ファクタリングFactoring

2024.02.19

ファクタリング契約に償還請求権は必須なのか?

「償還請求権って何?」
「ファクタリング契約って償還請求権は必須?」

ファクタリングに限らず、いろいろな方法で企業の運転資金を調達してきた方は、償還請求権という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

この償還請求権ですが、貸金契約、融資契約などでは付随されるのが一般的ですが、ではファクタリング契約では必要なのか?この点に関して説明していきたいと思います。

償還請求権とは何か?という基本から、ファクタリングと償還請求権の関係などに関して説明していきましょう。

償還請求権とは?

ファクタリング契約を結ぶ際に、ぜひ知っておきたいのが「償還請求権」という言葉です。償還請求権とは、ファクタリング会社が支出した金銭分の返還請求ができる法律上の権利となります。

これだけですと少しわかりにくいので、実際にファクタリング契約で考えてみましょう。

ある企業が、手持ちの売掛債権をファクタリング会社に持ち込み、ファクタリング契約をしたとします。しかし、その取引先が期日になっても売掛金を入金しなかったとしましょう。

この場合、ファクタリングを利用した企業はすでに売掛債権を譲渡しているため、売掛金の回収は、売掛債権の所有権を持つファクタリング会社の責任ということになります。

しかし、ファクタリング契約に償還請求権が付随されていると、ファクタリング会社はこの権利を主張。利用した企業が、未払いの売掛金を取引先に代わって支払わなければならないということになります。

つまり、売掛金の未払いリスクを、ファクタリング会社ではなくファクタリングを利用した企業が負うことになるのが償還請求権ありのファクタリング契約ということになります。

ファクタリングは償還請求権なしが原則

上記の例のような事態があるとなると、ファクタリングの利用には大きなリスクがあるように感じるでしょう。しかし、この点は安心です。

原則として、ファクタリング契約は償還請求権なしでなくてはならないと定められているからです。この点に関して解説していきます。

ファクタリングにおける債権譲渡契約

ファクタリングはそもそも違法な契約ではありません。金融庁や中小企業庁といった省庁が、その利用を促進しているように、ファクタリング契約は合法の契約となります。

ファクタリング契約を結ぶことで、ファクタリングを利用した企業は、手数料を支払う必要はあるものの、売掛金を早期現金化することができます。一方ファクタリング会社は、売掛金の未払いリスクを負うものの、手数料という利益を手にすることができます。

どちらにもメリット・デメリットがあって初めて債権譲渡契約となります。しかし、償還請求権がある契約となると、ファクタリング会社は、売掛金の未払いリスクなしで、手数料のみ手にすることになります。

これは、ファクタリング契約としては不完全な契約ということになります。

過去の判例で解説

ファクタリング契約における償還請求権は、たびたび問題になるケースがあります。実際の判例を見てみましょう。

令和2年(2020年)9月に東京地裁が下した判決では、償還請求権ありのファクタリングは、債権譲渡契約ではなく貸金契約であるという判決が出ています。

実際の判例はこの逆、つまり訴えられたファクタリング会社は、償還請求権も設定していないし、手数料も法外ではないので違法な契約を結んでいないという判決です。

この判決を言い換えれば、償還請求権があり、ファクタリング会社が売掛金の未払いリスクを負わない契約は、債権譲渡契約とは認められず、売掛債権を担保とした貸金契約、融資契約とみなすという判決です。

貸金契約を結ぶ場合、そのファクタリング会社は貸金業者登録が必要になりますし、手数料(この判例の契約の場合、貸金契約のため実質手数料が金利となる)に関しても、利息制限法の範囲内である必要があります。

また、当然ですが契約においても「この契約は債権譲渡契約ではなく貸金契約である」という説明が必要となり、これらの項目が一つでも欠けていれば、ファクタリング会社は違法契約を結んだということになります。

償還請求権以外に違法な契約となるケース

ファクタリング契約において、償還請求権を付随する契約は、貸金契約となり貸金業者登録をしていないファクタリング会社が結べば違法となります。

最初に説明した通り、ファクタリング契約自体は合法な契約ですが、その中でも違法と判じられる契約がありますので、そんな違法契約に関していくつか紹介しておきましょう。

給与ファクタリング

ファクタリングが違法行為であると勘違いしている方の多くは、この給与ファクタリングが違法であるという情報から、ファクタリング自体を違法契約と考えている可能性があります。そのくらい給与ファクタリングの判例は数が多く、非常に目立っています。

