ファクタリングを利用する企業は増加傾向にあり、ファクタリングに関する情報を得やすい社会になりつつあります。そんなファクタリングに関する情報で、気になるのがファクタリングによる節税効果という点です。
果たしてファクタリングに節税効果はあるのか、あるとすればどのように活用すべきかなど、ファクタリングと節税に関して詳しく解説していきます。
ファクタリングは節税対策にもなる?
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで、売掛金を早期現金化するという資金調達法です。このファクタリングに、節税効果があるかどうかという点を解説していきましょう。
結果的に節税対策になる
ファクタリング契約においては、必ず手数料の支払いが必要になります。ファクタリングを提供するファクタリング会社の収益は、この手数料の部分となりますので、手数料なしでファクタリングが利用できることはありません。
手数料を支払うファクタリング利用する企業の視点から見ると、自社の売上から差し引かれ、支払い義務がある金銭ということになります。つまり、ファクタリングを利用して、手数料を支払うという行為は、売上がその分減少するということを指します。ファクタリングを利用する企業にとっての手数料は、売上の損失ということです。
仮に100万円の売掛債権をファクタリングして、手数料として10万円支払ったとしましょう。10万円を支払ったことで、ファクタリングを利用した企業の売上は、100万円から90万円に下がったことになります。
企業法人に対する法人税は、その企業法人の利益に対して発生します。ファクタリングを利用し、手数料を支払うことで利益が減少することになりますので、その分節税になると考えられます。
売掛債権の売却益は非課税対象
ファクタリングは、手元にある売掛債権を売却して、売却益を得るという契約です。では、この売却益に対して税金は発生するのかというと、債権の売却益は非課税対象となりますので、税金が発生しません。
債権譲渡取引は非課税取引ですので、売却益も発生しませんし、手数料に対して消費税も発生しません。この点でも節税ができると考えることが可能です。
節税目的でのファクタリングがおすすめではない理由
ファクタリングの契約自体に節税の効果はありますが、節税を目的としたファクタリングはおすすめできるものではありません。その理由は、特に得るものがないからです。
例えば社用車を購入することで行う節税対策というものがあります。そのためには社用車を購入するための資金の支出が発生しますが、その代わりに社用車という現物が手元に残ります。
自社の設備投資費用にしても同様です。設備投資に資金を導入することで節税対策となります。資金の支払いは必要ですが、自社には設備が残ります。
こうした節税対策は、資金を支出する必要はあるものの、自社で使える何かが手元に残るため、有効な節税対策といえるでしょう。
ファクタリングで節税できるのは、手数料の部分です。ファクタリング契約において手数料を支払ったとしても、手元に何かが残るということはありません。単純に損失が増えるというだけです。
節税以外の目的でファクタリングを活用し、結果節税になるというのは自然な流れであり、おすすめの活用法とはいえますが、節税を目的にファクタリングを行うのはあまりおすすめできる方法ではありませんのでご注意ください。
ファクタリングは節税以外のメリットに注目
ファクタリングを利用するメリットは少なくありません。そのメリットの一つが節税ではありますが、節税というのはあくまでもついでについてくるメリットであり、メインで考えるべきメリットではありません。
では、節税以外のファクタリングを利用するメリットに関して解説していきましょう。
売掛金の早期現金化が可能
ファクタリングをする最大のメリットは、先に受け取る予定の売掛金を早期に現金化することができるという点です。企業経営をする中では、資金繰りが厳しくなる瞬間というものが避けられません。
ドル円相場の変動による原材料の仕入れ費用の高騰や、原油価格上昇による光熱費等の上昇、さらに異常気象ともいえる天候不順を理由とした原材料の高騰など、事前に予測できないような事態は常に発生する可能性があります。
こうした急遽現金が必要になった場合の対応策として資金調達があります。そんな資金調達法の中で、より審査に通りやすく、より現金化スピードが早いのがファクタリングです。
負債を増やさず資金調達ができる
ファクタリングの大きな特徴として、借り入れ契約ではないという点もメリットとして挙げられます。
企業の資金調達の方法には、さまざまな方法がありますが、その多くは資金を借り入れる契約です。金融機関等からの資金融資、ノンバンク等の商工ローンやビジネスローン、さらに手形割引や社債の発行もすべて借り入れ契約ですから、返済の義務が生じます。
また借り入れが増えれば、企業としての信用情報にも影響があります。信用情報が下がれば、取引先との関係にも影響がありますし、何より新たな借り入れが難しくなるという問題もあります。
仮に自社の業務を拡大したい、販路を拡大したいと考えた場合、ある程度の資金投入が避けられません。こうした場合には、金融機関等から融資を受けるのが一般的ですが、通常の資金繰り改善のためにすでに負債を持っている状態だと、なかなか融資を受けることはできないでしょう。
ファクタリングは債権譲渡契約であり、借り入れ契約ではありません。どれだけ利用しても企業としての信用情報に影響はなく、融資の審査等に影響を与えることもありません。
通常時に対応すべき資金繰りの改善などにはファクタリングで対応し、自社の経営を拡大するため等の大きな資金は融資を頼るというのが、おすすめの考え方です。この考え方ができるのは、ファクタリングを利用するメリットといえるでしょう。
売掛金の未回収リスクを回避できる
ファクタリングで売掛債権をファクタリング会社に譲渡すると、売掛金の未回収リスクも同時にファクタリング会社に譲渡する形になります。つまり利用した企業は、売掛金の未回収リスクを回避できるということです。
ファクタリングによって、売掛金の未回収リスクを回避するためには、ファクタリング契約がノンリコース契約である必要があります。ノンリコース契約とは、償還請求権のない契約という意味です。
償還請求権がある契約の場合、売掛金の未払いが発生した場合、その回収義務はファクタリングを利用した企業に残ったままとなります。万が一の場合は、売掛先に代わって売掛金を支払う義務が発生してしまいます。
過去には償還請求権がついているファクタリング契約を巡って、裁判に発展した例もあります。すでに出されている判例では、償還請求権が付いた債権譲渡契約は、ファクタリング契約ではなく、売掛債権を担保とした貸金契約であると判断されています。つまり、償還請求権がついたファクタリング契約は違法契約であるという判断です。
そのため、現在のファクタリング契約はノンリコース契約(償還請求権なしの契約)が当たり前となっています。ただし、一部悪徳業者などの場合、償還請求権付のファクタリング契約を迫ってくるケースがあるので注意が必要です。
契約書にサインする場合は、償還請求権がないことを必ず確認してから契約するようにしてください。
ファクタリング・節税のまとめ
ファクタリングを利用することで、手数料を支払う必要が発生し、この手数料の分売り上げが減少しますので、結果的に節税効果があるということになります。とはいえ、節税効果というのは、ファクタリングの主たる目的ではありません。ファクタリングは売掛金の早期現金化、負債ではない資金調達、そして売掛金の未回収リスク回避というのが本来の目的ですので、この点は間違えないようにしましょう。