ファクタリングには、医療ファクタリング・買取ファクタリング・保証ファクタリング・国際ファクタリングなど、さまざまな種類があり、それぞれ取引の仕組みや活用シーンに違いがあります。近年はオンライン完結型のサービスも増え、請求書を用いたファクタリングを中心に、ビジネスの資金調達手法として広く知られるようになってきました。その中でも、口コミや情報サイトではあまり取り上げられることのない比較的珍しい手法が、商品在庫ファクタリングです。
商品在庫ファクタリングは、売掛債権や請求書、注文書といった将来入金予定の債権ではなく、現在保有している在庫商品そのものを現金化する資金調達方法です。仕組みとしては、在庫を第三者に買い取ってもらう点で、店舗で商品を販売する行為に近い取引といえます。ファクタリングは法人向けのビジネスというイメージが強いものの、商品在庫ファクタリングに関しては、ケースによって個人向けに対応するサービスも存在し、スピード重視の資金確保を目的として利用されることもあります。
本記事では、こうした商品在庫ファクタリングについて、上記のような他のファクタリングとの違いを踏まえながら、基本的な概要や特徴、一般的な審査方法を分かりやすく解説していきます。在庫を抱えたまま資金繰りに悩んでいる企業や事業者の方は、ぜひ参考にしながら、商品在庫ファクタリングという選択肢の活用を検討してみてください。
商品在庫ファクタリングは在庫商品をファクタリングすること
商品在庫ファクタリングとは、その名称の通り、在庫商品をファクタリングすることです。まずは、そのポイントについて2点お伝えします。
・在庫商品を売るのと同じ意味
・商品によって手数料が異なる
まずは商品在庫ファクタリングの概要を理解しましょう。
在庫商品を売るのと同じ意味
商品在庫ファクタリングは、在庫商品を売るのとほぼ同じ意味合いを持つ手法で、企業が抱えている在庫商品をファクタリング会社に買い取ってもらい、現金化します。通常の在庫処分とは異なり、資金調達を目的とした取引である点が特徴で、対応の早い業者を選べば即日で資金化できるケースもあり、資金繰り改善をサポートする方法として注目されています。実際に現金化できる金額は、在庫の種類や市場性によって率や程度が変わります。
この仕組みは、従来のファクタリングにおける売掛債権が在庫商品に置き換わったものと考えることができます。一般的なファクタリングは、売掛債権を債権譲渡することで資金を得る方法ですが、商品在庫ファクタリングは、その対象を在庫に広げた柔軟な応用形といえます。売上がまだ発生していない段階でも、在庫を活用して資金化できる点が大きな違いです。
また、貸金業とは異なり、原則として担保の差し入れや返済義務が発生しないため、借入に抵抗がある企業でも利用しやすい傾向があります。通常のファクタリングと比べても、売上減少による資金不足を補う形で活用できる点は大きなメリットでしょう。ただし、契約内容や手数料、在庫の取り扱い条件については徹底して確認し、自社に合ったサービスを選ぶことが重要です。こうしたポイントを事前に理解しておくことで、商品在庫ファクタリングをより安心して活用できるようになります。
商品によって手数料が異なる
たいていのファクタリングと同様に、商品在庫ファクタリングでも手数料やコストは発生します。ただし、調達の対象となる商品の種類や状態、市場での評価によって条件はそれぞれ異なり、手数料を一律で何パーセントと示すことはできません。これが、請求書を主な対象とする従来型ファクタリングとの大きな違いであり、本手法ならではの特徴でもあります。適切に活用できれば資金繰り負担の軽減につながりますが、早期の現金化を優先するほど条件が厳しくなる場合もあります。
たとえば、ある商品を2万円で仕入れたケースを考えてみましょう。ファクタリング会社に18,000円で買い取ってもらえれば、差額の2,000円が実質的な手数料となります。一方で、評価額が低く5,000円でしか買い取ってもらえない場合には、15,000円もの差が生じます。このように、在庫商品の資産価値によって入金額やコストが大きく変動する点は、商品在庫ファクタリング特有のリスクといえます。
特に中小企業にとって、在庫を活用した資金調達は有効な選択肢となり得ますが、商品の状態や市場ニーズによって価値が左右される以上、注意点を理解しておくことが欠かせません。次に検討すべきポイントとしては、評価額が下がる主な要因、想定より入金額が少なくなるケース、契約条件の確認といった3つの観点があります。これらを事前に把握しておくことで、商品在庫ファクタリングをより安全かつ納得感のある形で利用できるでしょう。
商品在庫ファクタリンの特徴
ここからは、より詳しく商品在庫ファクタリングを理解できるように、その特徴を挙げて解説します。
・売れない商品を整理できる
・在庫管理にかかる費用を節約できる
・資金繰りの改善に役立つ
・融資とは異なる
・売掛債権なしでもファクタリングを利用できる
