「ファクタリングって分割払いできないの?」
「売掛金を分割払いできれば利用しやすいんだけど」
ファクタリングは売掛債権を利用した資金調達法です。その大きな特徴としては、貸金契約ではないという点があります。借り入れではないので自社の信用情報に傷はつきませんし、債務超過の状況でも利用することが可能です。
貸金契約ではありませんので、「返済」ということは発生しません。ただし、契約方法によっては、最終的にファクタリング会社に現金を送金する場合があります。この送金に関して分割払いができるかどうかは、非常に気になるところでしょう。
ファクタリングにおいて、分割払いを選択できるのかという点に関して解説していきます。
ファクタリングの流れ
ファクタリングは手元にある売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を入金期日前に現金化する資金調達法です。ファクタリングの契約方法にはさまざまな形がありますが、その中でももっともポピュラーな契約方法が2社間ファクタリングでしょう。
2社間ファクタリングは、申し込み企業とファクタリング会社の2社間で結ばれる契約で、現金化のスピードや、取引先にファクタリングの利用を知られないというメリットがあります。
まずは2社間ファクタリング利用の流れを確認しておきましょう。
手元の債権をファクタリング会社に持ち込む
手元にある売掛債権を、ファクタリング会社の窓口に持ち込みます。近年では、申し込みから契約までオンライン上で完結できるオンラインファクタリングも増えていますので、申し込みしやすい方法で申し込みましょう。
審査を受け契約条件に同意したら契約する
申し込みを行うと、ファクタリング契約の前には必ず審査が行われます。この審査の結果、手数料等の契約条件が決定します。決定した契約条件を確認し、内容に問題がなければ契約です。
2社間ファクタリングの場合、契約が結ばれれば、ファクタリング会社から現金が入金されます。一般的なファクタリング契約では、申し込みから2~3日程度、最短では申し込み即日の現金化も可能です。
売掛金が入金されたら売掛金を送金する
売掛金の入金日までに、取引先から売掛金が入金されます。ファクタリング契約で売掛債権の所有権はファクタリング会社に移りますが、売掛債権の契約内容は変更されません。そのため、売掛金は一旦申し込み企業の口座に振り込まれます。振り込まれた売掛金を、ファクタリング会社に送金して、ファクタリング契約は完了となります。
売掛金の分割送金はできない
上のファクタリングの流れの中で、最後の部分である売掛金の送金に関して、分割払いはできません。必ず一括で全額を送金する必要があります。分割送金ができない理由に関して解説していきます。
分割送金ができない理由
ファクタリングは、上の流れを見てもわかる通り、債権譲渡契約であり、貸金契約ではありません。債権譲渡契約だからこそ、申し込み企業は自社の信用情報に影響を与えずに資金調達が可能となりますし、最悪債務超過の状態でも利用可能な資金調達法と言われています。
2社間ファクタリングでは、上記の通り、売掛債権の契約内容は変更されません。そのため、形としては、債権の所有権を持つファクタリング会社に代わって、取引先から売掛金を回収する業務を申し込み企業が行う形となります。売掛金の回収を代行することから、2社間ファクタリングの契約では、債権譲渡契約と同時に、業務委託契約も結ぶのが一般的です。
つまり、取引先から入金された売掛金は、すでにファクタリング会社が受け取るべき金銭ということになり、この金銭に関しては申し込み企業に所有権はありません。そんな売掛金を分割で送金するということは、ファクタリング会社から一定期間金銭を借り入れる形となってしまいます。
ファクタリングは原則貸金契約ではありませんので、売掛金の送金の分割払いはできないということになります。
分割送金可のファクタリングは違法契約の可能性大
売掛金の分割送金は、ファクタリング契約では不可能です。その理由は上でも述べたとおりですが、それでも分割払いをしようとすれば、それは違法行為に当たる可能性があります。
上記の通り、ファクタリング契約を交わした以上、売掛金は申し込み企業の金銭ではなく、ファクタリング会社の金銭です。売掛金回収の業務委託契約をしている以上、回収した金銭を一定期間とはいえ送金しないということは、業務上横領などの罪に問われる可能性があります。
また、そもそもファクタリング契約時に、分割送金OKという条件が付いている場合もあります。この場合、その契約自体がファクタリング契約ではないと見做される可能性が高くなります。
売掛金の分割送金が可能ということは、一定期間ファクタリング会社から金銭を借り入れる形となり、契約上は貸金契約にする必要があります。貸金契約を結べるのは、貸金業者として登録をしている業者のみです。契約するファクタリング会社が貸金業者登録をしており、かつ貸金契約として契約を結んでいれば、合法な契約となりますが、そうではない場合は貸金業法違反となり、ファクタリング会社が罪に問われます。
さらにいえば、ファクタリングの特徴となる貸金契約ではないという点にも抵触することになるでしょう。貸金契約である以上、債務超過の企業は利用できないという事になってしまいます。
ファクタリングで送金ができない場合は?
ファクタリングを利用したものの、売掛金の入金日前後に資金繰りが厳しくなってしまい、売掛金の送金が難しくなってしまった場合はどうすればいいのでしょうか?
まずは何よりファクタリング会社に送金が難しい旨を伝える必要があります。とはいえ、ファクタリング会社が貸金業者登録をしていない場合は、相談をしたとしても、有効な解決が見つからないと思われるかもしれません。ファクタリング会社によっては、貸金業者を紹介してくれるなどの対策があるかもしれません。まずは何より正直に相談するのが重要です。
もっとも良くないのは、無断で送金を遅らせることです。無断で送金をしない場合、ファクタリング会社から詐欺罪や業務上横領罪で訴えられ、違法行為として罰せられる可能性が高くなります。
正直に自社の現状を報告し、送金に関して相談することをおすすめします。
どうしても分割払いでしか対応できない場合は?
売掛金入金日の資金繰りの調整がつかず、どうしても売掛金の分割送金を希望するという場合は、ファクタリングの利用はおすすめできません。資金調達には、他の方法を検討しましょう。
返済が分割になるという点では、資金融資を利用するのが妥当と言えます。資金融資と聞くと、銀行からの融資を想像されるかもしれません。銀行融資は審査が厳しく、簡単に借り入れることはできません。しかし、借り入れによる資金調達法は銀行融資だけではありません。
銀行やノンバンクが提供する商工ローンやビジネスローンの方が審査に通りやすい傾向にあります。また、手元に手形があれば、手形割引を利用するという方法もあります。資金調達法にはさまざまな方法がありますので、自社の状況に合わせて上手に使い分けをしましょう。
債権・分割・ファクタリングのまとめ
ファクタリングは債権譲渡契約であり、貸金契約ではありません。そのためファクタリング会社の中には、貸金業者登録をしていない会社も少なくありません。
2社間ファクタリングの場合、一旦振り込まれた売掛金を、最終的にファクタリング会社に送金する必要があり、この送金に関しては分割払いは選択できません。分割払いにするということは、送金すべき売掛金の一部をファクタリング会社から借り入れる形となり、結果的に貸金契約となるからです。この点からも重要になるのが、売掛金入金日周辺の資金繰りが厳しくならないように事前に調整するという点です。
ファクタリングは、言い方を替えれば売掛金の前払いシステムです。利用する場合は、売掛金入金日周辺も含め、長期的な資金繰りをイメージして利用するようにしましょう。ファクタリングを利用した結果、売掛金入金日に資金繰りが悪化してしまうことがないように考えて利用するのがおすすめです。