昨今、経済産業省が推奨している新しい資金調達方法がファクタリングです。
ファクタリングとは、法人や個人事業主などの事業者が保有する、決済前の売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料を差し引いた金額を現金化する資金調達方法です。
資金繰りに悩む事業者や、支払いサイトが長く、現金化までに期間を要する売掛債権を保有する事業者が積極的に活用している資金調達方法なのですが、一般的に支払いサイトが長く設定される売掛債権が多いと言われている建設業では、ファクタリングとの相性が非常に良いとされています。
この記事ではそんな建設業とファクタリングの相性に関して、詳しく解説していきます。
建設業を営まれている事業者や、資金調達を検討されている事業者は、是非本記事をご参考にして頂けましたら幸いです。
建設業とファクタリングとの相性
冒頭で御話した通り、建設業は一般的に支払いサイトが長めに設定される傾向が強い業種と言えます。
又、一つの案件受注に際しても案件の規模が大きく、案件完了までの期間も数カ月から、長いと年単位で公共事業に携わることもあります。
そんな、案件規模が大きく支払サイクルが長い建設業において、ファクタリングとの相性は良いのでしょうか?
本稿では建設業とファクタリングの相性が良いのか否か、実際の事例と共に解説していきます。
建設業はファクタリングを活用すべき
結論から言うと、建設業とファクタリングの相性は非常に良いと言えます。
建設事業を営んでいく中で、下記のような様々なシーンでファクタリングが役に立つと言えるでしょう。
・前金が必要
・売掛金が多く発生する
・支払いサイトが長い
・新規案件が受注しやすい
・元請会社の倒産リスクを回避
・審査に通りやすい
・すぐに現金が準備できる
・信用情報に関与しない
・貸借対照表上で負債が増えない
それでは、上記のそれぞれの事例に関して、一つずつ解説していきます。
前金が必要
建設業は、案件を受注するにあたって必要な車両や建設設備、人件費など、前準備が必須になります。
案件の条件に即した体制を整えた上で、案件の受注を実施する流れです。
そのため、案件の受注には必ず前金が必要になります。
この、前金を確保しておくためには、ファクタリングが非常に役に立ちます。
売掛金が多く発生する
建設業は、一般的に様々な業者と取引をしながら複数の案件を回しています。
ですので、売掛先の数や売掛金も、非常に多く発生します。
下手に銀行や金融機関の融資に時間をかけて申し込みをするよりも、ファクタリングを活用して決算前の売掛債権を現金化した方が、手元資金の確保とキャッシュフローの円滑化に役立つと言えるでしょう。
そもそもの売掛金が多いため、ファクタリングを活用してキャッシュフローを均一化するメリットも、その分大きくなります。
支払いサイトが長い
建設業の特徴として、冒頭で解説した通り、支払いサイトが長い特徴があります。
支払いサイトが長い理由は、建設業独自の業界的な仕組みであるピラミッド型の、案件や売掛金の流れにあると言われています。
同じ案件を受注するにも、下請け、孫請けと順々に受注していくため、案件の大元からの支払いもなぞらえるように、下請け、孫請けと順々に支払われていきます。
こういった構造の中で、先んじて売掛債権をファクタリングすることで、事前に売掛金を確実に確保できるため、ファクタリングは非常に有効です。
新規案件が受注しやすい
先程の前金の説明の際に触れましたが、建設業は新規案件の受注のために、準備金がかなり必要になります。
中でも、大型の公共事業の案件などに関しては、人員や設備、車両などから揃え直す必要があります。
一般的に車両の購入や設備の刷新などは銀行や金融機関のローンなどを活用するのですが、その際に頭金を手出しで出さなければならないケースも多く発生します。
このような際に、手元資金を一時的に増やしておかなければなりませんので、ファクタリングを活用することによって、先んじて売掛債権を現金化しておき、車両や設備購入の頭金や、案件稼働後の、最初の売掛金入金までのランニングコストとして確保しておくことが出来ます。
このように、ファクタリングによって手元資金を増やすことにより、新規案件を受注しやすくなり、事業の発展に非常に役に立ちます。
元請会社の倒産リスクを回避
元請け会社の倒産リスクを回避できる点も、建設業がファクタリングを活用するメリットです。
先程解説した通り、建設業はピラミッド型の案件受注が一般的です。
例えば自社が孫請け企業の場合、自社から見た案件の元請会社は、自社の上位にいる下請け企業になります。
こういった場合に、下請け企業が支払いの遅延を起こしたり、最悪の場合倒産してしまうと、孫請け企業が保有する売掛債権は即座に不良債権化してしまいます。
ピラミッド型の構造であるがゆえに、自社よりも上の立場で案件を受注している企業の内、一社でもこのような事態が発生すると、下請けの企業は一時的に資金の流れが止まってしまいます。
こういったリスクを回避するために、売掛債権をファクタリングしておき、先んじて現金化しておくことで、元請け会社の倒産リスクを回避することが出来ます。
審査に通りやすい
ファクタリングは、銀行や金融機関の借り入れなどと違い、あくまで事業者が保有する決済前の売掛債権をファクタリング会社に譲渡する、売買の契約になります。
ですので、審査に関しても利用者本人の経営状況や今後の事業計画などを審査するのではなく、あくまで売掛先の信用度を審査します。
建設業は一般的に上流が大手企業の場合が非常に多いため、売掛債権の信用度も高い業界と言えます。
審査に通りやすい点も、建設業がファクタリングを活用するにあたってのメリットと言えます。
すぐに現金が準備できる
建設業がファクタリングを利用するメリットとして、最短即日ですぐに現金が準備できる点が挙げられます。
