ファクタリングは売掛債権を活用した資金調達法です。債権をファクタリング会社に売却することで資金を得ますが、債権を買い取る会社としては、債権回収会社という会社が存在します。
ファクタリング会社と債権回収会社の違いとはどのような点があるのか、一般的な中小企業はどちらを活用すべきかという点を中心に解説していきます。
ファクタリング会社と債権回収会社は違う
ファクタリング会社と債権回収会社は、ともに債権譲渡契約を結ぶ会社であり、債権を取引する会社ですので、この点では同じです。しかし、そもそも取り扱う債権や、主な顧客に大きな差があります。
一般的な企業が、債権譲渡取引を行うのであればファクタリング会社であり、債権回収会社を利用することはまずありません。
混同されがちなファクタリング会社と債権回収会社の違いを細かく解説していきましょう。
債権回収会社とは?
まずは債権回収会社に関して解説していきます。債権回収会社は「サービサー」と呼ばれ、特定の債権を回収するための会社です。多くの場合は、銀行等金融機関の関連会社であり、買い取った債権を回収することで、利益を得ています。
不良債権を買い取り回収業務を行う
債権回収会社が取り扱うのは、不良債権等、支払いが行われなかった債権に関してです。通常債権に対する支払いがなかった場合、債権を持つ方や企業がその回収を行いますが、債権の回収は簡単ではありませんし、何より回収に手間や人員、そして時間をかける必要生じます。
こうした人員や手間などをなくすために、不良債権となった債権を債権回収会社に売却し、代わりに回収してもらうというのが一般的な利用法です。債権回収会社に不良債権を売却する場合は、額面金額よりもある程度安い金額での売却となります。例えば額面金額100万円の債権であれば、50万円で売却するなどです。
債権を買い取った債権回収会社は、新たな債権者となり、債務者から回収を行います。債権の所有権は債権回収会社に移行していますので、回収できた金銭は、債権回収会社の収入ということになります。
上のように、100万円の債権を50万円で購入し、利息も合わせて120万円回収できれば、債権回収会社は70万円の収益があったということになります。もちろん、回収ができなければ、買い取ったときの50万円はそのまま損失です。
このように、すでに不良化した債権を買い取り、回収業務を行うのが債権回収会社ということになります。
主な顧客は金融機関等
債権回収会社は、金融機関等の関連会社であることが多いのが特徴です。その理由は、主な顧客が金融機関やクレジットカード会社などだからです。自社の関連会社として債権回収会社を設立し、自社で不良化した債権があればその債権回収会社に売却するというのが、金融機関の一般的な形となります。
債権回収会社は、主な顧客が金融機関等であり、目的は不良化した債権の回収を行うことであるというのが基本的な特徴です。
ファクタリング会社とは?
債権回収会社同様に、債権を買い取ることを本業としているのがファクタリング会社です。では、ファクタリング会社の特徴から、特に債権回収会社と違う部分をピックアップして紹介していきましょう。
売掛債権を買い取り手数料を収益とする
ファクタリング会社が買い取る債権は、不良化していない売掛債権です。まだ支払期日が来ていない債権を買い取る際に手数料を受け取り収益としています。例えば企業が持つまだ支払期日が来ていない100万円の売掛債権を、手数料10%で買い取るというのが一般的な形です。この場合、ファクタリング会社の収入は、手数料分の10万円となります。
ファクタリング会社は、債権譲渡契約が締結されると、債権者企業に90万円を支払い売掛債権を買い取ります。後日売掛金の入金日に入金された100万円を手にすることで、差額10万円の収益を得るのが基本的な形となります。
債権回収会社との大きな違いは、すでに不良化した債権を買い取るか、まだ支払期日が来ていない、不良化していない債権を買い取るかという点です。
主な顧客は中小企業
ファクタリング会社は、まだ不良化していない売掛債権を買い取りますので、主な顧客は中小企業ということになります。ファクタリング会社を利用する中小企業は、手数料を支払う必要はあるものの、売掛債権を早期現金化することができます。ファクタリング会社は、手数料という収入を受け取り、新たな債権者として、債権の回収を行います。
金融機関等を中心に、不良化した債権を買い取る債権回収会社とは、債権を買い取る目的も、取り扱う債権も大きく違うということになります。
ファクタリングを利用した資金調達法のポイント
中小企業の立場から見ると、利用するのはファクタリング会社が中心となります。債権回収会社を利用するケースは稀であり、むしろ利用するような機会を無くすことが重要といえるでしょう。
では、中小企業が、ファクタリング会社を利用した場合のメリットとなるポイントを紹介していきましょう。
現金化が早い
ファクタリングは資金調達法の一つとして活用されています。ほかの資金調達法との大きな違いは、現金化スピードの早さです。
通常のファクタリング契約でも申し込みから2~3日程度で現金を手にすることができます。また、最近では申し込み即日に現金化に対応するファクタリング会社が増えており、即日に現金を手にすることも可能です。
企業経営をする中で、急遽まとまった現金が必要になった場合や、資金繰りが厳しくなった瞬間に対応できる資金調達法として、活用する企業が増えているのがファクタリングです。
審査に通りやすい
ファクタリングは債権譲渡契約を結びます。債権回収会社も同じく債権譲渡契約を結びますが、この債権譲渡契約は、当事者同士がその条件を比較的自由に設定できる、自由契約となっています。
ファクタリング会社は契約前に審査を行いますが、この審査はふるい落とすための審査ではなく、どのような条件であれば契約できるかを決めるための審査です。そのため比較的審査の通過率は高く、中小企業にとっては利用しやすいという点もメリットとなっています。
借り入れ契約ではない
ファクタリングは、売掛債権を譲渡することで売掛金を早期現金化する資金調達法であり、他の資金調達法のような貸金契約ではありません。借り入れをするわけではありませんので、当然ですが返済の義務は発生しませんし、自社の信用情報にも影響がありません。
借り入れを増やさずに必要な現金を用意できる方法として、多くの企業が活用しています。
売掛金の未回収リスクを回避できる
ファクタリングで債権譲渡契約を結ぶと同時に、売掛金の未回収リスクも、ファクタリング会社に譲渡することができます。仮にファクタリング契約を結んだ売掛債権で、売掛金の未払いが発生した場合、ファクタリングを申し込んだ企業に回収義務はありません。
売掛金を回収するのは、売掛債権を買い取り、新たな債権者となったファクタリング会社の役目となりますので、申し込み企業は、売掛金の未回収リスクを回避することができます。
ファクタリング・債権回収会社のまとめ
ファクタリング会社も債権回収会社も、顧客から債権を買い取る債権譲渡契約を結ぶという点では同じといえます。ただし、買い取る目的や、買い取る顧客に大きな違いがあり、業種としては全く違う業種となります。
ファクタリングはまだ不良化していない債権を買い取り、手数料を収入として得ます。債権回収会社は、不良化した債権を買い取り、回収業務を行います。回収できれば、回収できた分はすべて自社の収益です。
一般的な中小企業が利用するのはファクタリング会社です。自社の売掛債権を持ち込み、売掛債権を早期現金化する資金調達法に対応してくれるのがファクタリング会社です。
ファクタリングを利用するメリットは大きく、上手に活用することで資金繰りの助けとなりますので、債権回収会社との違いはもちろん、ファクタリングの仕組みや特徴をしっかりと理解して、上手に活用できるように準備しておきましょう。