「医療報酬債権でもファクタリングできるの?」
「医療報酬債権をファクタリングするメリットやデメリットは?」
一般的にファクタリングといえば、売掛債権を利用したものを指しますが、医療機関などが持つ医療報酬債権を対象としたファクタリングサービスも存在します。
基本的な構造は売掛債権ファクタリングと同様ですが、医療報酬債権を利用したファクタリングの場合独特な特徴もありますので、こうした特徴を紹介しつつ、そのメリットとデメリットを解説していきましょう。
医療報酬債権を利用したファクタリングとは?
一般的にファクタリングといえば、企業が持つ売掛債権をファクタリング会社に譲渡することで、売掛金を早期現金化する資金調達法となります。
しかし、これだけだと、売掛債権を持たない業種は利用できないということになります。基本的に現金取引となる小売店や飲食店、そして患者から治療費を現金で受け取る医療関係機関も利用できません。
そんな中で、医療機関が利用できるファクタリングが、医療報酬債権を利用したファクタリングです。医療報酬は総合的な言い方ですが、診療をした場合の診療報酬、さらに薬剤を販売した場合の調剤報酬、介護を提供することで発生する介護報酬も含めて表現となります。
こうした医療報酬における債権とはどのようなもので、どのようにファクタリングを利用するのかを解説していきましょう。
健康保険団体から支払われる医療報酬を利用する
一般的に医療を受けた患者が支払う診療報酬には、健康保険が適用されます。健康保険による負担金額は条件次第ではありますが、1~3割。多くの方は3割負担の社会保険もしくは国民健康保険に加入しているため、支払うべき診療報酬の3割のみを医療機関に支払います。
では、残りの7割はどうなるのかというと、加入している健康保険団体が医療機関に支払うことになります。この支払いに関しては、1ヶ月分の医療報酬をまとめて健康保険団体に申請し、その後健康保険団体から医療機関に支払われることになります。
この健康保険団体からの支払いは原則申請から2ヶ月後。つまり医療機関や介護事業者は、健康保険団体に対する医療報酬債権を常に持っているということになります。
この医療報酬債権を利用したファクタリングサービスに関して紹介していきましょう。
3社間ファクタリングとなる
この医療報酬債権ファクタリングを利用する場合は、原則3社間ファクタリングとなります。
一般的な売掛債権を利用したファクタリングにも、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。売掛債権ファクタリングの場合は、2社間ファクタリングが主流です。
これは、3社間ファクタリングを利用し、取引先にファクタリングの利用を知られてしまうと、取引先が「ファクタリングを利用するほど経営状態が危ない会社」というイメージを持つ可能性があり、その結果後の取引に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
その点医療報酬債権を利用したファクタリングの場合、取引先は健康保険団体です。いくら医療機関の経営状況が悪かろうと、取引に悪影響を及ぼすことはないため、3社間ファクタリングのデメリットがないからです。
3社間ファクタリングのメリットは手数料の安さ。2社間ファクタリングと比較すると、売掛金(健康保険団体が負担する医療報酬)の未回収リスクが少なくなるため、ファクタリング会社としても安い手数料で契約できるということになります。
医療報酬債権で利用できるファクタリングは、一般的なファクタリングと比較しても、安い手数料で利用できるファクタリングということになります。
医療報酬債権ファクタリングを利用するメリット
医療報酬債権ファクタリングを利用する場合、いくつかのメリットが考えられます。基本的な部分から、医療報酬債権ファクタリングならではのメリットまで、いくつか紹介していきましょう。
医療報酬を最大2ヶ月ほど早く現金化できる
医療報酬債権に関しては、申請してから2ヶ月後の支払いが原則です。しかし、医療報酬債権ファクタリングを利用することで、最大2ヶ月ほど早く医療報酬を現金化することが可能となります。
医療機関においても、急に現金の出費が必要となるケースはあります。こうした急な出費に対して、蓄えている現金だけでは不足してしまう、もしくは不足の可能性があるというケースでは、この医療報酬債権ファクタリングの現金化の早さは大きなメリットとなるでしょう。
手数料が安い