前述の通り建設業は売掛金の入金までに時間がかかります。
しかしながら案件を進めていくには、車両コストやガソリン代、人件費など日々のランニングコストが先にかかってくる業態でもあります。
そんな中で、例えば予期せぬ事故が発生したり、建設機器のトラブルや車両の故障が生じた際には、急な出費に見舞われるリスクも非常に高いと言えます。
そんな時に、最短即日で売掛債権を現金化できるファクタリングを活用することで、急場を凌いだり、一時的なつなぎ資金を確保して、案件をストップすることなく進めていく事もできるでしょう。
すぐに現金が準備できる点は、建設業のようなランニングコストがかかりながら、突発的な出費の可能性がある事業には、非常に有用です。
信用情報に関与しない
信用情報に関与しない点も、建設業がファクタリングを利用するメリットと言えます。
前述の通り、建設業は一つの案件を受注するにあたっても様々な先出しのコストがかかります。
更に、売掛金の入金も先になることからランニングコストも工面しなければなりません。
これを手元資金のみで全て円滑に資金繰りできればよいのですが、実際はなかなか難しく、ほとんどの建設業者は銀行や金融機関から融資を受けて運営しています。
特に、事業拡大のタイミングなどでは、新規の追加融資を他社に申し込む場合もあります。
このような時に大事なのが信用情報です。
銀行や金融機関の融資に際しては必ず事業者の信用情報を審査します。
又、当然ながら、借入の件数は少ない方が信用情報上の経営状況の評価が高くなります。
このような状況において、ファクタリングは資金調達方法ではあるものの、借り入れではなく売掛債権の譲渡になりますので、信用情報に影響することがありません。
複数の借入先からの融資を検討する可能性がある建設業にとって、融資の審査基準である信用情報は重要な要素ですので、信用情報に関与しないファクタリングは非常に利便性が高いと言えます。
貸借対照表上で負債が増えない
貸借対照表上での負債が増えない点も、建設業がファクタリングを活用するメリットです。
先程の信用情報と共に、融資等の審査で必ずみられる項目が、貸借対照表です。
これは、自己資本比率と言って、事業の運営上自社の売掛金等の資本で運営できている比率と、他人資本と言って融資や借り入れ、ローンなどで運営している比率を表している指標となっており、当然ながら、自己資本比率が高い方が評価は高くなります。
借り入れや融資、ローンなどは貸借対照表上では負債=他人資本として計上されますが、ファクタリングは売掛債権の譲渡になりますので、負債として計上されることがありません。
このように、銀行や金融機関の審査で用いられる貸借対照表上でも負債として計上されない点は、建設業がファクタリングを活用するメリットと言えるでしょう。
建設業がファクタリングを利用する際の注意点
さて、ここまでは建設業にとっていかにファクタリングを活用するメリットが多いのか、に関して説明してきました。
本稿では逆に、建設業がファクタリングを活用する際の注意点を解説していきます。
主な注意点としては下記になります。
・手数料がかかる
・月商以上の資金調達は不可
・売掛先の信用度が大切
前述の通り、ファクタリングには非常にメリットが多いのですが、上記の注意点も併せて確認しておきましょう。
手数料がかかる
手数料がかかる点は、建設業がファクタリングを活用する上での注意点です。
最短即日で現金化が可能な2社間ファクタリングでかかってくる手数料の相場は、10%~30%となっており、借り入れなどと比較すると非常に高い比率となっています。
最短即日で現金化できるというメリットがある代わりに、手数料の面もしっかり計算した上でファクタリングを活用していきましょう。
月商以上の資金調達は不可
ファクタリングの仕組みは、ここまでの解説の通り、売掛債権をファクタリング会社に譲渡して、手数料を差し引いた金額を現金化する、という資金調達方法です。
言い換えれば、事業者が保有する売掛債権以上、すなわち最大でも月商以上の金額は調達できない、ということです。
例えば大型の設備投資など、自社の売掛債権以上の金額を必要とする際には活用できませんので、この点も注意しておきましょう。
売掛先の信用度が大切
建設業がファクタリングを活用する上での注意点として、売掛先の信用度が重要な点も挙げられます。
ファクタリングの審査は事業者本人ではなく、売掛先の信用度によって左右されますので、ファクタリングを検討される際にはなるべく元請けに近しい商流の売掛債権や、過去の定期的に取引している実績のある取引先との売掛債権にするよう、事前に選定しておきましょう。
ファクタリングと建設業の相性とは?のまとめ
建設業がファクタリングを活用すべきメリット
・前金が必要な際に対応できる
・売掛金が多く発生するため使いやすい
・支払いサイトが長いため、短縮できる
・新規案件が受注しやすくなる
・元請会社の倒産リスクを回避できる
・審査に通りやすい
・すぐに現金が準備できる
・信用情報に関与しない
・貸借対照表上で負債が増えない
建設業がファクタリングを活用する上での注意点
・手数料がかかる
・月商以上の資金調達は不可
・売掛先の信用度が大切
この記事では、建設業とファクタリングの相性に関して詳しく解説してきました。
総括すると、建設業は、他の業種と比較して、事業運営上での資金調達ニーズが様々な場面で派生する業種であり、尚且つ売掛金に支払サイクルが長期化している事業と取れます。
そのため、様々なシーンに対応すべく、手元資金を常に持っておくことが重要であり、手元資金の調達にはファクタリングが適している、ということです。
但し、ファクタリングには注意点もありますので、この記事をお読みいただいた、建設業を営む事業者様や、ファクタリングを検討されている事業者様は是非記事を参考して頂き、ファクタリングをご検討ください。