企業経営をする中で、さらなる事業拡大のためや、現状利用している設備の老朽化などを受け、新しい設備導入を決断するタイミングもあるかと思います。こうしたタイミングで重要になるのが、設備導入のための資金の確保です。
こうした設備導入資金として、ファクタリングが利用できるかどうかという点に関して解説していきましょう。
設備導入費用にファクタリングは利用可能?
ファクタリングは、手元にある売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を入金期日前に現金化する資金調達法です。このファクタリングで、自社の設備導入の費用を賄うことも可能です。
ファクタリングは債権譲渡契約であり、貸金契約ではありません。つまりファクタリングの利用金額が増えたとしても、自社の負債は増えません。そのため債務超過の状態にある企業が、設備導入を考えた場合にも利用できる資金調達法となります。
設備導入による負債が増えないというのは、企業経営をする中でも非常に有利な状況となりますので、設備導入費用の調達でファクタリングを利用するというのはおすすめの方法となります。
ファクタリングを利用して設備導入を目指す場合の注意点
ファクタリングを利用して設備導入の資金を調達する場合、注意すべき点に関して解説していきましょう。
ファクタリングは売掛金の前払いであることを認識する
ファクタリングは売掛金を入金期日前に現金化する資金調達法です。言い方を替えれば、売掛金の前払いシステムとも考えられます。
売掛金が前払いされるということは、元来その売掛金が入金される日に、売掛金が手に入らないということになります。ファクタリングによる資金調達は、負債とはならないため利用しやすいというメリットがある反面、売掛金入金日周辺で、再び現金不足になる危険性があるというデメリットもあります。
設備導入には一定以上の費用が必要かと思います。もちろん導入する設備次第ではありますが、ある程度の予算が必要な設備導入を行う場合、それなりの売掛金を前払いしてもらう必要があります。つまり、それだけ売掛金入金日周辺の資金繰りに与える影響も大きいということです。
ファクタリングを利用して、設備導入費用を賄う場合は、売掛金入金日周辺の資金状況をしっかりと想定し、後に経営が厳しくならないような状況で利用するのがおすすめとなります。
設備導入に必要な予算をきっちり計算する
設備導入といっても、いろいろな設備の導入が考えられます。重要なのはきっちりと見積もりを受け取り、どの程度の予算が必要になるのかを理解しておくことです。
ファクタリングは借り入れではない形で、比較的手軽に利用できる資金調達法です。しかしポイントとして、売掛金以上の資金調達はできないというポイントがあります。売掛債権を譲渡した売却益として現金を受け取るわけですから、売掛金以上の金額を受け取ることはできません。
ファクタリングで用意できる設備導入費用は、あくまでも売掛金の金額次第であるという点は理解しておきましょう。
また、売掛金と同額を手に入れることもできないのがファクタリングです。ファクタリングを利用する際は、手数料等必要経費の支払いが必須となりますので、手にできる金額は売掛債権の額面金額よりも低い金額です。
一般的なファクタリングで、どの程度の金額が手にできるかを簡単に説明しておきましょう。ファクタリングで手にできる金額を算出するためには、3つの費用を考えなければいけません。
・手数料
・掛け目
・諸経費(債権譲渡登記費用を含む)
手数料はファクタリング会社の儲けにあたる部分であり、支払いは必須です。2社間ファクタリングで10~30%程度、3社間ファクタリングで1~9%程度が相場と言われています。
掛け目とは、持ち込んだ売掛債権の額面金額の何%をファクタリングの対象とするかを定める数値です。かつてファクタリングでは、額面金額全額が対象となるのが一般的でしたが、最近ではこの掛け目を導入し、売掛金の一部をファクタリング対象とするケースが増えています。掛け目の相場は2社間ファクタリングで70~90%程度、3社間ファクタリングで80~95%程度となります。
