「償還請求権って何?」
「償還請求権の確認方法ってある?」
ファクタリング契約を結ぶ場合は、大きな金額に関する契約となりますので、契約書の内容をしっかりと確認する必要があります。特に注意して確認したいのが、償還請求権に関してです。
この記事では償還請求権に関してや、その確認方法、さらにファクタリング契約書で確認すべき項目に関してまとめていきます。
償還請求権の確認方法
ファクタリング契約において、償還請求権がついているのかどうかを確認するには、契約書を隅々まで読むという確認方法しかありません。その際に注目すべき文言は「償還請求権」もしくは「リコース」という文言です。
償還請求権付きの契約はリコース契約と呼ばれ、ついていない契約はノンリコース契約と言います。提示された契約書に、ノンリコース契約と明記されているかどうかをチェックするのが基本的な確認方法となります。
もし、契約書に「償還請求権」や「リコース」といった文言がなかった場合は、担当者に口頭で確認する方法がおすすめです。オンラインファクタリングでも、問い合わせ先の電話番号や、チャットによる質問が可能となっているケースがほとんどですので、契約前に必ず確認しましょう。
償還請求権とは?
そもそも償還請求権とは何かという点を解説していきます。償還請求権は民法に定められた権利です。その条文を確認しておきましょう。
民法第608条
賃借人による費用の償還請求
1.賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2.賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
引用:e-GOV法令検索(URL:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
条文のため、非常に分かりにくい文章ですが、ファクタリングのケースに置き換えて分かりやすく書くと、以下のようになります。
・取引先が売掛金を支払わなかった場合、ファクタリング会社が、ファクタリングを申し込んだ企業に対し売掛金の支払いを請求できる。
ということになります。要するに、売掛金が未回収になった場合のリスクを、ファクタリング会社ではなく、申し込み企業が負わなければいけないということです。
償還請求権付のファクタリング契約は違法?
ファクタリング契約に、償還請求権が付いているということは、売掛金の未回収リスクは申し込み企業に残ったままであるということになります。こうした契約をリコース契約と呼びますが、リコース契約は違法契約になる可能性があります。
過去の判例を確認すると、ファクタリング契約とは、債権譲渡契約であり、貸金契約ではないことが明らかです。債権譲渡契約である以上、債権が譲渡された時点で、売掛金の未回収リスクも同時にファクタリング会社に移るべきとしています。
つまり、償還請求権付のファクタリング契約は、ファクタリング契約ではなく、売掛債権を担保とした貸金契約であるというのが裁判所の判断です。では、売掛債権を担保とした貸金契約が、なぜ違法になるのかという点を解説していきます。ポイントは2点です。
・貸金契約を結べるのは、貸金業者登録をしている業者のみ
・貸金契約の場合、金利は利息制限法の範囲内であるべき
ファクタリング会社は債権の譲渡を行う会社であり、貸金業者である必要はありません。もし、償還請求権付の契約を結んだファクタリング会社が、貸金業者登録をしていなければ、貸金業法違反で違法となります。
ファクタリングの手数料は1~30%程度です。これに対し、利息制限法で定める上限金利は、年利15~20%です。数字だけを比較すると、ファクタリングの手数料は利息制限法の範囲内に見えますが、金利は年利である点に注目です。
年利15~20%というのは、1年間での金利を指します。つまり1ヶ月でかかる金利はこの1/12となり、およそ1.3~1.7%となります。2ヶ月で金利を計算しても1.5~3.5%です。多くのファクタリング契約の手数料は、この数字以上であるため、仮にファクタリング会社が貸金業者登録をしていたとしても、利息制限法違反ということになります。
つまり、償還請求権付のファクタリング契約は、そもそも違法契約であるという可能性が非常に高いということになります。
