「ファクタリングと手形割引はどっちが便利?」
「より審査に通りやすいのは?」
手元に売掛債権も約束手形もあるものの現金が足りない。そうなった場合に利用できる資金調達法がファクタリングや手形割引といった方法です。
どちらも審査に通りやすく、現金化が早いということで、企業経営をしている方にはありがたい資金調達法と言えます。
非常に似たイメージのある手形割引とファクタリングですが、その違いはどこにあるのか?2つの資金調達法の違いを中心に解説していきましょう。
ファクタリングとは?
ファクタリングと手形割引の違いを知るため、まずはそれぞれの特徴を簡単に紹介していきます。
ファクタリングは手元にある売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を早期現金化するという資金調達法です。
そんなファクタリングのメリットとデメリットを確認していきましょう。
ファクタリングのメリット
ファクタリングのメリットはいくつかありますが、まずは借り入れではないという点でしょう。ファクタリングは貸金契約ではなく、債権譲渡契約ですから、借り入れとはなりません。当然返済の義務はなく、自社の信用情報にも影響は与えません。
むしろ、売掛債権が現金に変わりますので、バランスシートのオフバランス化ができ、財務状況が把握しやすくなります。
続くメリットが、現金化のスピードです。ファクタリングにはさまざまな契約方法がありますが、もっともポピュラーな2社間ファクタリングであれば、最短即日、遅くとも1週間以内には現金が手に入ります。一般的には2~3日中に現金化というのが中心になりますので、急ぎ現金が必要な際には非常に便利な資金調達法となります。
もうひとつメリットを挙げるとすれば、売掛金の未回収リスクを回避できるということでしょう。ファクタリング契約は債権譲渡契約です。債権の所有権がファクタリング会社に移るということは、債権の未回収リスクもファクタリング会社に移ることを意味します。
早期現金化ができ、返済の義務もなく、売掛金の未回収リスクも回避できるのがファクタリングを利用するメリットということになります。
ファクタリングのデメリット
一方デメリットは、売掛債権の額面金額以上の現金は手に入らないという点。売掛債権を買い取ってもらう契約ですから、その額面金額以上でというわけにはいきません。つまり、一度に調達できる金額に限界があるというのがデメリットとなります。
また、ファクタリングは売掛金を早期現金化するため、本来売掛金が入金されるタイミングに現金が入ってこない(入ってもすぐに出て行ってしまう)ということになります。そのタイミングは現金が潤沢にあるという状態であれば問題ありませんが、そうではない場合、自転車操業のような形になる恐れがあります。
手形割引とは?
続いて手形割引について簡単に説明していきましょう。
手形割引とは、取引先からの支払いで約束手形が使用された時に利用できる資金調達法です。約束手形は一般的に3~4ヶ月待たないと現金化できません。その間に資金繰りに困った場合、この約束手形を金融機関や手形割引業者に譲渡し、入金日前に現金化するという方法です。
そのメリットとデメリットを確認しておきましょう。
手形割引のメリット
手形割引のメリットはファクタリング同様早期の現金化にあります。売掛債権も約束手形も、自社の売り上げとしては立っているものの、入金日が来ないと現金にはなりません。その入金日までの待ち時間をなくし、現金が手に入ることが最大のメリットです。
手形割引のデメリット
一方デメリットとしては、手形割引をする以上、裏書をする必要がある点でしょう。
約束手形は入金期日にならないと現金化できませんが、手形を利用しての支払いや手形の譲渡は可能です。ただし、支払いや譲渡を行う際は手形に裏書をする必要があります。
手形に裏書をするということは、その手形の振出人(この場合は売掛先)が不渡りを起こした場合、支払い義務が裏書をした企業に発生してしまいます。
万が一不渡りがあった場合、大きな損失を被る可能性があるという点がデメリットといえます。
ファクタリングと手形割引の違い
ファクタリングと手形割引について、基本的な構造と、そのメリット・デメリットを紹介してきました。この2つの資金調達法の共通点は、売り上げを早期に現金化できるという点と、手数料(割引率)が必要となる点です。
約束手形も売掛債権も将来的には現金となるものですが、一定期間待たないと現金化されません。この期間に資金繰りで困った場合、ファクタリングや手形割引を利用すれば、入金日を待たずに現金を手にすることができます。
ただし、額面金額通りの現金が手に入るわけではありません。どちらも一定の手数料や割引率が差し引かれた上で、残額が現金化されるということになります。
では、そんなファクタリングと手形割引の違いはどこにあるのか?ここからは違いについて説明していきます。
償還請求権の有無
まず大きいのが償還請求権の有無です。償還請求権とは、売掛債権や手形が現金化されなかった場合、申し込んだ方がその保証をしなければいけないという権利。
ファクタリングは償還請求権のないノンリコース契約となります。売掛債権を担保にした貸金契約ではなく、債権譲渡契約となるためです。
手形割引はデメリットの点で触れた通り、裏書をする必要があります。裏書をするということは、約束手形の振出人が不渡りを起こした場合、裏書をした企業がその損失を保証する義務が生じます。つまり、償還請求権がある契約ということになります。
手形割引とファクタリングの大きな違いはここです。ファクタリングが債権譲渡契約で、貸金契約ではないのに対し、手形割引は償還請求権がついているので、形としては約束手形を担保とした貸金契約を結ぶことになります。
取扱業者
ファクタリングは債権譲渡契約で、手形割引は貸金契約ですので、契約できる業者にも違いがあります。
手形割引を取り扱えるのは、金融機関など貸金業者登録を行っている会社のみとなります。ファクタリングは貸金契約ではないので、貸金業者登録をしていない会社でも対応可能です。
審査で重視されるポイント
最後に審査で重視されるポイントも紹介しておきましょう。
ファクタリングで重視されるのは、売掛金が入金されるかどうかです。そのため重視されるのは取引先の信用情報で、申し込んだ企業の信用情報はそこまで重視されません。極端な話、申し込んだ企業が赤字経営続きでも、債務超過の状態でも、契約が可能なのがファクタリングです。
手形割引は上記の通り、償還請求権がある契約です。そのため約束手形の振出人の信用情報と合わせて、申し込み企業の信用情報も重視されます。申し込み企業の財務状況が悪い場合、審査に落ちてしまう可能性があるわけです。
審査の通りやすさという点では、ファクタリングの方が通りやすいとも考えられます。
ファクタリング・手形割引のまとめ
ファクタリングも約束手形も、急ぎ現金が必要な場合には、有効な資金調達法です。どちらも最短即日、遅くとも1週間以内には現金化が可能ですので、急ぎ現金が必要な場合は利用しやすい資金調達法といえるでしょう。
違いは契約の種類。債権譲渡契約と貸金契約という違いがあり、審査の通りやすさや、万が一取引先が支払わなかった場合のリスクに大きな差があります。
どちらが優秀な資金調達法かと言われると、これは個々の判断による部分が大きいと思います。約束手形と売掛債権が両方ある場合は、取引先の状況や、自社の状況を踏まえて、より有利と思われる方法で現金化を考えるようにしましょう。