「一人親方でもファクタリングって利用できる?」
「ファクタリングに申し込んだんだけど断られた」
従業員を雇わず、企業にも属さず、個人で業務を請け負って働く方を、建設業をはじめ一部の業界では一人親方と呼びます。この一人親方でも、手元に売掛債権があれば、ファクタリングの利用は可能です。
一人親方がファクタリングを利用する場合のポイントや注意点を紹介していきましょう。
一人親方とは?
一人親方とはそもそもどういった存在を指す言葉なのかを解説していきましょう。
建築業を中心に多数の一人親方がいる
一人親方とは、建設業界を中心に自身一人で、もしくは家族と自身のみで業務にあたる職人さんを指す言葉です。会社としての法人登記をせず、個人事業主として業務を請け負い生計を建てる方の総称であり、かつては建設業界でこのような働き方をする方を一人親方と呼んでいました。
近年では、建設業界に限らず、林業、職業ドライバー、漁業従事者、医薬品の配置販売業、廃棄物処理業、船員、柔道整復師などの職業においても、法人登記をせず、個人事業主として1人で業務にあたる方を一人親方と総称します。
労務管理という点では扱いが難しい面もある
一人親方として働く方は多数いますが、特に問題となっているのは労務管理の点です。労働者のための法律である労働基準法において、労働者とみなされるのは「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」(労働基準法第9条)とされています。しかし、一人親方は雇われていませんし、賃金を受け取っているわけではありません。一人親方が受け取るのは、完成品に対する報酬であり、賃金ではないためです。そうなると一人親方は労働者ではなくなり、労働者が受けるべき権利や、労働者を保護する法律の対象外となってしまいます。
こうしたリスクを持ちながら働くのが一人親方であり、当然ですが業務以外の営業や経理といった部門に関しても個人で対応する必要があります。
一人親方でもファクタリングの利用は可能
一人親方は、仕事に関するすべての業務を自身一人(もしくは家族)で対応しなければいけません。まさに個人事業主であり、やるべき仕事をみれば、企業経営者と同様の業務を行う必要があります。
そんな業務の一つが資金調達です。一人親方と呼ばれる方が多い建設業では、資金調達が重要視されます。請負契約が中心の建設業においては、商品の納品(建造物の完成)が完了しないと報酬が支払われません。
一人親方の場合、建設業務と言っても、その一部を担うのが一般的です。とはいえ一人親方の業務が完了すればすぐに報酬が支払われるというものでもありません。もちろん契約内容次第ではありますが、一人親方はそもそも下請け業者や孫請け業者から業務を依頼されるケースが多くなります。こうした下請け業者や孫請け業者も、自身の業務が終わったからと言って、報酬がすぐに受け取れるものではありません。
基本は建造物がすべて完成してから、元請け業者が下請け業者に報酬を支払い、さらにその後孫請け業者に報酬が支払われるのが一般的です。近年では下請法が整備され、このシステムも変更されているようですが、現場単位ではまだ報酬が支払われるまで長い時間がかかるというケースもあるようです。
業務完了から報酬支払いまでの期間が長い場合、問題となるのはその期間の生活費や業務のための支出です。この空白を埋める事ができるのが、ファクタリングという資金調達法です。
個人事業主対応のファクタリング会社に申し込む
一人親方の場合、原則としては個人事業主となりますので、ファクタリング会社の中でも、個人事業主に対応しているファクタリング会社の利用が推奨されます。
一般的なファクタリング会社は、企業法人を顧客としているため、個人事業主やフリーランスの申し込みを受け付けていません。こうしたファクタリング会社が、個人事業主を対象外とする理由の1つとして、債権譲渡登記ができないからという理由が考えられます。
一般的な2社間ファクタリングでは、債権譲渡登記を義務付けているケースが目立ちます。売掛債権がいつ誰から誰に譲渡されたかを、法務局に登記することで、債権の二重登記を防ぐために登記を行います。