これらの特徴を知ることで、商品在庫ファクタリングの役割やメリットを理解できます。自社の在庫商品に使えるシステムかどうか判断する材料にしてください。
売れない在庫商品を整理できる
商品在庫ファクタリングを利用することで、売れ残った在庫商品を整理しやすくなります。在庫を抱えていると、商品によっては大きな保管スペースが必要となり、とくに社屋に余裕がない場合には、取引先向けの新たな在庫や他の商品を置く場所が不足するなど、経営面にも影響を及ぼす問題が生じます。こうした状況は、社内の整理整頓や業務効率にも直結するでしょう。
このような場合、一定の信用と実績を持つファクタリング会社に在庫商品を引き取ってもらうことで、最短で保管スペースを確保できます。取引にあたっては、商品の名や数量、状態を示す資料を提出し、条件や決済方法を設定したうえで進めるのが一般的です。実際の事例を見ても、在庫処分と同時に保管コストを削減できたケースは少なくありません。
特に在庫量の多い企業にとっては、社内の整理整頓と経営改善の両方に役立つ手段といえます。また、売れない在庫商品を長期間抱え続けることによる価値下落リスクを回避しつつ、資金調達にも活用できる点は大きなメリットです。こうした仕組みを正しく理解するためには、商品在庫ファクタリングに関する基礎知識を押さえたうえで、自社の状況に合った活用方法を検討することが重要でしょう。
在庫管理にかかる費用を節約できる
在庫を抱えていると、その管理に関する費用や時間が継続的に発生し、結果としてキャッシュフローに悪影響を及ぼすケースが見られます。こうした負担は経営者にとって無視できない問題であり、近年は在庫を資金化する手法として商品在庫ファクタリングに注目が集まる傾向があります。
たとえば食品在庫の場合、一定の期日までに販売できなければ腐敗のリスクが高まり、大型冷蔵庫の設置や電気代といったコストが必要になります。アパレル商品でも、シーズンをまたいで保管する際には、空調や除湿設備を整えなければカビや品質劣化が発生する恐れがあります。このほかの在庫についても、保管設備や倉庫費用がかさみ、全体の取引コストを押し上げてしまう点は共通しています。
そこで商品在庫ファクタリングを活用し、条件に合った在庫を現金化できれば、こうした在庫管理コストの削減を実現できます。売却によって回収までの時間を短縮できるため、入金期日を待たずに資金を確保できる点も大きな利点です。在庫を抱え続けるリスクを見直しながら、効率的にキャッシュフローを改善したい企業にとって、有力な選択肢といえるでしょう。
資金繰りの改善に役立つ
商品在庫ファクタリングは、資金繰りが厳しい事業者が直面する課題を解消するための有効な手段です。借金を避けたいという目的がある場合や、売掛金が発生していない業の段階でも資金調達を行いたい場合に、実際に活用されるケースが増えています。
在庫品を商品在庫ファクタリングで買い取る仕組みを利用すれば、商品を廃棄処分することなく現金を確保でき、資金繰りの改善に直結します。確保した資金は、原材料や備品の購入、ビルの家賃、従業員の給料の支払いなど、日常的な事業運営に幅広く充てることが可能です。また、在庫を保有し続けることで発生していた余分な管理コストも削減でき、事業全体のコスト効率向上にもつながります。
商品在庫ファクタリングを利用する際には、複数の会社から見積もりを取り、提示される条件や手数料、買取価格が相場と比べて妥当かどうかを確認することが重要です。会社ごとに対応方針や評価基準は異なるため、情報を比較したうえで最適なサービスを選ぶことで、資金調達後も安定した事業運営が可能になります。状況によっては、他の資金調達方法と組み合わせることも視野に入れるとよいでしょう。
融資とは異なる
ファクタリングは融資と混同されることがありますが、商品在庫ファクタリングについても同様に誤解されやすい資金調達手段といえるでしょう。実際の内容を正しく理解していないと、融資と同じものだと受け取られてしまうケースも見受けられます。
しかし、商品在庫ファクタリングを含むファクタリングは、原則として融資ではなく、担保や返済義務を伴わない資金調達方法です。金融機関を介して借入を実行する仕組みではなく、在庫商品を買い取り業者が評価し、その価値に応じて資金を提供します。事業者は在庫を手元から切り離す代わりに現金を得る形となり、信用力や負債状況に左右されにくい点が特徴です。また、この取引は法的にも認められており、一定の条件に応じた適切な運用であれば、安全性が低い資金調達方法ではありません。
特に小売業など、在庫を多く持ちやすい業種では、売れ残った商品を効率よく現金化し、支払い資金を確保できる点が大きな利点です。すでに銀行融資に依存しており、これ以上借金を増やしたくない、帳簿上の負債を増やしたくないと考える企業にとって、商品在庫ファクタリングはスピーディーに資金を確保できる有効な選択肢となります。資金繰り改善を求める際には、他の手段との違いを整理した目次を作るなどして、自社に合った方法かどうかを冷静に判断することが重要でしょう。