償還請求権以外に確認すべき項目
ファクタリングの契約書には、償還請求権以外に確認すべきポイントがいくつかあります。こうしたポイントを、確認方法とともに解説していきましょう。
債権譲渡通知
債権譲渡通知とは、取引先(売掛先)に対して、売掛債権が譲渡された旨を通知するというものです。特に2社間ファクタリングを申し込んだ場合、確認が必要な条項といえます。
確認する場合のポイントは、どのような場合に債権譲渡通知が行われるかです。仮に、取引先から支払われた売掛金を、申し込み企業がファクタリング会社に送金しなかった場合には債権譲渡通知を行うという場合は問題ありません。申し込み企業が、契約内容通りに売掛金を送金すれば、通知が行われないからです。
そうではなく、単に債権譲渡通知を行うという場合は要注意です。
2社間ファクタリングは、取引先に知られずにファクタリングが利用できるのがメリットです。そのメリットがなくなることを意味しますので、確認の上削除を求める必要があるでしょう。
確認方法は、やはり契約書を隅々まで確認すること、そして記載がない場合は担当者に直接口頭で確認することが挙げられます。
債権譲渡登記
債権譲渡登記とは、法務局に債権の所有権が譲渡されたことを登記する契約です。
2社間ファクタリングの場合、基本的には同時に契約する必要があるといえます。債権譲渡登記を行う理由は、債権の二重譲渡を防ぐことです。公的機関である法務局に、譲渡した証拠を残すことで、仮に申し込み企業が同じ債権を別のファクタリング会社に持ち込んで契約した場合でも、債権の所有権を主張できる証拠となります。
債権譲渡登記に関しては、確認したうえで納得して契約するのがおすすめです。二重譲渡をするつもりがない場合、特に問題はありません。
ただし確認すべきは債権譲渡登記にかかる費用です。譲渡登記は、司法書士に業務を依頼するのが一般的です、その司法書士に支払う報酬は、申し込み企業負担となります。この報酬の金額はチェックしておきましょう。
一般的な相場は5~8万円程度ですので、極端に高い金額設定になっている場合は確認が必要です。
確認方法はやはり契約書をよく読むこと、そして担当者に口頭で確認することです。債権譲渡登記の有無に加えて、登記に必要な費用に関しても必ず確認しておきましょう。
売掛金の送金期日
2社間ファクタリングの場合、売掛債権はファクタリング会社に譲渡されますが、取引先との取引内容に関しては変更はありません。つまり、売掛金は一度申し込み企業の口座に振り込まれるということです。
申し込み企業は、取引先から売掛金が入金されたら、速やかにその売掛金をファクタリング会社に送金する必要があります。この送金の期日に無理がないかも確認しておきましょう。
一般的なファクタリング契約では3~5営業日程度の猶予が設けられます。契約書を確認して、この猶予があまりに短い場合は、必ず担当者に確認し、ある程度の猶予をもらえるようにしましょう。
即日でも対応できると考えられる方もいらっしゃるかと思いますが、先の日程に何が起こるのかは分かりません。どうしても当日対応ができないような事態も考えられますので、少なくとも3営業日程度の猶予は確保しておきましょう。
担保や保証人に関して
ファクタリング契約は債権譲渡契約であり、貸金契約ではありません。
貸金契約ではない以上、担保も保証人も不要です。単純に持っている債権を売るだけの契約ですから当然です。
しかし契約の際、担保や保証人が求められるケースがないとはいえません。こういった契約は間違いなく違法契約であり、違法契約を持ちかけるのはほぼ悪徳業者となりますので、決して契約しないようにしてください。
ファクタリング・償還請求権・確認方法のまとめ
ファクタリング契約と償還請求権、そしてその確認方法について解説してきました。
ファクタリング契約に、償還請求権が付随されることはありません。償還請求権付の契約は貸金契約となりますので注意が必要です。確認方法としては契約書をしっかり読むしかありませんので、契約の際は契約書を隅々まで確認し、不明点がないうえで契約するようにしましょう。
償還請求権付でのファクタリング契約を求める業者の多くは悪徳業者です。関われば最悪の事態も想定されますので、何よりも近づかないようにしましょう。