「ファクタリングの事前契約確認って重要?」
「手数料だけチェックすればいいんでしょ?」
ファクタリングは債権譲渡契約であり、契約を結ぶ以上、事前契約確認が重要になります。ファクタリングに関しては、手数料が非常に重要な項目となるため、つい手数料だけ確認して契約してしまうという方もいらっしゃるようですが、大きな金額に関わる契約ですので、細かな部分まで事前契約確認を行うことが重要です。
ここでは、事前契約確認で、特に注目すべきポイントに関して解説していきます。
ファクタリングでは事前契約確認が重要
ファクタリング契約では、事前に行われる審査の結果、契約条件が決定します。その契約条件に納得したうえで契約をする形となりますが、そこで重要になるのが事前契約確認です。
ファクタリングは債権譲渡契約であり、契約書にサインをしてしまえば、民法上契約の効力が発生します。万が一自社に不利な条件が盛り込まれている契約でも、契約書にサインをしてしまうと、その後変更は難しくなります。
ファクタリングを利用する状況においては、少しでも早く現金が必要であるという状況もあるかと思いますが、そんな急ぎの状況でも、必ず事前契約確認を行い、疑問点や不明点がない状態でサインするようにしましょう。
事前契約確認でチェックすべきポイント
事前契約確認では、契約書の隅々までチェックするのが基本です。しかし、その中でも特に注目すべきポイントに関して、ここでいくつか紹介していきます。時間がない状態でも、ここで紹介する内容に関しては、きちんと確認をしてからサインするようにしてください。
手数料・掛け目
ファクタリング条件において、もっとも重要になるのが手数料の部分です。手数料とは、ファクタリング対象金額に対して%で設定されます。この手数料はファクタリング会社から受け取るファクタリング対象金額から差し引かれる金額です。ファクタリングを利用する企業にとっては、売掛金から差し引かれる損失に当たる部分となりますので、手数料に関してはきちんとチェックする必要があります。
一般的なファクタリング契約には、手数料相場があります。2社間ファクタリングで10~30%程度、3社間ファクタリングで1~9%が相場と言われていますので、まずは相場に収まる手数料になっているかどうかに注目です。
手数料はファクタリング対象金額に対して設定されていますので、掛け目の設定も重要です。掛け目とは、売掛債権の額面金額の何%をファクタリング対象金額とするかを定める数値であり、この掛け目次第で手数料の金額が決定します。
仮に額面金額500万円の売掛債権に対し、掛け目85%、手数料10%の場合を計算してみましょう。掛け目が85%ですから、ファクタリングの対象となる金額は425万円です。手数料は500万円ではなく、この425万円に対して計算しますので、42万5000円となります。
掛け目にもおおよそながら相場はあり、70~95%で設定されることが多いと言われています。
ファクタリングの事前契約チェックでは、何よりこの手数料と掛け目の数値、さらにその計算が合っているかどうかという金額面をチェックしましょう。
債権譲渡通知の有無
続いて特に2社間ファクタリングを利用する場合にチェックすべき項目を紹介します。2社間ファクタリングは、売掛先にファクタリングの利用を知られることなく利用できるのがメリットです。そのメリットを享受するためには、債権譲渡通知がない契約であることが条件となります。
債権譲渡通知とは、契約後ファクタリング会社から売掛先に対し、売掛債権が譲渡されたことを通知するという契約です。当然譲渡通知のある契約では、売掛先に知られることなく利用できるという2社間ファクタリングのメリットがなくなってしまいます。
必ず事前契約確認で、債権譲渡通知がないことを確認しておきましょう。
ちなみの3社間ファクタリングの場合、売掛先にもファクタリング契約に参加してもらう必要があるため、債権譲渡通知は必須となります。
債権譲渡登記の有無
