ファクタリングは、事業者が資金繰りをスムーズにするために活用できる便利な方法です。しかし、その利便性の裏にはリスクも潜んでいます。特に返済が難しくなるケースでは、法的トラブルや経営の悪化を招く可能性があるため、慎重な利用が求められます。本記事では、ファクタリングにおける返済リスクや、その回避方法、万一返済ができなくなった場合の対処法について詳しく解説します。ファクタリングを適切に活用し、事業の安定を確保するための知識を深めましょう。
ファクタリングの踏み倒しはNG
ファクタリングを利用する際、「踏み倒し」は絶対にしてはいけません。もしファクタリング会社への売掛金の支払いが難しくなったとしても、無視したり意図的に支払わなかったりする行為は大きなリスクを伴います。
なぜなら、ファクタリング契約を結んだ時点で、売掛債権はすでにファクタリング会社に移転しています。つまり、売掛金の回収分を利用者が使い込んだ場合、それは「横領」とみなされる可能性が高いのです。
さらに、売掛金の引き渡し義務があるにもかかわらず、それを無視して踏み倒す行為は、最悪の場合「詐欺罪」として訴えられるリスクもあります。このような事態が発生すれば、刑事事件に発展する可能性すら否定できません。
ファクタリングで返済できない状況に陥る理由
ファクタリングは資金繰りの改善に役立つ便利なサービスですが、何らかの理由で返済できない状況に陥ることもあります。「なぜそのような事態が起きるのか?」を理解しておくことは、トラブルを防ぐためにとても重要です。ここでは、よくある3つの原因についてわかりやすく解説します。
売掛先から入金がない
最もよくある理由は、売掛先からの入金が期日までに行われないケースです。本来、売掛金が入金されれば、それをファクタリング会社に渡す仕組みですが、売掛先が支払いを遅延すれば、その流れが止まってしまいます。
このような場合、まずはファクタリング会社に状況を正直に報告することが大切です。そして、売掛先には早急に支払いを促す必要があります。ただし、「償還請求権なし」の契約であれば、売掛金が未回収だったとしても利用者が直接責任を負うことはありません。
一方で、「償還請求権あり」の契約では、未回収リスクが利用者に及びます。この形式は融資に近い仕組みであり、法律で定められた貸金業登録を持つ業者だけが取り扱えるものです。もしも違法な業者と契約してしまうと、さらに大きな問題に発展する恐れがあるため、契約前の確認が重要です。
回収した売掛金の使い込み
もう一つの大きな原因は、回収した売掛金を使い込んでしまうことです。例えば、急な支払いが必要になり、つい売掛金を流用してしまうケースが挙げられます。
先述の通り、売掛金はすでにファクタリング会社に譲渡されたものであり、利用者が使い込む行為は「横領」と見なされる可能性が高いです。これが発覚すれば、売掛先に債権譲渡の事実が通知されるだけでなく、最悪の場合は法的措置が取られる可能性もあります。
ファクタリングで返済できないときの対処法
ファクタリングを利用することで資金繰りの改善が期待できますが、何らかの理由で返済ができなくなるケースもあります。このような場合、状況に応じた適切な対処が必要です。返済不能が経営に与える悪影響を最小限に抑えるため、ここでは具体的な5つの対処法を詳しく解説します。
返済期日延期や分割納付の交渉をする
ファクタリング会社への返済が難しい場合、まず試みるべきは返済期日の延期や分割払いについて交渉することです。ファクタリング契約では、売掛債権が譲渡されているため、原則として返済期日に資金が準備できないことは想定外とされています。しかし、実際には売掛先からの入金遅延や予期しない資金ショートといった理由で返済が難しくなるケースが少なくありません。
このような状況では、正直に現状をファクタリング会社に説明し、返済計画を提示することで柔軟な対応を求められます。ただし、この交渉が成功するかどうかは、ファクタリング会社のポリシーや契約内容に左右されます。また、こうした交渉を行うことで、今後の取引関係が厳しくなる可能性がある点にも留意する必要があります。そのため、交渉に入る前に具体的な返済計画を作成し、相手に誠意を示すことが重要です。
