ファクタリングには大きく分けて、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという2種類の資金調達方法があります。
それぞれ契約締結に際しての仕組みや特徴、手数料相場など、同じファクタリングではあるものの内容はかなり違います。
本稿ではそんなファクタリングのうち、一般的にメジャーな2社間ファクタリングという方法を詳しく解説していきます。
ファクタリングと言う資金調達方法は聞いたことがあるが、その詳細は分からない事業者様や、資金繰り改善の手立てを検討されている事業者様などは、是非最後までご一読頂き、2社間ファクタリングをご検討頂けましたら幸いです。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリング
前述の通り、ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという2種類の資金調達方法が存在します。
2社間ファクタリングとは、文字通りファクタリングの利用者とファクタリング会社の2社間で、利用者が保有する売掛債権の売買契約を締結する方法です。
一方、3社間ファクタリングは利用者とファクタリング会社に加えて、売掛先も含めた3社間で売掛債権の売買契約を締結する方法になります。
2社間ファクタリングの成立経緯
日本でファクタリングが登場したのは1970年代初め頃です。
当時は今のような掛け取引ではなく、主に手形による取引でした。
手形取引とファクタリングは、債権回収という目的が似ている点もあり、特段広く周知されることはなく、その存在を知っている一部の企業で限定的に利用されていました。
1991年にバブルが崩壊し、手形取引はこれをきっかけに減少していくのですが、逆にこのことがきっかけで現在の掛け取引が主流となり、併せてファクタリングも徐々に普及されていきます。
2000年代からは、インターネットが一般的に普及したため、現在も広く活用されている電子決済が併せて普及しました。
又、貸金業法が改正されたことで利息にも制限が設けられ、貸金業者が融資の次のビジネスモデルとして、ファクタリングを展開していきました。
このような成立経緯があり、現在の2社間ファクタリングは広く普及されました。
2社間ファクタリングの仕組み
前述の通り、手形取引から掛け取引に移行し、インターネットの普及による電子決済の導入などに併せて、現在の2社間ファクタリングが成立していきました。
本稿では、そんな2社間ファクタリングの仕組みを、1.~6.までに分けて記載致します。
1.利用者が売掛先に商品・サービスを提供し、代金を請求する
2.利用者と事業者間で債権譲渡契約と集金業務委託契約を締結する
3.事業者が債権譲渡の登記をする
4.事業者が利用者に売掛債権の代金を支払う
5.売掛先が利用者に売掛金を支払う
6.利用者が事業者に支払われた売掛金を渡す
2社間ファクタリングのメリット
前述の1.~6.で記載している通り、2社間ファクタリングは仕組みが非常にシンプルで、資金調達方法としてはかなり手軽で便利な方法と言えるでしょう。
本稿ではそんな2社間ファクタリングのメリットを、詳しく解説していきます。
売掛先が関わらない
2社間ファクタリングのメリットとして、売掛先が関わらない点が挙げられます。
2社間ファクタリングは基本的に利用者とファクタリング会社の間で売掛債権の売買が実施されます。
これによって、事業者が抱える急な資金調達ニーズにも柔軟に対応することが出来ますので、売掛先が関わらない点は2社間ファクタリングの大きなメリットと言えるでしょう。
一方の3社間ファクタリングにおいては、契約締結に際して必ず売掛先も含めた3社間で取引が実施されますので、利用者にとっては取引先に売掛債権の売却を検討している背景の説明や、3社間ファクタリングに協力して頂く了承を得ること、更に申し込みや審査に際しての協力も要請しなければならず、柔軟に対応できる方法とは言い難い特徴があります。
売掛先が関わらない点は、2社間ファクタリングならではのメリットと言えるでしょう。
売掛先にバレるリスクが低い
2社間ファクタリングのメリットとして、売掛先にバレるリスクが非常に低い点が挙げられます。