売掛債権なしでもファクタリングを利用できる
本来、ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に売却して現金を得る方法ですが、商品在庫ファクタリングは、保有している商品そのものを買い取ってもらい資金化する仕組みです。そのため、売掛債権の保管や提出といった手続きは不要で、資金調達までの流れをよりシンプルに進められる点が特徴です。
このような仕組みから、商品在庫ファクタリングは売掛債権なしでも利用できる、非常に明確な特徴を持つファクタリング手法といえます。売掛金が発生していない企業や、取引形態のつながり上、請求書を発行しないビジネスモデルの企業にとっても、確実に資金調達につながる選択肢となります。従来の「ファクタリングは売掛金が必要」という考え方を覆す方法といえるでしょう。
さらに、すでに売掛債権を対象としたファクタリングを利用している企業であっても、在庫商品が過剰になっている場合には、商品在庫ファクタリングを併用することが可能です。ファクタリング会社によっては、WEB完結型で簡単に申請できるサービスや、無料の情報確認を提供しているケースもあり、手続きにかかる負担を抑えながら利用できます。条件や手数料を比較し、自社に合ったサービスを選ぶことで、より効率的な資金調達を実現できるでしょう。
商品在庫ファクタリングの審査とは？
他のファクタリングにつきものの審査ですが、売掛債権とは異なる商品在庫ファクタリングの場合は、どのように対処するのか気になるでしょう。
実は、商品在庫ファクタリングでも審査があります。ただし、たいていのファクタリング審査よりは、緩やかに行うのです。そのやり方を以下の点において説明します。
・出張査定を行う
・企業の状況ではなく商品を査定
こうした審査の特徴を頭においておくと、商品在庫ファクタリングが企業でどのように対処されているか、理解できます。
出張査定を行う
商品在庫ファクタリングの審査は、一般的に出張査定で行われます。つまり、ファクタリング会社の担当者が相手の会社を訪問し、在庫状況を確認して査定を行うのです。このような審査方法は、従来のファクタリングとは大きく異なります。
従来のファクタリングでは、売掛先の経営状態や経済状況を中心に審査を行うため、担当者が利用者の会社に出向くことはほとんどありません。特に、大量の在庫を抱える企業の場合、出張査定によって在庫の価値やリスクを簡単かつ正確に評価できるため、発生しうる問題の悪化を防ぎやすくなります。また、上場企業などのケースでは数日で査定を完了することもあり、スピーディーな資金化が可能です。
企業の状況ではなく商品を査定
たいていのファクタリングの場合、審査の対象は売掛先の企業です。しかし、商品在庫ファクタリングの場合、審査の対象になるのは売掛先企業ではなく、自社が保有する商品です。この点が従来のファクタリングと大きく異なります。そもそも商品在庫ファクタリングでは売掛債権が存在しないため、売掛先を審査対象にすることはできません。
さらに、商品在庫ファクタリングの審査では、在庫商品の状態や代金に換算した価値をチェックします。たとえば、買い取っても良い状態か、どのくらいの個数があるかなど、買取希望の商品を見極めるのです。この点は、リサイクルショップの店員が持ち込まれた商品を査定するのと比べても異なりません。また、審査の期間や請求手続きなどのフローも最新の仕組みが導入されており、スムーズに代金回収が可能です。
交通費がかかる場合は断られることもあり
商品在庫ファクタリングを希望する会社に対して、ファクタリング会社の担当者が出向く際には、交通費がかかる場合があります。その場合、手段としてファクタリング自体を断られることも少なくありません。
これは、出張してまで査定しても、商品の状態が悪く買い取れる商品がないケースがあるためです。ファクタリング会社としても、無駄な業務や交通費をかけたくないという理由があります。
そのため、商品在庫ファクタリングを申し込む際は、近くのファクタリング会社を選ぶことが評価の高い型の利用方法と言えるでしょう。
商品在庫ファクタリングについてのまとめ
商品在庫ファクタリングは、売掛債権ではなく、企業が保有する在庫商品を買い取ってもらう仕組みです。ファクタリング会社は商品の状態を確認し、手数料を差し引いた金額を企業に入金します。
在庫を抱える企業にとっては、資金確保や不良在庫の整理に役立つため、在庫スペースの確保に困っている企業や資金繰りが厳しい企業は、導入を検討する価値があります。実績のあるファクタリング会社に申し込み、審査を通過できれば、営業活動に必要な資金もスムーズに確保可能です。
ただし、企業の所在地や関連状況によっては依頼が断られることもあるため、できるだけ近くのファクタリング会社に相談するのがおすすめです。
その後、不動産担保融資の会社でキャリアを重ね金融業界で幅広い経験を積む。
2018年に株式会社No.1へ入社。
これまでの実務経験と専門知識を活かし、中小企業の経営課題解決に向けた支援を行っている。