キャッシュフローを見直す
返済問題を根本から解決するためには、会社全体のキャッシュフローを見直すことが必要です。特に、売上と支出のバランスが崩れている場合、問題を解消しない限り同じ状況が繰り返される可能性があります。
例えば、経費削減のために不要な契約やサービスを解約することは短期的な効果が期待できます。また、遊休資産や未使用の設備がある場合は、それらを売却して現金化することで資金繰りを改善できます。さらに、売掛先と交渉して支払い条件を見直し、入金サイクルを早める努力も効果的です。
融資を利用する
返済資金を調達するために融資を検討することも有効な手段です。特に、公的融資制度は金利が低く、場合によっては無利子で資金を調達できる可能性があります。例えば、地方自治体が提供する事業者向けの融資制度は、緊急の資金調達には適さないものの、長期的な経営安定化には役立ちます。
ただし、融資を受けるためには審査が必要であり、返済計画の提示や担保の提供が求められる場合があります。また、審査に通らないリスクもあるため、融資だけに頼らず、他の選択肢と併用して資金調達を進めることが重要です。
ビジネスローンを利用する
迅速な資金調達を求める場合、ビジネスローンの利用も検討できます。ビジネスローンは、通常の融資に比べて審査が迅速であり、場合によっては即日での資金調達が可能です。このため、返済期限が迫る中で緊急の資金が必要な場合に有効な手段と言えます。
しかし、ビジネスローンには高金利が設定されていることが多く、返済総額が大きくなるリスクがあります。また、ビジネスローンの利用履歴は信用情報に記録されるため、将来的な金融取引に影響を与える可能性があることを理解しておくべきです。
弁護士に相談する
返済問題が深刻化し、法的トラブルに発展する可能性がある場合には、弁護士に相談することが欠かせません。特に、ファクタリング契約に不備や違法性が疑われる場合には、専門家の力を借りることで問題を解決できる可能性があります。
また、悪質なファクタリング業者との取引でトラブルが発生した場合でも、法的措置を通じて被害を最小限に抑える手助けをしてくれます。さらに、自治体や商工会議所が提供する無料相談を活用することで、費用を抑えつつ専門的なアドバイスを得ることも可能です。
ファクタリングが返済できない場合のリスク
ファクタリングは、事業資金の迅速な調達に役立つ便利な仕組みですが、返済義務を果たせない場合には深刻なリスクが伴います。未払いが長引くと、単なる取引問題にとどまらず、法的措置や刑事罰に発展する可能性があるため、十分な注意が必要です。ここでは、返済不能に陥った際に直面する2つの重大なリスクについて詳しく説明します。
訴訟を起こされる
ファクタリングの返済が滞ると、まず考えられるのはファクタリング会社からの訴訟です。未払いの状態が続くと、ファクタリング会社は契約違反に基づき、民事訴訟を提起する可能性があります。契約書に記載されている遅延損害金や未払い金額に加え、訴訟費用や弁護士費用が利用者に請求されることも珍しくありません。
通常、ファクタリング会社は未払い問題を解決するために、まず示談交渉を試みます。この段階で合意が得られない場合、簡易裁判所での調停を経て、それでも解決しなければ正式な訴訟に進む流れとなります。裁判所で下される判決には強制力があり、支払い命令が確定した後も未払いを続けると、給与や資産の差し押さえが実行される可能性があります。
特に注意すべきなのは、2社間ファクタリングを利用している場合です。この形式では、売掛先に債権譲渡の通知が送られることがあります。売掛先に通知が届けば、事業者の信用が損なわれ、取引停止や契約解消といった深刻な影響を受ける可能性があります。ファクタリングの未払いは単なる金銭的な負担にとどまらず、事業そのものに大きなダメージを与えるのです。
