「人材派遣業にファクタリングがおすすめって本当?」
「どんな風にファクタリングを利用すべきか知りたい」
自社で確保した人材を、求めに応じて派遣することで利益を上げるのが人材派遣業です。商品を提供する企業ではなく、サービスを提供する企業であり、ファクタリングの利用も可能ということになります。
人材派遣業にファクタリングという資金調達法がおすすめとなる理由や、上手な利用方法に関して解説していきましょう。
人材派遣業にファクタリングがおすすめの理由
人材派遣業とは、人材を求める企業に対し人材を提供し、その対価として報酬を受け取る業種です。こうした人材派遣業の方には、ファクタリングの利用がおすすめとなります。その理由を紹介していきましょう。
売掛金の入金が遅い
人材派遣業の特徴として、人材を派遣してから、その報酬である売掛金の入金まで一定の期間があくことが挙げられます。自社のサービスや商品を提供してから、そのサービスや商品に対する対価が支払われるまでの期間を支払いサイトといいますが、人材派遣業はこの支払いサイトが長い業界となります。
そのため、実際にサービスを提供してから入金があるまでの期間を乗り越える資金調達の方法が重要であり、売掛金の現金化が早いファクタリングという資金調達法と、相性がいいといえます。
突発的な出費が多い
人材派遣業は、突発的な出費や、先払いが多い業種でもあります。上記の通り、支払いサイトが長い業界でありながら、派遣した人材に支払う賃金は、日払いや週払いにも対応する必要があります。また、派遣した人材が派遣先企業で問題を起こした場合、人材派遣会社がその問題を解決するための費用や、損害賠償金などを支払う必要が発生します。
ほかの業種と比較しても、突然の出費が多く、また人材に対して先払いする必要が多い業界だけに、常にある程度の予算を確保しておく必要があります。こうした資金の確保のために、ファクタリングの利用が推奨されています。
労働派遣法の改正により資金の確保が重要になった
人材派遣業は、労働派遣法という法律に基づき営業を行う必要があります。この労働派遣法が、2020年に改正・施行され、それまでは届出制だった営業が、許可制に変更されたのも、ファクタリングの利用をおすすめする理由の一つです。
改正労働派遣法により許可制となった人材派遣業は、以下の要件を満たしていないと営業許可が下りないことになっています。
基準資産額が2,000万円×事業所数以上
現預金が1,500万円×事業所数以上
基準資産額が負債総額の7分の1以上
仮に営業事務所数が1ヶ所であっても、2,000万円の基準資産額が必要であり、1,500万円の現金預金が必要です。またそのための借入金の総額も定められており、常にこの金額をキープしていかないといけません。
上でも紹介した通り、人材派遣業は突然の出費も多い業種です。何らかの事情で大きな金額の出費があった場合、上記の要件を満たすことができなくなり、結果営業許可が下りずに廃業という可能性が否定できません。
常に潤沢な資金を確保するためにも、ファクタリングを上手に活用するなどして、資金繰りを調整する必要があります。
人材派遣業が利用できるファクタリング
人材派遣業がファクタリングを利用する場合、人材を派遣したことで発生する売掛債権をファクタリング会社に譲渡する形が一般的です。売掛債権を譲渡する方法としては、主に2つの方法が考えられますので、それぞれ紹介していきましょう。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングとは、人材派遣企業とファクタリング会社の2社間で結ばれるファクタリング契約です。人材派遣企業は、手持ちの売掛債権をファクタリング会社に持ち込み、審査を受けます。審査の結果契約条件が提示されますので、その条件に問題がなければ契約し、契約をすると即現金が入手できます。その後売掛金の入金期日に派遣先から売掛金が入金されたら、その売掛金をファクタリング会社に送金して契約が完了します。
2社間ファクタリングのメリットは、派遣先に知られることなくファクタリングを利用できる点と、現金化が早い点です。ファクタリング自体は合法な資金調達法ですが、ファクタリングを利用していることを派遣先に知られると、「あの人材派遣会社は、ファクタリングを利用するほど資金繰りに困っている」という印象を与えかねません。どのような会社も、資金繰りに困っている企業とは取引をしたくないものです。ファクタリングの利用が、今後の取引に悪影響を及ぼす可能性が否定できません。こうした心配がないのが2社間ファクタリングのメリットです。現金化スピードに関しては、一般的なファクタリング契約で2~3日中、早ければ申し込み即日に現金化も可能となります。
一方デメリットは手数料相場が高めに設定される点でしょう。2社間ファクタリングの手数料相場は10~30%といわれており、手数料を抑えたい方にはデメリットとなります。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングとは、人材派遣企業とファクタリング会社に加え、派遣先企業も契約に参加するタイプの契約方法です。人材派遣企業は、売掛債権をファクタリング会社に持ち込み、審査を受けます。審査の結果契約条件が提示されますので、その条件に問題がなければ契約へ進みます。このタイミングでファクタリング会社から派遣先企業に債権譲渡通知が行われ、派遣先が債権譲渡に応じてくれれば契約完了です。
契約完了後には人材派遣企業に現金が入金されます。売掛金の入金先に関しては、債権譲渡通知の時点で、ファクタリング会社の口座に変更されますので、人材派遣企業としてはこれ以上何かすることはありません。
3社間ファクタリングのメリットは手数料相場が安いことです。3社間ファクタリングの手数料相場は1~9%であり、2社間ファクタリングよりも安い手数料で契約できます。
デメリットは派遣先にファクタリングの利用が知られることや、派遣先にも契約に参加してもらう関係で、現金化に時間がかかという点でしょう。
人材派遣業がファクタリングを利用するメリット
人材派遣業にとって、ファクタリングとは非常に利用しやすい資金調達法であり、人材派遣企業として営業をしていくためにも、重要な資金調達法でもあります。人材派遣業がファクタリングを利用するメリットにも触れておきましょう。
売掛金の未回収リスクを回避できる
人材派遣業は、さまざまな派遣先に人材を派遣します。中には経営状態の良くない派遣先が含まれている可能性も否定できません。人材を派遣したにも関わらず、派遣先の倒産などにより、その対価である売掛金が入金されないという事態が発生すると、大きなダメージを負ってしまいます。
ファクタリング契約で、売掛債権を譲渡すると、同時に売掛金の未回収リスクもファクタリング会社に譲渡することになります。つまり万が一派遣先が倒産した場合、売掛金を回収するのは売掛債権を持つファクタリング会社であり、人材派遣業はその手間を負う必要がなくなるわけです。
さまざまな企業と取引を行う人材派遣業にとっては、非常に大きなメリットといえるでしょう。
派遣先の信用情報で利用できる
ファクタリングの審査の中心となるのは、売掛金が入金されるかどうかという点です。そのため審査の中心となるのは、申し込んだ人材派遣企業ではなく、派遣先企業の信用情報ということになります。申し込んだ人材派遣企業の経営状態が赤字経営でも債務超過の状態でも、派遣先がしっかりした企業であれば、ファクタリング審査に通過する可能性は高くなります。これも大きなメリットといえるでしょう。
ファクタリング・人材派遣のまとめ
人材派遣業にとって、ファクタリングという資金調達法は非常に利用しやすい資金調達法です。営業許可を得るために必要な条件を満たしやすく、また、借入金ではないため負債金額が増えることもありません。
特に労働派遣法が改正されて以降は、ファクタリングを利用する人材派遣業も増えており、今後も上手な活用が求められるでしょう。人材派遣業を行っている経営者の方は、資金調達法の1つとして、ファクタリングの利用も視野に入れることをおすすめします。