2社間ファクタリングは基本的に利用者とファクタリング会社の間で売掛債権の売買が実施されますので、売掛先が取引に関わることはありません。
そのため、例えば売掛債権の早期現金化を図っている事実を知られることによって、取引先から経営状況が悪化しているのではないか、そのうち倒産するのではないか、等と言ったマイナスな印象を持たれるリスクもありませんし、それによって取引状況の悪化を招く危険性もありません。
現金化が早い
2社間ファクタリングの最大のメリットともいえる点が、売掛債権の現金化までの早さです。
昨今はオンラインファクタリングと言って、申し込みから審査の必要書類のアップロード、審査完了から査定金額の確定、契約締結、現金の振込までの全ての工程をWeb上のみでスピーディに完結できる仕組みも普及しています。
これによって、近隣にファクタリング会社がない地方の利用者であっても、問題なく最短即日での売掛債権の現金化が実施できる環境が整っています。
突発的な出費が出てしまった際や、売掛債権の支払いサイトが長期化しているなどの理由から、資金繰りの改善や事業者の様々な資金調達ニーズを最短即日で叶えることが出来る資金調達方法は非常に稀であり、2社間ファクタリングはこういった事業者のお悩みを解決する強い味方と言えるでしょう。
このように、売掛債権の現金化が最短即日で実施される、現金化までの早さは2社間ファクタリングの最大のメリットと言っても過言ではありません。
2社間ファクタリングのデメリット
ここまでは、前述の通り2社間ファクタリングを活用するにあたってのメリットを解説してきました。
売掛先が契約に関わらず、尚且つ売掛債権の売却の事実を知られるリスクがほとんどなく、それでいて最短即日でオンライン上のみで売掛債権の現金化が実施出来る、ここまでの内容ですと2社間ファクタリングは事業者にとって非常に魅力的な資金調達方法だと言えるでしょう。
しかしながらそんな2社間ファクタリングにも、確実にデメリットは存在します。
本稿では2社間ファクタリングのデメリットに関して解説していきます。
手数料が高い
2社間ファクタリングの唯一のデメリットともいえるのが、手数料の高さです。
2社間ファクタリングの手数料は10%から30%程が手数料の相場となっています。
先ず、ここで相場という文言を利用している理由から解説いたします。
一般的な資金調達方法として最もメジャーなのは、銀行や金融機関からの融資やローンなどの借り入れです。
銀行や金融機関からの、融資やローンなどの借り入れには利息が付きますが、これは利息制限法に則ってパーセンテージが定められています。
基本的に上限金利は年利で15%から20%となっています。
これを月利に直すと、約1.25%から1.7%程となっています。
これに対して、ファクタリングは一回の売掛債権の譲渡に際して、手数料が平均10%から20%かかってきます。
これは、前述の銀行や金融機関の借り入れの10倍以上の手数料相場と捉えることが出来るでしょう。
この手数料相場の高さは、ファクタリングを利用するにあたっての大きなデメリットと言えます。
2社間ファクタリングは違法なの?
「2社間ファクタリングの仕組みは違法ではないか?」 と心配する方もいるようですが、けっして違法ではなく「合法」です。
2社間ファクタリングの場合は売掛先にファクタリング利用の事実は伝えず、利用者がファクタリング会社を代理して、債権を受領しファクタリング会社に引き渡す仕組み(以下「代理受領」)になっています。
この「代理受領」の仕組みが、借金を返済する行為に類似していることから、2社間ファクタリングは実質的には「貸付け」又は「貸金業」ではないかという疑義が生じる場合があります。
債権譲渡は民法に規定されている
ファクタリングに関しては、銀行法や貸金業法などのような事業者を規制する法律がありませんので、民法その他の法律に従うことになります。
民法(第466条第1項)は、「債権は譲り渡すことができる。」と規定しており、債権譲渡に何ら違法性はありません。
また、民法(第4節債権の譲渡:第466条から第469条)に債権譲渡に関する法律が規定されておりますので、ファクタリングはこれらの法律に従って取引されております。
「債権の売買」であり「貸付け」ではない
