行融資への申し込みを検討しましょう。

ファクタリングと銀行融資のまとめ

ファクタリングと銀行融資には明確な違いがあり、その違いをしっかり理解していないと、利用して損をするという事態になりかねません。ファクタリングと銀行融資の違いに関してははっきり理解しておきましょう。

ファクタリングは債権譲渡契約であり、貸金契約ではありません。メリットは早期現金化が可能で、信用情報にも傷がつかずしかも審査が緩いという点が考えられます。デメリットは売掛債権の額面金額以上の現金は手に入らないこと、利用しすぎるとそれだけ売り上げから損失が出てしまうという点でしょう。

銀行融資は銀行から資金を借りる貸金契約です。メリットは財務状況や事業計画によっては大きな金額の借り入れも可能であり、返済は毎月の分割払いのため、会社の財務状況に大きな影響を与えません。デメリットは申し込みから貸し付けまでに時間がかかり、審査が厳しいという点。さらに会社の信用情報にも影響があります。

企業の資金調達の方法としてどちらが優れているというわけではなく、状況によって使い分けるのがベストです。よりデメリットの少ない資金調達法を選択しましょう。