ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できる資金調達手段として、多くの業種で注目されています。しかし、すべての業種に適しているわけではなく、特に向いている業種には共通する特徴があります。本記事では、ファクタリングが向いている業種の具体的な特徴や、利用することで得られるメリットについてわかりやすく解説します。売掛金の回収や資金繰りに課題を抱える方は、ぜひ参考にしてみてください。
ファクタリングに向いている業種の特徴とは
企業経営を続ける上で、「売掛金の回収まで時間がかかる」「コストの変動が激しい」「資金繰りが厳しい」といった課題を抱える業種は少なくありません。こうした問題を解決する手段の一つとして注目されているのがファクタリングです。
ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に売却し、期日よりも前に現金化する資金調達方法です。手数料がかかるものの、資金繰りの安定やキャッシュフローの改善に大きな効果をもたらします。特に、業種によっては資金繰りの救世主となる場合もあります。
売上が偏りやすい
特定の取引先に売上を依存する業種では、取引先の支払い遅延や倒産が発生した場合、経営が一気に不安定になるリスクがあります。
たとえば、製造業や建設業はその代表例です。製造業では特定の大手企業向けの大量注文が経営を左右することがあり、建設業ではゼネコンからの依頼がほとんどを占めることもあります。こうした一社依存型の業種は、資金回収の遅れが命取りになりかねません。ファクタリングを利用して、売掛金を前倒しで現金化することで、こうしたリスクを軽減し、安定した資金繰りを確保できます。
コストが変動しやすい
コストが頻繁に変動する業種では、収益構造が不安定になりやすい特徴があります。特に、原材料費や燃料費の影響を受けやすい業界では、その影響は甚大です。たとえば、運送業では、燃料費の高騰が利益を大きく圧迫します。また、原価率の高い業界では、仕入れ価格の変動が直接的にキャッシュフローを左右します。このような業種では、ファクタリングを活用して迅速に現金を手に入れ、コスト変動に柔軟に対応することが経営の安定に繋がります。
人材不足が深刻化している
少子高齢化が進む日本では、人材不足が深刻化している業界が増えています。特に、建設業や警備業、IT業界では人手不足が顕著であり、その影響で採用費や人件費が高騰している状況です。こうした業種では、人材確保のための費用が経営を圧迫するため、資金繰りが難しくなるケースが多々あります。銀行融資が難しい場合でも、ファクタリングで資金調達を行えば、必要な運転資金を確保しやすくなります。
回収サイトが長い
回収サイトとは、請求書を発行してから代金が支払われるまでの期間を指します。この回収サイトが長い業種では、売掛金が滞留することで資金繰りに支障をきたしやすくなります。たとえば、製造業や建設業、卸売業では、取引先との商習慣によって回収まで数ヶ月かかることも珍しくありません。この間に支払いが必要なコストが発生する場合、運転資金が不足してしまうことがあります。ファクタリングを活用すれば、売掛金を早期に現金化することで、回収サイトの長さによる影響を最小限に抑えられます。
支払いサイトが特殊
業種によっては、支払いサイトが特殊であるために資金繰りが複雑化するケースがあります。たとえば、IT業界や建設業では、全工程が完了してから初めて報酬が支払われる契約が多いです。そのため、修正対応や追加発注が発生すると、さらに支払いが遅れることがあります。こうした業種において、ファクタリングを導入することで、支払い遅延の影響を受けずに必要な資金を確保可能です。これにより、経営の安定性を高められます。
廃業リスクが高い
廃業率の高い業界では、売掛金を回収できないリスクが特に大きいです。たとえば、飲食業や小売業、宿泊業は廃業率が高い業種として知られています。取引先が倒産した場合、未回収の売掛金が発生し、経営が一気に傾く可能性があります。ファクタリングを活用して、売掛金を早めに現金化しておくことで、取引先の経営悪化によるリスクを軽減できます。廃業リスクが高い業界ほど、ファクタリングの有効性は大きいといえるでしょう。
ファクタリングのメリットとは
ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できる便利な資金調達手段です。他の方法に比べて、スピードや柔軟性、信用情報への影響の少なさといった点で大きなメリットがあります。ここからは、ファクタリングを利用することで得られる代表的なメリットを詳しく解説します。
赤字や税金・社会保険滞納でも利用できる
銀行融資や他の資金調達方法では、赤字決算や税金・社会保険料の滞納がある場合、審査に通らないケースがほとんどです。これに対してファクタリングは、企業の財務状況ではなく、売掛金の信用性を重視して審査を行うため、赤字や滞納がある場合でも利用できる可能性があります。
たとえば、業績が一時的に悪化している企業でも、安定した売掛先があればその売掛金を早期に現金化することで、資金繰りを改善可能です。このように、ファクタリングは柔軟な資金調達方法として、多くの企業にとって心強い味方となります。
信用情報に影響がない
ファクタリングは売掛金の「売買契約」に分類されるため、融資や借入のように負債として記録されることがありません。そのため、ファクタリングを利用しても企業の信用情報に影響を与えないのが大きなメリットです。
たとえば、銀行融資では利用履歴が信用情報に記録され、今後の審査に影響を及ぼす可能性がありますが、ファクタリングではその心配はありません。また、既に金融機関からの借り入れが多い場合でも、ファクタリングであれば別枠で資金調達を行えるため、さらなる資金調達の幅が広がります。
最短即日で売掛金を現金化できる
ファクタリングの大きな魅力は、資金調達のスピードです。通常、銀行融資や助成金の申請には数週間から数ヶ月を要することが一般的ですが、ファクタリングは最短で申し込み当日に現金化が可能です。
特に、急な資金ニーズが発生した場合には大変便利です。たとえば、予期せぬ設備の修理費用や、支払い期限の迫った取引先への支払いなどに即対応できます。さらに、最近ではオンラインで完結するファクタリング会社も増えており、手続きのスピードと利便性が向上しています。迅速な資金調達が必要な場面では、ファクタリングが最適な選択肢となるでしょう。
倒産リスクに対処できる
取引先の倒産リスクが懸念される場合にも、ファクタリングは非常に有効です。売掛金をファクタリング会社に売却することで、取引先からの支払いを待つことなく現金を受け取れるため、取引先が倒産しても未回収リスクを回避できます。特に、取引先の経営状況が不透明な場合や、業界全体が不安定な状況にある場合には、このメリットがより重要になります。
ファクタリングのデメリットとは
ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できる便利な資金調達手段ですが、他の方法と同様にメリットだけではなく、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、特に注意すべき「手数料」と「3社間ファクタリングにおける取引先の同意」について詳しく見ていきましょう。
手数料が発生する
ファクタリングの最大のデメリットは、手数料が発生する点です。ファクタリング会社に売掛金を売却する際、手数料として売掛金額の数%が差し引かれます。手数料率は契約の条件や取引の規模、売掛先の信用度などによって異なりますが、一般的には5%~20%程度が相場です。
たとえば、100万円の売掛金をファクタリングに出した場合、手数料が10%であれば、受け取れる金額は90万円となります。このように、ファクタリングを利用することで得られる金額は、売掛金の額面より少なくなります。
特に、手数料が高額な場合は利益を圧迫する可能性があるため、利用前に十分なコスト計算を行うことが重要です。また、複数のファクタリング会社を比較し、適正な手数料率を提示してくれる会社を選ぶこともポイントです。
3社間ファクタリングでは取引先の同意も必要
ファクタリングには主に「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2つの形式があります。そのうち、3社間ファクタリングでは、取引先(売掛先)の同意が必要となる点がデメリットとして挙げられます。
