「債権譲渡登記ってなんでする必要があるの?」
「債権譲渡登記なしでもファクタリング契約ってできる?」
2社間ファクタリングの契約の中に、含まれることが多い条件が、債権譲渡登記です。そもそも債権譲渡登記とはどのような手続きなのか、何のために契約条件に含まれるのかという点に関して詳しく解説していきます。
また、法人が債権譲渡登記なしでファクタリング契約をする場合の注意点などにも触れていきましょう。
債権譲渡登記とは?
債権譲渡登記とは、債権の所有権が移行したことを法務局に登記することで、法的に譲渡の証拠を残すために行う行為です。
売掛債権は実際には目に見えないものです。仮に請求書がある場合でも、債権の譲渡が行われたかどうかが請求書を見て判断できるわけではありません。そのため起こり得るのが債権の二重譲渡です。
すでに他社に譲渡済みの債権をほかのファクタリング会社に持ち込み、ファクタリングを申し込んだ場合、何かしら第三者が確認できる証拠がなければ、すでに譲渡済みなのかどうかを判別できなくなります。
債権の二重譲渡が発覚した場合、誰に所有権があるのかという争いが発生してしまいます。こうした争いは、特に債権を譲り受けるファクタリング会社としては避けたい争いです。
そのためファクタリング会社は、ファクタリング契約の条件に債権譲渡登記を盛り込み、その売掛債権の所有権が自社にあることを法的に証明できるようにするわけです。
ファクタリングに債権譲渡登記は必要か?
ファクタリング契約に、債権譲渡登記は必要なのかという点を解説していきます。ファクタリング会社にとっては、債権譲渡登記は非常に重要なポイントです。しかし、申し込み法人にとってはあまり歓迎できない行為でもあります。
結論を言ってしまうと、債権譲渡登記なしでもファクタリングの契約は可能です。そもそも債権譲渡登記が契約に組み込まれないパターンを2つ紹介しましょう。
3社間ファクタリングの場合は不要
申し込み法人とファクタリング会社、さらに売掛先である取引先法人の3社によるファクタリング契約を3社間ファクタリングと呼びます。3社間ファクタリングの場合、申し込み法人とファクタリング会社で契約を行う前に、取引先法人に債権譲渡通知を送付します。取引先法人が、債権譲渡を承諾してくれれば、3社間ファクタリングの契約が可能です。
この債権譲渡通知と合わせて、売掛金の入金先口座も、申し込み法人の口座からファクタリング会社の口座に変更されます。そのため、売掛債権の二重譲渡の可能性はなくなり、債権譲渡登記も不要ということになります。
申込者が法人でなければ不要
申込者が法人ではなく、個人や個人事業主の場合、そもそも債権譲渡登記ができません。債権譲渡登記には、申し込み法人の登記事項証明書が必要です。個人事業主や個人の場合、法人としての登記事項証明書が存在しないわけですから、そもそも債権譲渡登記ができません。
ファクタリング会社によっては、個人や個人事業主の申し込みは受け付けていないというのは、債権譲渡登記ができないからという理由も含まれています。
債権譲渡登記を行う場合のポイント
債権譲渡登記つきのファクタリング契約では、どのような注意点があるのかを解説していきましょう。
登記費用は申し込み法人の負担
債権譲渡登記は、司法書士の独占業務です。多くの場合、司法書士に債権譲渡登記の業務を依頼し、登記してもらいます。この際、登記にかかる実費や司法書士に対する報酬に関しては、申し込み法人の負担となります。
必要な費用はケースによりさまざまですが、5万円前後となるのが一般的です。この費用も、売掛金から差し引かれますので、債権譲渡登記つきの契約をする方は、この費用の部分も考慮しておく必要があるでしょう。
また、ファクタリングに関する経理処理について一言書いておくと、ファクタリングの手数料は消費税非課税対象です。消費税を考慮する必要はありません。ただし、司法書士に支払う報酬の部分に関しては、消費税課税対象となりますので、経理処理上ミスがないように注意が必要です。
取引先に債権譲渡の事実を知られる可能性がある
法務局に登記した事実に関しては、原則第三者でも閲覧可能です。つまり、申し込み法人の取引先である取引先法人が、確認しようと思えばできるということになります。
2社間ファクタリングのメリットは、取引先法人に知られることなくファクタリングを利用できることですが、債権譲渡登記をすることで、わずかながらですが、取引先に知られてしまう可能性が生じます。
この点は理解しておくようにしましょう。
債権譲渡登記の留保ができないと即日現金化ができないケースも
債権譲渡登記は、上記のようにファクタリング会社から司法書士に業務を依頼し行います。ファクタリング会社の中には、司法書士による債権譲渡登記が完了後に入金を行うとしているケースがあります。
仮に申し込み即日に現金が欲しいという場合でも、債権譲渡登記がその日のうちに完了しない場合、入金が翌日以降となる可能性があるということです。
確実に即日現金化を望む場合は、債権譲渡登記の留保ができるかどうかを確認しましょう。留保とは、債権譲渡登記前に入金を行うという方法で、この留保が可能であれば即日現金化の可能性は一気に高くなります。
債権譲渡登記不要のファクタリングを利用する場合の注意点
上でも少し触れましたが、債権譲渡登記は必須条件ではありません。実際ファクタリング会社の中には、債権譲渡登記不要でファクタリング契約を行う会社もあります。
債権譲渡登記不要のファクタリング契約を結ぶ際に、注意すべき点を解説していきましょう。
契約条件が悪くなる可能性が高い
申込者が法人でありながら、債権譲渡登記を行わないということは、ファクタリング会社は債権の二重譲渡リスクを請け負っているということになります。つまり契約におけるリスクが高くなるということになり、必然的に審査には通りにくくなりますし、通ったとしても厳しい条件での契約となる可能性があります。
債権譲渡登記なしの契約は、ファクタリング会社にとってはリスクの高い契約であり、その分契約条件は厳しくなる可能性があることは認識しておきましょう。
悪質業者に捕まる可能性がある
ファクタリング会社の中には、悪質な業者も存在しています。こうした悪質業者は、申し込み法人にとって魅力的な文言やシステムで顧客を捕まえ、悪質な契約を結ぼうとします。債権譲渡登記なしの契約というのは、申し込み法人にとっては非常に有利な条件の契約であり魅力的です。そのため、悪質業者がこのような条件を掲げて顧客を見つけようとするケースが考えられます。
債権譲渡登記なしの契約に対応しているすべてのファクタリング会社が悪質業者というわけではありませんが、中には悪質な業者が紛れ込んでいる可能性がありますので、十分注意が必要です。
ファクタリング・法人・債権譲渡登記のまとめ
法人がファクタリング会社と2社間ファクタリングの契約を結ぶ場合、債権譲渡登記付きの契約となることがほとんどです、ファクタリング会社が債権の二重譲渡リスクを避けるための条件ですので、仕方のない部分もあります。
債権譲渡登記をすることで、取引先法人にファクタリングの利用が知られる可能性はありますが、その可能性はそこまで高くはありません。取引先法人が、法務局で閲覧を申請しない限り知られることはありませんので、そこまで神経質になる必要はないでしょう。
2社間ファクタリングを希望する以上、債権譲渡登記はついてくるものと考えて、契約することをおすすめします。