「ファクタリングの最低金額ってどのくらい?」
「少額すぎるとファクタリングって利用できない?」
ファクタリングは売掛債権を譲渡し、売掛金を早期現金化する資金調達法です。売掛債権にもさまざまな種類があり、額面金額もいろいろです。利用する企業としては、自社に必要な分だけの現金を手にできればいいということもあり、最低金額は気になるところです。
この記事では、ファクタリングで利用できる最低金額や、ファクタリング会社ごとの違い、また少額債権をファクタリングする際の注意点に関して解説していきます。
一般的なファクタリングの最低金額は20万円程度
ファクタリング会社はそれぞれ自社が取り扱う売掛債権に関して、下限金額と上限金額を設定しています。この下限金額がいわゆるファクタリングを利用する最低金額として考えられます。
最低金額の設定はファクタリング会社次第ですので、一概にいえませんが、一般的な法人対応のファクタリング会社の場合、20万円程度が最低金額の基準となるかと思います。
20万円程度が最低金額になる理由
一般的なファクタリングの最低金額が20万円程度になるのは理由があります。それが、ファクタリングに必要な経費、掛け目という制度と手数料です。
掛け目とは、売掛債権の額面金額に対して何%をファクタリングの対象とするかを決める数値となります。ファクタリングは売掛債権の額面金額全額が対象となるというケースもありますが、多くの場合掛け目が設定され、売掛金の一部がファクタリング対象となります。掛け目の相場は70~95%程度と言われており、持ち込んだ債権や売掛先、申し込み企業の状況によって変化します。
最低金額とされる20万円の売掛債権で、掛け目が70%であった場合、ファクタリングの対象となるのは14万円ということになります。この14万円に対して手数料がかかりますが、2社間ファクタリングの場合手数料相場は10~30%程度です。仮に30%の手数料がかかる場合、早期現金化できるのは9万8000円となります。
さらに諸経費です。ファクタリングの諸経費で大きいのが、債権譲渡登記費用です。債権譲渡登記とは、売掛債権が譲渡された記録を、法務局に登記することであり、2社間ファクタリングでは多くの場合登記が必要とされます。この登記を行うのは司法書士であり、この司法書士に支払う報酬や、登記に必要な実費は申し込み企業負担となります。
債権譲渡登記費用の相場は5~8万円程度です。仮に8万円必要な場合、20万円の売掛債権でも、手にできる現金が1万8000円程度となってしまいます。
上記の例では、もっとも条件が悪いという前提で計算しましたが、ファクタリングを1件利用するだけで、ある程度の費用が必要となるのは間違いありません。こうした費用を計算すると、最低金額が20万円以上でないと、ファクタリングをしても現金が手に入らない、もしくは少額しか手に入らないという計算になります。
これが、ファクタリングの最低金額が20万円と言われている大きな理由となります。
ファクタリングは最低金額に近いほど手数料が高くなる
ファクタリングの最低金額は20万円というのが一般的です。さらにこの最低金額に近いほど、手数料は高くなる傾向にあります。それは、ファクタリング会社が利益を確保するために仕方ない設定であり、少額の債権ほど契約条件は厳しくなると考えていいでしょう。
1件の契約に関する費用は額面金額に影響されない
ファクタリングが少額になるほど手数料が高くなる理由は、ファクタリング契約にかかる経費に関係しています。ファクタリングで必要な経費は、担当者の人件費や、書類作成にかかる費用です。
こうした経費に関しては、持ち込まれた売掛債権の額面金額に関係なく一律で必要になる経費と言えます。仮に1件の案件に必要な経費が5万円で、1件あたり最低3万円の利益をファクタリング会社が考えている場合、この経費と利益を合わせた8万円分は、手数料で補う必要があります。
ファクタリングの対象金額が500万円などある程度の高額の場合、手数料を低く設定しても十分利益は確保できます。しかし、最低金額に近づくほど、手数料を高くしないと利益が確保できない状況になります。
上の項で20万円の売掛債権に対し、掛け目70%、手数料30%で計算しましたが、それでも確保できる利益(手数料)は、4万2000円にしかなりません。この計算からも分かる通り、原則として、ファクタリングは、対象金額が低いほど手数料の設定は高くなります。
少額ファクタリング専門の会社もある