3社間ファクタリングとは、売掛金の債権譲渡を取引先に通知した上で行われる契約形態です。このため、取引先がファクタリングに同意しない場合、契約を進められません。また、取引先にファクタリングを利用していることを知られることに抵抗がある場合や、関係性に悪影響を及ぼす恐れがある場合には、慎重に検討する必要があります。
一方で、2社間ファクタリングでは取引先の同意が不要なため、取引先に知られることなく利用することが可能です。ただし、2社間ファクタリングは3社間ファクタリングと比較して手数料が高めになる傾向があるため、コスト面での負担が増える可能性があります。
3社間ファクタリングを検討する場合は、取引先との関係性や同意が得られる可能性を十分に考慮した上で進めることが重要です。
ファクタリングの利用率
ファクタリングは資金繰り改善のための有効な手段として注目されていますが、実際の利用率はまだそれほど高くありません。2020年に実施されたアンケート調査では、ファクタリングの利用経験があると回答した企業・個人事業主・自営業者はわずか3.8%という結果が出ています。
また、利用経験があると回答した事業者の中では、2社間ファクタリングの利用率が27.3%と高く、一方で3社間ファクタリングは13.3%にとどまるというデータもあります。さらに、金融庁が委託して行われた「貸金業利用者に関する調査・研究」では、ファクタリングの認知率が22.1%であることも判明しています。
ファクタリングを利用する際の注意点
ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できる便利な資金調達方法ですが、利用にあたっては注意すべき点もあります。これらを把握せずに利用すると、思わぬトラブルや後悔につながる可能性があります。以下では、ファクタリングを利用する際の主な注意点を見ていきましょう。
利用コストが高い
ファクタリングでは、サービスの対価として手数料を支払う必要があります。この手数料は、ファクタリング会社が利益を得るためのものですが、一般的に5%~20%と高めに設定されることが多く、場合によってはそれ以上になることもあります。
たとえば、100万円の売掛金をファクタリングに出し、手数料が10%の場合、実際に受け取れる金額は90万円です。この差額が利用コストにあたります。銀行融資などの他の資金調達方法に比べて割高なことがあるため、複数のファクタリング会社を比較検討し、より条件の良い会社を選ぶことが重要です。
売掛金の額が上限になる
ファクタリングでは、売掛金を譲渡することで現金化する仕組み上、調達できる金額は売掛金の額が上限となります。たとえば、売掛金が50万円であれば、それ以上の現金を手に入れられません。
そのため、必要な資金が売掛金を大きく上回る場合、ファクタリングだけでは不足することになります。このようなケースでは、銀行融資や他の資金調達方法との併用を検討する必要があります。
また、売掛金の金額がファクタリングの審査における重要な基準となるため、売掛金の額が十分でない場合、利用そのものが難しいケースもあります。事前に自社の売掛金額を確認し、計画的に活用することが大切です。
悪質な業者がいる
ファクタリング業界には、多くの信頼できる会社が存在する一方で、悪質な業者も少なからず存在しています。こうした業者は、法外な手数料を請求したり、不明瞭な契約内容を提示したりして、利用者に不利益を与えることがあります。
そのため、ファクタリング会社を選ぶ際は慎重に判断することが重要です。信頼性のある業者を選ぶためには、事前にその会社の評判や実績を調査する必要があります。公式ウェブサイトだけでなく、口コミやレビューを確認し、過去の利用者の評価を参考にしましょう。また、契約時には提示された条件や手数料の内訳を細かく確認し、不明点があれば納得がいくまで説明を求めることが大切です。
まとめ
ファクタリングは、売掛金を早期に現金化することで、資金繰りの安定をサポートする資金調達手段です。特に、売上が偏りやすい業種やコストが変動しやすい業種、人材不足や回収サイトの長さに課題を抱える業種において、その効果は大きいといえます。また、廃業リスクの高い業種にとっても、取引先の倒産リスクに備えられる有効な手段です。ファクタリングの特性をしっかり理解し、自社の経営課題に合った形で活用することで、キャッシュフローの改善に繋げていきましょう。