給与ファクタリングは、給与を受け取っている会社員個人が、その給与を給与債権とみなし、給与債権で契約するファクタリングです。

しかし、この給与ファクタリングに関しては、すでにファクタリングではなく貸金契約であるという判例がいくつも出されています。

給与ファクタリングの場合も、償還請求権付の契約同様、契約したファクタリング会社に問題があるという判決となり、貸金業者としての登録がない会社の場合は違法契約とみなされます。

債権の二重譲渡

債権の二重登記は、ファクタリングを申し込んだ企業にも問題があるというケースが目立ちます。

すでに他社に譲渡済みの売掛債権でファクタリング契約を結ぶと、同じ債権を二重に譲渡したということになり、詐欺罪などに問われる可能性があります。

もちろん二重譲渡と知った上でファクタリングを申し込めば詐欺罪等に問われる可能性があります。

ファクタリング会社では、こうした二重譲渡を防ぐために、自社で契約するファクタリング契約においては、債権譲渡登記を必須としているケースが多くなります。

ファクタリングを利用する企業のミスで、すでに譲渡済みの債権をファクタリングに持ち込まないように、しっかりと債権を管理しておくようにしましょう。

架空債権での契約

明らかに悪質とみなされるのは、存在しない債権でファクタリングを申し込むというケースです。売掛債権は基本的に形がないものであり、ファクタリングを利用する企業が請求書を偽造すれば、あたかも存在するように見せかけることも可能です。

しかし、そのような行為は当然犯罪行為。架空の債権での申し込みなどといった行為は決してしないようにしましょう。

違法契約を結ぶ悪徳業者に注意

ファクタリング契約において、償還請求権は設定されないのが原則です。償還請求権のない契約を、ノンリコース契約と呼び、誠実な業務を行っているファクタリング会社は、すべてノンリコース契約を結んでいます。

しかし、ファクタリング会社の中には、利用者が知らないのをいいことに、償還請求権が付随されたファクタリング契約を結ぶケースがあります。

こうした償還請求権付の契約を結ぶような業者は、基本的に悪徳業者と呼ばれています。上でも説明した通り、償還請求権付の契約は、債権譲渡契約ではなく貸金契約です。貸金契約である以上、貸金契約である旨が契約書に記載されているべきですし、何よりその業者自体が貸金業者登録をしている必要があります。

貸金業者登録もせず、さらにファクタリング契約と見せかけて償還請求権付の契約を進めるような業者とは決して契約しないようにしましょう。

ファクタリング業者を装った悪徳業者は存在する

では、こうした償還請求権付の悪質な契約を結ぶ悪徳業者がなぜ存在するのか。この点に関して簡単に説明していきます。

資金融資や手形割引、商工ローンなどの金融商品を提供する場合、これらはすべて貸金契約となりますので、契約する以上貸金業者登録が必要になります。貸金業者登録には、純資金の確保や国家資格の取得、行政への許認可申請などが必要になりますので、簡単には開業できません。

こうした許認可申請を無視して開業しているのが、いわゆる闇金業者です。

一方ファクタリングでは貸金契約を結ばず、債権譲渡契約を結びますので、この貸金業者登録は必要ありません。自治体への許認可申請も資格や免許の取得も不要で開業できるため、比較的誰でも開業できるのがファクタリング会社ということになります。

近年闇金業者に対する締め付けが厳しくなり、また、多くの方が闇金業者の存在を知ることで、闇金業者も顧客を集めるのが難しくなっています。こうした業者がファクタリング会社に姿を変えて、変わらず悪質な契約を結ぶケースがあるというのが現状です。

これからファクタリングの利用を考えている方は、しっかりと業者を見極め、悪徳業者に引っかからないように注意する必要があります。

まとめ

ファクタリング契約における償還請求権とは、もし売掛金が支払われなかった場合、ファクタリング会社が利用した企業に対して、売掛金未払いの補填を請求できるようになる権利です。

しかし、ファクタリング契約の原則から考えると、この償還請求権という権利は付随されないのが正しい契約。そのためほとんどのファクタリング会社では、償還請求権なしのノンリコース契約を結んでいます。

しかし、一部存在する悪徳業者などは、細かな説明もせずに償還請求権付の契約を求めてくるケースがありますので注意が必要です。

ファクタリングの契約とは、利用する企業は手数料を支払うリスクを負うものの、売掛金を早期現金化できるというメリットを持ち、提供するファクタリング会社は、売掛金の未払いリスクを負うものの、手数料収入を得るというのが自然な形。これが基本となりますので、覚えておきましょう。

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