「貸付け」とは法令上は「金銭消費貸借」と言いますが、「金銭消費貸借の本質は、返還約束にあり、その内容は借主が弁済期に貸主から交付を受けた金銭と同額の金銭を返還することにある(令和3年6月10日東京高判)」とされております。
しかし、ファクタリングは仮に売掛先が倒産したとしても、一旦、利用者が受け取った売買代金を返還する義務を負う契約(買戻し特約)にはなっておりませんから、金銭消費貸借の本質である「返還約束」は存在しないため、法律上の評価も「貸付け」ではないことになります。
ところが、2社間ファクタリングは前述したように「代理受領」の仕組みがあることから、これが「借金を返済する行為」に見えてしまうため人によっては「貸付け」ではないかという誤解が生じることがあるようです。
(注釈)
ファクタリングの対象債権が会社員などの給料(賃金債権)の場合は、「本人に直接支払わなければならない」といった原則(労働基準法)がある関係から、給料(賃金債権)の債権売買の場合は、貸付けとみなされます。
一方で、事業者向けの2社間ファクタリングで譲渡対象になるのは売掛債権であり、給料(賃金債権)のような直払いの原則がありませんので貸付金とはみなされず、売買取引となります。
前述した給料(賃金債権)の売買ですが、実際に「給与ファクタリング」という手法で、実質的に個人に高利で貸付けを行うヤミ金融の存在も確認されていますので、こちらについても十分注意してください。
多くの裁判例で認められている
2社間ファクタリングに関する多くの裁判例はあるものの、裁判所も2社間ファクタリング自体は合法と認めております。
ただし、全ての2社間ファクタリングが合法とはいえず、ファクタリング契約に「買戻し特約(償還請求権)」が付されているような場合は、債権の売買ではなく、貸付けとみなされ、この場合は「貸金業」登録をしていない業者は違法です。
「買戻し特約」とは、売掛先から債権を回収できなかったときには、利用者に債権を買い戻させお金を返還させる契約を指します。
繰り返しますが、「買戻し特約」や「償還請求権」がついたファクタリング契約は「貸付け」として扱われるため、サービスとして提供する業者は貸金業登録が必要です。
貸金業登録なしでこれを行うと違法になります。
「買戻し特約」や「償還請求権」のない2社間ファクタリング契約なら貸金業登録は不要(貸付けではない)で、真正な売買契約として合法とする裁判例が圧倒的多数であり法的な問題はないといえます。
国も債権流動化を推奨している
国も中小企業の資金調達の方法として、債権を流動化することを積極的に推奨しています。
たとえば経済産業省中小企業庁の公式サイトの「売掛債権の利用促進について」では、売掛債権の利用促進について呼びかけています。
さらに平成29年の民法改正により、 従来、譲渡制限特約付きの債権を、譲受人(ファクタリング会社)が知ったうえで譲り受けた場合、債権譲渡自体が無効となっていたところを、有効となるよう改正され、また「将来発生する債権も譲渡が可能」と、明確に規定されました。
これらは、正に国が売掛金などの債権の流動化を推奨し、中小企業の多様な資金調達を実現するためにした法改正といえます。
2社間ファクタリングとは?2社間ファクタリングの仕組みやメリット、デメリットを詳しく解説!のまとめ
2社間ファクタリングの仕組み
1.利用者が売掛先に商品・サービスを提供し、代金を請求する
2.利用者と事業者間で債権譲渡契約と集金業務委託契約を締結する
3.事業者が債権譲渡の登記をする
4.事業者が利用者に売掛債権の代金を支払う
5.売掛先が利用者に売掛金を支払う
6.利用者が事業者に支払われた売掛金を渡す
2社間ファクタリングのメリット
・売掛先が関わらない
・売掛先にバレるリスクが低い
・現金化が早い
2社間ファクタリングのデメリット
・手数料が高い
2社間ファクタリングは、上記の通り売掛先とファクタリング会社の2社間で取引が完結する、シンプルな仕組みとなっています。
又、その仕組み故に取引先に売掛債権の売却を実施している事実がバレて関係性が悪化するリスクもなく、尚且つ最短即日で売掛債権の現金化が可能となっています。
しかしながらそんな2社間ファクタリングにも、手数料が高いというデメリットがあります。
事業者にとって非常にメリットが多い2社間ファクタリングですが、手数料に注意した上で、有効に活用してきましょう。