しかし、登記は法人しかできません。債権譲渡登記には、両社の法人情報が必須であり、法人登記を行っていない一人親方などの個人事業主では、債権譲渡登記ができないということになります。
この債権譲渡登記なしでファクタリングを受け付けてくれるのが、個人事業主向けのファクタリング会社となります。
一人親方がファクタリングを利用する際の注意点
一人親方でもファクタリングの利用は可能です。では、一人親方がファクタリングを利用する際の注意点に関して解説していきましょう。
相見積もりを活用する
一人親方がファクタリングを利用する場合、個人事業主対応のファクタリング会社を探す必要があります。この時2~3社程度のファクタリング会社を見つけておきましょう。多くの場合ファクタリング会社は、申し込みから審査、さらに契約条件の提示まで無料で対応してくれます。これを利用し、複数社に1つの債権で申し込みを行い、複数社から契約条件を提示してもらうのがおすすめです。
いわゆる相見積もりの形となり、その中からもっとも契約条件のいいファクタリング会社と契約をするようにしましょう。
手数料をチェックする
一人親方に特に相見積もりをおすすめする理由は、手数料を確認するためです。というのも、一人親方が申し込む売掛債権の場合、手数料が比較的高額になる傾向があるからです。
ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社ごとに独自の基準で設定されます。ファクタリング全体の傾向として、ファクタリング対象金額が安いほど、手数料は高くなる傾向にあります。ファクタリングにおける手数料は、ファクタリング会社にとっての収益に当たる部分であり、ファクタリング対象金額に対して%で決定します。
高額債権であれば、低い手数料でも収益が確保できますが、少額債権の場合、ある程度高い手数料設定にしないと、収益が確保できないためです。
もうひとつの理由が、上でも触れた債権譲渡登記に関してです。上記の通り、一人親方は債権譲渡登記ができません。その分ファクタリング会社としてはリスクの高い契約となりますので、高まったリスクの分だけ、手数料も高くなってしまいます。
一人親方のような個人事業主の場合、手数料が特に大きなポイントとなりますので、相見積もりをとって、しっかりと手数料をチェックしましょう。
手数料以外にチェックすべきポイント
ファクタリングの契約条件は手数料だけではありません。掛け目や償還請求権など、手数料以外にもチェックすべき項目は多数あります。
中でも確実にチェックしたいのが、償還請求権についてです。償還請求権とは、売掛金が万が一支払われなかった場合、一度譲渡した売掛債権を、一人親方が買い戻さなければいけないという契約です。
償還請求権付のファクタリング契約に関しては、すでに過去の判例で、ファクタリング契約ではなく、売掛債権を担保とした融資契約であると判断されています。つまり、償還請求権付のファクタリング契約は違法契約となりますので、この点は十分にチェックしましょう。
売掛金入金日の資金繰りを考えておく
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで、売掛金を入金期日前に受け取る契約です。言い方を変えれば、売掛金の前払いシステムとも考えられます。
そのため、利用した時点では現金が手に入りますが、売掛金入金日には、手に入るはずの売掛金が手に入らないということになります。
ファクタリングを利用する場合は、売掛金の入金予定日周辺に、資金繰りに困ることがないように、事前にしっかりと計画を立てて利用するのがおすすめです。
ファクタリング・一人親方のまとめ
従業員を雇わず、法人登記もせずに、個人として業務を請け負う一人親方でも、ファクタリングの利用は可能です。一人親方がファクタリングを利用する場合は、個人事業主に対応しているファクタリング会社を探して契約するようにしましょう。
一人親方のような個人事業主の場合、手数料が比較的高く設定されるケースが多いので、少しでも手数料の支払いを抑えるためにも、できるだけ手数料の安いファクタリング会社と契約するのがおすすめです。そのためには相見積もりが効果的ですので、時間に余裕がある場合は、しっかりと相見積もりを取るようにしましょう。