ファクタリングFactoring

2024.05.23

ファクタリングは短期借入金では仕訳ない!正しい仕訳を解説

「ファクタリングって短期借入金でいいの?」
「ファクタリングを利用した場合の仕訳が分からないんだけど」

ファクタリングという資金調達法は、近年利用企業が増えている、新しい資金調達法です。そのため、経理担当者としてはどう仕訳るべきか悩んでいるかもしれません。

ファクタリングは売掛金を早期現金化し、売掛金が入金されたらすぐにファクタリング会社に売掛金を送金するため、短期借入金として仕訳たくなるというのは分かります。

しかし、ファクタリングを仕訳る場合、短期借入金の科目は使用しません。そのあたりに関して詳しく解説していきましょう。

ファクタリングは短期借入金か?

短期借入金は、経理上の仕訳科目の1つです。ファクタリングを利用した際、仕訳上短期借入金となるのかどうか。まずはこの点から解説していきましょう。

ファクタリング契約とは?

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を入金期日前に現金化する資金調達法です。

そのためファクタリング契約は、債権譲渡契約となり、貸金契約とはなりません。

短期借入金とは?

短期借入金とは仕訳科目の1つであり、1年未満で完済する借入金を指します。あくまでも借り入れ金に対して使用する勘定科目です。短期借入金に対し、返済に1年以上かかる借入金は長期借入金で仕訳る形になります。

ファクタリングは短期借入金ではない

ファクタリングは借り入れではなく債権譲渡契約であり、短期借入金は借り入れに対する仕訳科目ですから、ファクタリングを利用した際の仕訳に、短期借入金を利用することはありません。

2社間ファクタリングの場合、売掛金入金後にファクタリング会社に売掛金を送金するため、一見短期借入金に見えますが、そもそも契約が違いますので、短期借入金で仕訳るのは間違いということになります。

ファクタリングの仕訳方法

では、ファクタリングの仕訳方法に関して簡単に解説していきましょう。一例として200万円(税別)の売掛金をファクタリングして、その手数料が10%のケースで順を追って解説していきましょう。

まずは売掛金が発生した場合の仕訳です。

・借方 → 売掛金 2,200,000円
・貸方 → 売上 2,000,000円・仮受消費税 200,000円

貸方には税込みの金額を、貸方には売上と仮受消費税として仕訳します。

この売掛債権をファクタリング会社に持ち込み、審査の結果ファクタリング契約ができたとします。その際の仕訳は以下の通りです。

・借方 → 未収入金 2,200,000円
・貸方 → 売掛金 2,200,000円

まだファクタリング契約が結べただけで、現金が入ってきていないので、仕訳上は「未収入金」で仕訳ます。

その後、ファクタリング会社から手数料10%を差し引いた180万円(税別)が入金された場合の仕訳が以下の通りです。

・借方 → 現金預金 1,980,000円・売掛債権売却損 220,000円
・貸方 → 未収入金 2,200,000円

売掛債権が現金化されますので、借方の仕訳科目は現金預金に代わります。また、手数料として支払った10%分に関しては、純粋な損失のため、売掛債権売却損として計上しますが、ほかに「支払手数料」や「雑損失」として計上しても問題ありません。

ちなみにこの手数料に関しては非課税ですので注意してください。

最後に、取引先から売掛金が入金された場合の仕訳です。2社間ファクタリングでは、売掛債権の所有権はファクタリング会社に移行しますが、売掛債権の契約内容に関しては変更されません。つまり、売掛金は契約通りファクタリングを利用した企業の口座に振り込まれます。まずは、自社の口座に売掛金が振り込まれた段階での仕訳です。

・借方 → 現金預金 2,200,000円
・貸方 → 預り金 2,200,000円

取引先から入金された売掛金の所有権は、利用企業にはありません。ファクタリング会社の金銭となりますので、仕訳上はファクタリング会社から預かっている金銭ということで預り金を使用します。

その後、入金された売掛金をファクタリング会社に送金します。その送金後の仕訳は以下の通りです。

・借方 → 預り金 2,200,000円
・貸方 → 現金預金 2,200,000円

これで仕訳は完了です。現実には、ファクタリング契約では手数料のほかに事務手数料や債権譲渡登記費用などが加わりますし、掛け目がかけられるのが一般的ですが、ここでは分かりやすく説明するために、こうした条件は省いたうえで解説しました。

いずれにせよ、短期借入金という仕訳科目を使用せず、上記のように仕訳るのが基本ですので間違えないようにしてください。

短期借入金となるファクタリング契約はある?

ファクタリングにもいろいろな契約方法があります。そんなファクタリング契約の中には、短期借入金で仕訳るような契約はあるのでしょうか?この点に関して解説していきましょう。

契約内容がファクタリングである以上存在しない

ファクタリングはどのような契約内容であっても、原則としては売掛債権の譲渡契約となります。貸金契約となるものはファクタリングとは呼びませんので、契約がファクタリングである以上、短期借入金で仕訳ることはありません。

ファクタリングに近い契約であれば短期借入金のなるケースも

ファクタリングと非常に近い形の契約の場合、短期借入金として仕訳るケースはあります。

企業会計基準委員会が公表する「金融会計基準第10号、金融商品に関する会計基準」において、ファクタリングは以下の3つの条件を満たすものとして定義されています。

・債権譲渡登記を伴う契約である
・通常の方法(現金振り込み等)により資金調達が可能な契約である
・ノンリコース契約である

上記を満たすものがファクタリング契約ですので、例えば債権譲渡登記がない契約や、リコース契約の場合、ファクタリングではなくなります。

特にリコース契約(償還請求権付の契約)の場合は、ファクタリング契約ではなく貸金契約となります。これは過去の判例を見ても明らかです。

償還請求権とは、もし売掛金が入金されなかった場合、利用した企業がその売掛金を保障しファクタリング会社に支払わなければいけない権利です。つまり売掛金の未回収リスクが、利用企業に残る形の契約です。

過去の判例ではこうしたリコース契約は、ファクタリングではなく売掛債権を担保とした貸金契約であると判断を下しています。

こうした契約を結んだ場合、貸金契約であり、数か月後に入金される売掛金で完済する契約となりますので、仕訳上は短期借入金での仕訳となります。

短期借入金ではないのがファクタリングのメリット

企業がファクタリングを利用して資金調達するメリットのひとつが、貸金契約ではないという点です。債権譲渡契約であるファクタリングは、上の仕訳例を見ても分かる通り、借入金とはなりません。そのため、自社の信用情報に影響を与えることがない資金調達法です。

また、借入金ではありませんので、極端な話赤字経営の企業でも、債務超過の企業でも利用可能である資金調達法となります。またバランスシートのオフバランス化もできるため、利用するメリットは非常に大きいといえるでしょう。

ファクタリング・短期借入金のまとめ

ファクタリング契約は債権譲渡契約であり、貸金契約ではありません。そのため仕訳の際も短期借入金で仕訳ることはありません。

ファクタリングに似た契約となる、売掛債権を担保とした貸金契約の場合、短期借入金で仕訳ることになりますが、反対に言ってしまえば、短期借入金で仕訳ることができる契約は、ファクタリングではないともいえます。

仕訳の際はしっかり仕訳科目を確認し、間違えないように仕訳ましょう。

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