最後に諸経費ですが、特に債権譲渡登記が必須となる契約の場合、債権譲渡登記費用が重要になります。債権譲渡登記とは、いつ誰から誰に売掛債権が譲渡されたのかという情報を、法務局に登記することで、債権の二重譲渡を防ぐためのものです。
多くの2社間ファクタリング契約では、債権譲渡登記が必須となっており、この費用も考えておく必要があります。債権譲渡登記は、ファクタリング会社が契約する司法書士に依頼して行いますので、その司法書士に支払う報酬や、債権譲渡登記に必要な実費の支払いが発生します。相場は5~8万円程度と言われており、この分も売掛金から差し引く必要があります。
これらの条件を加味し、仮に額面金額500万円の売掛債権を以下の条件でファクタリングした場合、早期に手にできる現金金額を考えてみましょう。
・手数料 10%
・掛け目 90%
・諸経費 8万円
まずは額面金額の90%がファクタリング対象ですから、ファクタリングできる金額は450万円となります。続いてそこから手数料が差し引かれますので、手数料10%を差し引いた405万円が算出されます。ここから諸経費も差し引かれるため、最終的に手にできる現金金額は、397万円となります。
このようにファクタリングを利用することで、ある程度支払うべき費用がありますので、こうした費用を差し引いても、設備導入資金に足りるかどうかを考えてファクタリングを利用するかどうかを決めるべきでしょう。
設備導入にファクタリングは最適か?
企業が設備導入をする場合に、ファクタリングを利用すべきかどうかという点に関して解説していきます。
ファクタリングで補えるのであれば最適
上記の通り、ファクタリングで準備できる現金は、売掛金よりも安い金額となります。契約条件次第の部分はありますが、この点は意識しておきましょう。
自社が持つ売掛金の金額と、設備導入に必要な予算をしっかりと計算し、ファクタリングで十分賄えるという計算ができる場合は利用が推奨となります。もちろんこの時には、売掛金が支払われる日周辺の資金状況もしっかりと検討しておく必要があります。
ファクタリングは利用しやすく、また負債が増えないという点でも非常に優秀な資金調達法です。そのファクタリングで賄えるのであれば、ファクタリングの利用がおすすめということになります。
無理なファクタリングよりも資金融資を推奨
ファクタリングを利用すれば設備導入が可能であるものの、そのかわり売掛金入金日周辺の資金状況が不透明となる。といった場合には、あまりおすすめできる方法とは言えません。設備導入費用が高額であり、ファクタリングで賄うのは難しい場合や、何とか賄えるが、その後の資金繰りに不安が残るといった場合は、ファクタリングではなく資金融資を受けるのがおすすめです。
ある程度高額な予算が必要になる設備導入の場合、時間をかけて少しずつ返済できる資金融資のほうが、リスクが少ない資金調達法といえるでしょう。
また、ひとつの方法論として、ファクタリングと資金融資を合わせて考えるという方法もあります。特に急ぎ必要な設備導入の場合、必要な予算をファクタリングで準備し、同時に金融機関に資金融資を申し込むという方法です。
イメージとしては急場の出費はファクタリングで対応し、その対応で厳しくなる資金繰りを資金融資でカバーするという考え方です。資金融資は金利が安く、企業経営への影響を抑えて利用できる資金調達法ですが、融資までに時間がかかるというデメリットがあります。この時間を埋めるためにファクタリングを利用するという方法です。
ファクタリングと資金融資のデメリットを打ち消し合い、有効に活用できる表法といえるでしょう。
ファクタリング・設備導入のまとめ
ファクタリングは設備導入の資金確保にも利用可能な資金調達法です。ただし、ファクタリングでは、売掛金よりも安い金額までしか現金を手にできません。その金額で賄える範囲の設備導入であれば、ファクタリングによる資金調達を検討しましょう。
ファクタリングでは対応が難しい金額の場合は、資金融資等でしっかり予算を確保するのがおすすめです。企業経営者として、より多くの資金調達法を知り、そのメリット・デメリットを理解した上で、上手に活用できるように準備しておくのがおすすめです。