上記の通り、医療報酬債権で申し込むファクタリングは、原則3社間ファクタリングです。そのため手数料が安く、利用する医療機関は小さな損失で利用できるというメリットがあります。
ちなみに一般的な売掛債権ファクタリングの場合、2社間ファクタリングで10~30%程度、3社間ファクタリングで1~9%程度が手数料の相場です。
医療報酬債権を利用したファクタリング契約の場合、手数料相場は1~5%程度。売掛債権ファクタリングの2社間ファクタリングと比較すると、かなり手数料が安くなるということになります。
では、医療報酬債権ファクタリングではなぜそこまで手数料が抑えられるのか?この点も含めて次の項で解説していきましょう。
審査に通りやすい
医療報酬債権ファクタリングに限らず、すべてのファクタリング契約においては、契約前に必ず審査が行われます。
このファクタリング審査で審査をされるのは、持ち込まれた債権がきちんと現金化されるかどうかという点です。つまり申し込んだ企業(医療機関)の信用情報以上に、取引先の信用情報が重視されるということ。
そう考えると医療報酬債権ファクタリングは、審査に非常に通りやすいといえます。何しろ取引先は健康保険団体です。医療機関においてきちんと診療が行われている以上、間違いなく医療報酬は支払われますし、取引再起が経営不振で支払いが遅れるなどということもまずあり得ません。
取引先である健康保険団体の信用度が限りなく高いため、審査に落ちることはほとんどありません。また、取引先である健康保険団体が支払わない、支払いが遅れるということもまずありませんので、手数料設定も安くなるということになります。
手数料が安く審査に通りやすいというのは、ファクタリングを利用する上で、この上ないメリットと言っていいでしょう。
医療報酬債権ファクタリングを利用するデメリット
医療報酬債権ファクタリングを利用する場合、大きなメリットがあるとしましたが、メリットがあるものには当然ですがデメリットも存在するもの。続いては、医療報酬債権ファクタリングのデメリットに関して解説していきましょう。
申し込みから現金化までやや時間がかかる
医療報酬債権ファクタリングは原則3社間ファクタリングです。3社間ファクタリングのメリットとして、手数料が安いという点を上で紹介しましたが、半面デメリットとしては現金化に時間がかかるという点があります。
2社間ファクタリングの場合、申し込みから2~3日程度、早ければ申し込み即日、遅くとも1週間程度で現金化が可能です。しかし、3社間ファクタリングの場合、早くても申し込みから1週間程度、長くなると2週間程度現金化に時間がかかるケースがあり、スピード感という点ではデメリットが発生するといえます。
手数料を支払う必要がある
医療報酬債権ファクタリングもファクタリングですから、手数料を支払う必要があります。利用する医療機関にとってこの手数料は純粋な損失に当たります。
医療報酬債権ファクタリングを利用しなければ受け取れていた金額が受け取れなくなるという点ではデメリットがあると言っていいでしょう。
長期間利用していると止めるのが難しくなる
医療報酬債権ファクタリングにおいて、最大のデメリットは、この「止めるのが難しい」という点でしょう。
医療報酬債権をファクタリングに出す場合、その医療機関の毎月の収入のほぼすべてをファクタリングするということになります。ファクタリングは借入金ではなく、先に入金される現金を早期に手にするという資金調達法です。1度利用すると、本来入金されるタイミングでの入金がなくなるということになります。
これが収入のほぼすべてとなると、1度利用するとなかなか止めるのが難しくなるというケースが考えられます。
上記の通りファクタリングを利用すれば、手数料という名の損失は必ず計上されます。継続して利用し続けることでこの損失はどんどん大きくなっていきます。これが最大のデメリットです。
まとめ
医療報酬債権ファクタリングは、審査に通過しやすく、また手数料設定も安いため、資金繰りに困っている医療機関にとっては非常にメリットの大きい資金調達法となります。
ファクタリングですから借入金にもならず、医療機関の信用情報に傷がつかないというメリットも考えられます。
ただし、1度利用すると、なかなか抜け出せなくなるという大きなデメリットも存在します。長期間医療報酬債権ファクタリングに依存してしまうと、その間にも損失はどんどん大きくなり、長期的には経営悪化の要因ともなりかねません。
資金融資と併用するなど、医療報酬債権ファクタリングに依存せずに経営を続けられるような工夫をしながら、上手に利用するようにしましょう。