ファクタリングの最低金額は20万円程度と書きましたが、これはあくまでも法人を対象としたファクタリング会社のケースです。ファクタリング会社の中には、個人事業主やフリーランスを対象としているファクタリング会社があり、こうしたファクタリング会社では、最低金額はかなり低く設定されています。
その理由は、顧客が個人事業主やフリーランスのため、そもそも高額債権が少ないことや、債権譲渡登記ができないからです。債権譲渡登記には、法人情報が必要です。法人登録をしていない、個人事業主やフリーランスは、債権譲渡登記の条件を満たさないため、そもそも登記ができず、登記費用は不要となります。
債権譲渡登記なしであれば、最低金額はより低くできるというわけです。
最低金額の設定がないケースも
個人事業主やフリーランスを対象としているファクタリング会社の中には、最低金額の設定をしていないファクタリング会社もあります。もちろん、利益が出なければファクタリングを受け付ける意味がありませんので、極端な少額は対象外ですが、1万円などの債権でもファクタリング対象としている会社がありますので、少額債権でのファクタリングを考えている方は、利用を検討してみましょう。
少額ファクタリングを利用する場合の注意点
少額でもファクタリングに対応してくれるファクタリング会社は存在します。多くの場合は債権譲渡登記不要での対応となりますので、その点はまずチェックしておきましょう。それ以外にもチェックすべきポイントがありますので、その点を解説していきます。
手数料に注意
まずは手数料に関してです。上記の通り、ファクタリングの手数料は少額債権ほど高く設定される傾向にあります。利用する方にとって手数料とは、損失でしかありませんので、少額に対応しているだけではなく、手数料に関してもしっかりチェックして利用するのがおすすめです。
給与ファクタリングは違法
特に個人の方向けに、給与ファクタリングを謳っているファクタリング会社がありますが、こうしたファクタリング会社はほぼ悪質業者ですので、近づかないようにしましょう。
かつては、個人に対する給与を、給与債権とみなした給与ファクタリングという方法がありました。しかし、すでに裁判所でいくつも判決が出ており、給与ファクタリングはファクタリング契約ではなく、貸金契約であるとされています。
貸金契約である以上、契約できるのは貸金業者のみです。また、利息制限法という法律に従い、金利上限も定められています。しかし、ネット上で見受けられる給与ファクタリングの手数料(実質金利)は、利息制限法を大幅に超えるものばかりですので、まず利息制限法違反となります。さらに、利息制限法違反で貸し出す業者の多くは、貸金業登録をしていない闇金業者ですので、そもそも契約すること自体が違法ともなります。
参考までに給与ファクタリングの利息に関してですが、利息制限法では10~100万円未満の貸し付けに対しては年利18%が上限とされています。注目すべきはこれが年利であるという点です。
年利とは年間で発生する金利ですので、給与に対して1年間で18%が上限となります。仮に借入期間が30日間の場合、発生する利息は約1.48%ですので、給与ファクタリングで30日間の契約の場合、この数字よりも低い手数料でなければいけません。1.5%を超える手数料の業者はすべて違法業者ですので覚えておきましょう。
悪徳業者に注意
給与ファクタリングを提供するのは概ね悪徳業者ですが、それ以外にも悪徳業者は存在します。貸金業者とは違い、会社設立に資格の取得も許認可申請も不要なファクタリング会社は、悪徳業者も開業しやすい業種であり、一定数の悪徳業者が存在するといわれています。
こうした悪徳業者は、耳心地の良い文言で顧客を集める傾向にあり、一般的なファクタリング会社では取り扱いが難しい債権を取り扱うと謳っているケースが目立ちます。そのため最低金額なども設定せずに、審査通過率100%などと喧伝するケースもあります。
悪徳業者と関係を持つと、業務上の嫌がらせを受けたり、会社の情報を同じ悪徳業者間で売買されるなど、後々にも大きな影響が出ますので、決して近づかないようにしましょう。
ファクタリング・最低金額のまとめ
ファクタリングにおける最低金額は20万円程度と言われています。これはファクタリング会社の利益を計算すると致し方ない部分もあり、少額の売掛債権ではファクタリングは難しいということになります。
少額の売掛債権をファクタリングしたい場合は、少額債権を専門に取り扱う、個人事業主やフリーランスを主な顧客としているファクタリング会社の利用を検討しましょう。