「遅延債権でファクタリングって申し込めるの?」
「ファクタリングした債権が遅延債権になったらどうなるの?」
売掛金が入金期日までに入金されない債権を遅延債権と呼びます。この遅延債権でファクタリングは利用できるのでしょうか?また、ファクタリング契約した債権が、後に遅延債権となってしまった場合、申し込み企業としてはどのように対応すべきかなど、遅延債権に関しては多くの疑問があるかと思います。こうした疑問に対して回答していきましょう。
遅延債権とは?
遅延債権とは、売掛金の支払いが遅れている債権であり、一般的には滞留債権とも呼ばれます。売掛債権では、売掛金の入金期日が定められており、この入金期日までに売掛金が支払われなかった場合、遅延債権として扱われます。
企業として、持っている売掛債権が遅延債権となるのは、経営の上でも非常に厳しい状況です。もちろん遅延債権が発生しないことがベストですが、遅延するかどうかは取引先企業次第であり、自社では対応が難しいという点が挙げられます。
企業としてできるのは、取引に関する与信調査をこまめに行うことですが、それでも取引自体は簡単に停止できるものではありません。企業としては対応が難しいのが遅延債権といえるでしょう。
遅延債権と似た言葉に、不良債権というものがあります。この2つの違いにはどのようなものがあるのかを解説していきましょう。
遅延債権とは、売掛金の支払いこそ遅れているものの、今後支払われる可能性がある債権となります。支払いが遅れているものの、取引先企業は存在しており、売掛金を支払う意思がある債権が遅延債権です。
一方不良債権とは、今後支払われる可能性がない債権を指します。取引先が倒産しているなど、今後支払われない債権が不良債権です。
遅延債権と不良債権では、発生した際の対処法も違いますが、不良債権に関しては全額回収はかなり難しいということになります。
遅延債権ではファクタリングは利用できない
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を早期現金化する資金調達法です。つまり、売掛金が入金されることを前提として契約をするものであり、申し込みの時点で遅延債権となっている債権では、申し込むことができません。
ファクタリング会社は、契約前に必ず売掛債権に関する審査を行います。この審査では、売掛金が入金期日までに支払われるかどうかが最重要視されます。遅延債権は、いつ売掛金が支払われるかわからない債権ですから、当然審査に通ることはありません。
審査に通らないと分かっている以上、そもそも申し込みを受け付けることはありません。
ファクタリングした債権が遅延債権となった場合は?
では、ファクタリングを申し込んだ債権が、遅延債権となってしまった場合はどうなるかを解説していきましょう。
原則として申し込み企業に保証義務はない
ファクタリングを利用し、早期現金化した売掛債権が遅延債権となってしまった場合、その売掛金はどうなるかは気になるポイントです。結論からいうと、ファクタリング申し込み後遅延債権となった売掛金に関しては、申し込み企業に保証義務はありません。また、回収義務もありません。
ファクタリングは、売掛金入金前に売掛債権をファクタリング会社に譲渡する契約です。売掛債権を譲渡すると同時に、売掛金の未回収リスクもファクタリング会社に移行する形になります。そのため、売掛金が支払われなかったとしても、そのリスクを負うのはファクタリング会社であり、未回収の売掛金を回収する義務も、ファクタリング会社にあるということになります。
申し込み企業は事前に受け取った売掛金を返済する義務も、売掛金を回収する義務もありません。
リコース契約に注意
ファクタリング契約の中には、リコース契約と呼ばれる契約があります。これは、償還請求権が付随された契約であり、リコース契約の場合、売掛金の未回収リスクは、申し込み企業に残ります。
償還請求権とは、売掛金が支払われなかった場合、申し込み企業が売掛債権を買い戻さなければいけないという権利となります。つまり、売掛金が支払われなかった場合、申し込み企業が取引先に代わって売掛金を支払わなければいけないということです。
ただし、この償還請求権付のリコース契約に関しては、過去の判例でファクタリング契約ではないと判断されています。償還請求権付の契約はファクタリング契約(債権譲渡契約)ではなく、売掛債権を担保とした貸金契約であるというのが法の判断です。
法律に則ったファクタリング契約は、ノンリコース契約(償還請求権のつかない契約)が原則となりますので、ファクタリング契約を結ぶ際には、償還請求権の有無についてきちんと確認してから契約するようにしましょう。
債権ではなく送金に遅延が発生すると?
ファクタリングで遅延が発生するタイミングとしては、売掛金の入金タイミング以外に、入金された売掛金の送金が遅延するというケースがあります。
ファクタリングにはさまざまな契約方法がありますが、債権買取式の2社間ファクタリングにおいては、売掛金の送金が必要になります。2社間ファクタリングの大まかな流れを確認しておきましょう。
申し込み企業はまず売掛債権をファクタリング会社に持ち込みます。ファクタリング会社はこの売掛債権に関して審査を行い、契約条件を決定します。決定した契約条件に問題がなければ契約し、契約と同時に売掛金から手数料等が差し引かれた金額が入金されます。
後日、取引先から売掛金が申し込み企業の口座に入金されます。ファクタリング契約では、売掛債権の所有権が譲渡されますが、売掛債権の契約内容は変更されません。つまり、取引先からの売掛金の入金先は、申し込み企業の口座のまま変わらないということです。
申し込み企業は、取引先から売掛金が入金されたら速やかにファクタリング会社に送金しなければいけません。この送金に遅延が発生する可能性が考えられます。
最悪違法行為で裁かれる可能性がある
2社間ファクタリングにおいて、契約の最後に必要になる売掛金の送金に遅延が発生した場合、最悪違法行為として裁かれる可能性があります。
2社間ファクタリングの契約では、債権譲渡契約と同時に業務委託契約も結ぶのが一般的です。この業務委託というのは、ファクタリング会社に代わって、申し込み企業が売掛金の回収業務を請け負うという契約です。上記の通りファクタリング契約を結んでも、売掛金の入金口座は変更されません。つまり、ファクタリング会社に代わって、申し込み企業が売掛金の回収業務を請け負うという形になるわけです。
ファクタリング会社から業務委託を受け、回収した売掛金を送金しないということは、契約違反であり、業務上横領や詐欺罪に該当するということとなり、違法行為となってしまいます。
受け取った売掛金は速やかにファクタリング会社に送金するのが原則です。万が一送金できない状況になってしまった場合は、できるだけ早くファクタリング会社に連絡し、その後の対応を検討するようにしましょう。
遅延債権・ファクタリングのまとめ
ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を早期現金化する資金調達法です。そのためすでに遅延債権となっている売掛債権では、申し込み自体ができません。
ファクタリングした売掛債権が遅延債権となってしまった場合、その後の売掛金回収などはファクタリング会社の義務となります。申し込み企業に売掛金回収義務はありません。こうした場合に申し込み企業に売掛金を保証させる契約は、リコース契約と呼ばれ、ファクタリング契約とはなりません。売掛債権を担保とした貸金契約となるため契約時に注意が必要です。ファクタリング契約を結ぶ際は、償還請求権がついていないことを確認してから契約するようにしましょう。