刑事罰に処される
さらに深刻なのが、返済問題が刑事事件に発展するリスクです。売掛金はファクタリング契約の成立時点でファクタリング会社の所有物となります。そのため、売掛金を受け取った利用者がこれをファクタリング会社に引き渡さずに使い込む行為は、業務上横領罪に該当するのです。この罪が成立した場合、刑罰として「10年以下の懲役」が科される可能性があります。また、架空の売掛金を用いてファクタリング契約を結んだり、請求書を水増ししたりするなどの不正行為を行った場合には、詐欺罪に問われます。この場合も、同様に「10年以下の懲役」という重い刑罰が科される可能性があります。
刑事告訴が行われた場合、警察の捜査が始まり、逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断されれば逮捕に至ることも。逮捕された場合、身柄の拘束が業務に与える影響は計り知れません。取引先や従業員、家族にも大きな迷惑が及び、信用回復は非常に困難となるでしょう。前科が付くことで今後の事業展開にも支障を来すことが予想されます。
返済できない状況に陥らないためのポイント
ファクタリングは、売掛金を早期に現金化することで資金繰りを改善する便利な手段ですが、適切に利用しなければ、返済できない状況に陥る可能性があります。こうした事態を避けるためには、事前の準備や適切な選択が欠かせません。以下では、ファクタリングを安心して利用するための3つのポイントを解説します。
3社間ファクタリング
ファクタリングを利用する際、返済リスクを最小限に抑えたいなら、3社間ファクタリングを選ぶことが重要です。この形式では、売掛先からの支払いが直接ファクタリング会社に行われるため、利用者が資金を介在させる必要がありません。つまり、売掛金を受け取る機会がないため、資金を使い込むリスクや返済不能に陥るリスクを大幅に軽減できます。
一方で、3社間ファクタリングは売掛先への債権譲渡通知が必要なため、売掛先との関係性によっては利用を躊躇する場合もあるでしょう。しかし、透明性の高い契約内容や売掛先との十分なコミュニケーションを確保することで、円滑な取引が可能になります。
計画を立てた上で利用
ファクタリングを活用する前に、しっかりとした計画を立てることは不可欠です。特に、どの売掛債権をどのタイミングでファクタリングに利用するのかを明確にしておく必要があります。無計画に利用すると、売掛金の目減りが進み、かえって資金繰りが悪化する可能性があります。
ファクタリングは本来、短期的な資金繰りの改善を目的とした手段です。しかし、繰り返し利用することで手数料が積み重なり、長期的には財務状況を圧迫するリスクがあります。そのため、ファクタリングの利用は一時的な解決策と位置付け、長期的な資金計画と併せて実施することが重要です。
手数料を見直す
ファクタリング利用時の手数料は、返済能力に直接影響する重要な要素です。手数料が高い場合、本来の売掛金の金額が大幅に減少し、資金繰りが改善されるどころか悪化することもあります。そのため、利用するファクタリング会社の手数料率をしっかりと確認し、必要に応じて見直すことが必要です。
現在契約しているファクタリング会社の手数料が高いと感じる場合は、他のファクタリング会社への乗り換えを検討することも一つの方法です。新たな契約を結ぶ際は、手数料の安さだけでなく、会社の信頼性やサービス内容も重視しましょう。
まとめ
ファクタリングは、適切に利用すれば資金繰りの改善に大きく役立ちますが、返済が難しくなると重大なリスクが伴います。売掛金の管理ミスや計画不足は、法的トラブルや信用失墜につながる恐れがあります。そのため、契約内容を十分に理解し、3社間ファクタリングの活用や手数料の見直し、計画的な運用を徹底することが重要です。また、返済困難に陥った場合は迅速に専門家へ相談し、最善の対応を図ることが必要です。事前の準備と適切な行動で、ファクタリングの利便性を最大限に引き出しましょう。