債権譲渡登記とは、売掛債権の所有権が、いつ誰から誰へ譲渡されたという事実を、法務局に登記するという契約です。こちらも主に2社間ファクタリングに関する契約内容であり、事前契約確認のチェック項目となります。
債権譲渡登記は、基本的に債権の二重譲渡を防ぐために行われます。譲渡登記をしたからといって、申し込み企業に大きなリスクはありませんが、2つ気にすべきポイントがあります。
1つは、登記された情報は、申請すれば誰でも閲覧可能であるという点です。つまり、売掛先企業が閲覧すれば、売掛先にファクタリングの利用が知られてしまう可能性があるということになります。ただしこのリスクに関しては、そこまで大きなものでもありません。よほどの理由がない限り、売掛先が登記情報を閲覧する可能性はありませんので、そこまで気にすることはないでしょう。
もう1点のリスクは、債権譲渡登記費用は申し込み企業の負担となるという点です。一般的に債権譲渡登記は、司法書士に依頼して行われます。この司法書士に支払う報酬や、登記にかかる実費に関しては、申し込み企業負担となるのが一般的です。
登記費用は5~8万円程度必要になりますので、この点も事前契約確認でしっかりチェックしておきましょう。
償還請求権の有無
償還請求権とは、万が一売掛先が売掛金を支払わなかった場合、一度ファクタリング会社に譲渡した売掛債権を、申し込み企業が買い戻さなければいけないという契約です。簡単に言ってしまえば、売掛金が支払われなかった場合に、申し込み企業が売掛金を保証する契約といえます。
ファクタリングの契約は、ノンリコース契約、つまり償還請求権のない契約が原則です。かつては、償還請求権付のファクタリング契約も存在しましたが、過去の判例においてこれは違法行為であると判断されています。
償還請求権付の契約は、ファクタリング契約(債権譲渡契約)ではなく、売掛債権を担保とした貸金契約であると法が判断していますので、現状償還請求権付のファクタリング契約は違法契約となっています。
事前契約確認において、償還請求権が設定されていない、ノンリコース契約であることを確認しておきましょう。
債権譲渡登記の留保に関して
特に即日現金化を望む場合に注目したいポイントが、債権譲渡登記の留保に関してです。一般的なファクタリング契約では、契約が締結され、債権譲渡登記の手続きが完了した後に、ファクタリング対象金額が入金される流れとなります。
しかし、ファクタリング契約のタイミングが午後など遅い時間になった場合、その日のうちに債権譲渡登記が間に合わない可能性があります。登記ができないと入金できないという契約では、即日現金化ができないという事になってしまいます。
譲渡登記の留保とは、譲渡登記はするものの、登記完了を待たずに入金を行うという契約です。この留保が契約に含まれていれば、即日現金化や早期現金化が可能となりますので、しっかり事前契約確認でチェックしましょう。
担保の有無
ファクタリングは債権譲渡契約であり、貸金契約ではありません。売掛債権を譲渡した対価として、現金を受け取る契約ですので、返済という考え方はありません。返済がない以上担保の設定は当然不要ですので、担保設定がないかどうかも事前契約確認でチェックすべきポイントです。
担保設定がついている契約は、ファクタリング契約ではなく、貸金契約となっている可能性があります。担保契約も含め、間違いなく債権譲渡契約となっているかどうか、貸金契約となっていないかどうかという点を事前契約確認でチェックしましょう。
ファクタリング・事前契約・手数料のまとめ
ファクタリング契約においては、どうしても手数料に目が行きがちです。もちろん、ファクタリング契約においてもっとも重視すべきは手数料の設定ですが、実際に契約となると、その他にも事前契約確認でチェックすべきポイントは多数存在します。
上では触れませんでしたが、このほかにも契約違反に関する項目や解約に関する項目も把握しておく必要があり、手数料だけ確認すればいいというものではありません。
ファクタリング契約は、大きな金額に関わる契約となります。必ず事前契約確認を行い、契約内容に疑問点や不明点がない状態で契約書を交わすようにしてください。