ファクタリングは売掛債権を譲渡する資金調達法のため、売掛債権が存在しない個人事業主や小売店、医療従事者などは利用できないサービスと思われるかもしれません。
しかし、ファクタリングにはいろいろな契約方法があり、その中には、医療機関や介護事業者が利用できる医療系ファクタリング、介護報酬ファクタリングというものもあります。
この記事では、ファクタリングの基本的な仕組みから、介護報酬ファクタリングの特徴まで幅広く紹介。特に介護報酬ファクタリングに関して詳しく解説していきたいと思います。
ファクタリングの種類
もっともポピュラーなファクタリングは債権買取型のファクタリングとなります。
ファクタリングには、この債権買取型以外にもいろいろな契約方法がありますので、そんなファクタリングの種類に関して簡単に紹介していきましょう。
債権買取型ファクタリング
上記の通り、もっともポピュラーな契約方法であり、一般的にファクタリングと言えば、この債権買取型のファクタリングを意味します。
債権買取型のファクタリングには、申込企業とファクタリング会社の2社間で契約する2社間ファクタリングと、この2社に加えて取引先も含めた3社間で契約する3社間ファクタリングがあります。
保証型ファクタリング
保証型とは、手元にある売掛債権に関して、保険を掛けるように利用する契約方法です。
契約が成立すると、利用企業はファクタリング会社に手数料(保証料)を支払います。売掛金入金日までに、取引先から問題なく入金されれば、契約はその時点で完了。保証料は戻ってきません。
もし売掛金が入金されなかった場合、その時点で売掛債権がファクタリング会社に譲渡され、ファクタリング会社は売掛金相当額を利用企業に支払い、後に売掛金の回収はファクタリング業者が行います。
利用企業は手数料(保証金)を支払うことで売掛金の未回収リスクを回避することができるという契約です。
国際ファクタリング
国際ファクタリングとは、海外の企業との取引で利用できるファクタリング。自社と日本国内のファクタリング会社、さらに取引先と取引先の国のファクタリング会社の4社間で結ばれるのが一般的です。
ファクタリングに関して、異なるルールを持つ多国間での取引で活用されるファクタリング契約となります。
医療系ファクタリング
ここまで紹介したファクタリングは、売掛債権を持つ企業しか利用できないという特徴があります。そんな掛け取引が基本的にほとんどないのが医療関係の業種です。
医療関係の収入は、基本的に患者からの診療報酬となり、売掛債権は存在しません。その代わりに存在するのが、医療報酬債権です。
基本的に患者は保険を利用して医療を受けます。医療機関が患者から受け取るのは、医療報酬の内、患者の自己負担分のみ。残りの7割に関しては、健康保険団体連合会などから後に一括で入金されることになります。
この健康保険団体連合会から入金される保険給付金を債権と見做し、ファクタリングに活用するのが医療系ファクタリングとなります。
介護報酬ファクタリングとは?
医療機関も保険給付費という売掛債権に近い性質を持った収入があります。この保険給付費は、医療行為だけではなく、歯科医院での診療や、介護報酬などでも存在しますので、介護報酬ファクタリングは、医療系ファクタリングの一種ということができます。
医療系ファクタリングの一種
医療系ファクタリングの一種である介護報酬ファクタリングは、介護報酬における保険負担分(7割)をファクタリングすることで、早期現金化するファクタリング契約です。
一般的に介護報酬は、介護サービス提供時に患者から報酬の3割を受け取り、保険給付費に関してはまとめて健康保険団体連合会に請求する形になります。
1ヶ月分の保険給付費を、健康保険団体連合会に請求し、実際に支払いが行われるのが2ヶ月後。この保険給付費請求分がファクタリングの対象となります。
介護保険給付費を早期に現金化可能
一般的に介護保険給付費は、申請をしてから2ヶ月後に入金されます。この請求をファクタリングすることで、即時現金化できるというのが介護報酬ファクタリングです。
介護報酬ファクタリングは、申し込みから契約完了、現金入金までおよそ10日~2週間程度の時間がかかります。つまり、申請と同時に介護報酬ファクタリングを申し込めば、40~50日程度早く現金化ができるということになります。
介護事業者の運転資金では、人件費や固定費以外に多くの費用がかかるもの。移動のための車両や、介護に必要となる医療機器などの確保、メンテナンスなど、急に現金が必要になるシーンも少なくないと思います。
そんな時に活用できるのが、この介護報酬ファクタリングです。
介護報酬ファクタリングのポイント
介護報酬ファクタリングも、基本的な形は債権買取型のファクタリングと同様の流れとなります。しかし、債権買取型ファクタリングとは違うポイントがいくつかありますので、そんなポイントを紹介しておきましょう。
申し込みは3社間ファクタリング
介護報酬ファクタリングを始め、医療系ファクタリングは原則3社間ファクタリングとなります。
最初に債権買取型ファクタリングには、2社間と3社間の2つの契約方法があると書きましたが、この2つにはそれぞれ特徴があります。
2社間ファクタリングは、利用する企業の一存で契約が結べますので、何よりスピード感が魅力です。最短即日現金化ということも可能なだけに、急ぎ現金が必要なケースで活躍します。
また、取引先に知られることなく契約できるのもポイント。ファクタリング自体は違法行為でも何でもありませんが、ファクタリングを利用するほど資金繰りが厳しいというイメージを取引先に与えると、後の取引に悪影響が出かねません。そんな不安がないのが2社間ファクタリングです。
3社間ファクタリングは、取引先に利用を通知する必要があり、また契約にもある程度時間がかかる契約方法ですが、その一方手数料相場が安いのが魅力の契約法です。
介護報酬ファクタリングは、原則3社間ファクタリングとなりますので、介護報酬ファクタリングを申し込み、契約する段階で健康保険団体連合会にも連絡が行くことになります。
一般的な企業との大きな違いは、取引先(健康保険団体連合会)にファクタリングの利用を知られても、後の取引に影響がないという点。そのため3社間ファクタリングで、安い手数料での利用が可能となります。もちろん健康保険団体連合会でも、ファクタリングのシステムは把握していますし、利用する医療機関、介護事業者もいるため、何の問題もなく契約は可能です。
また、取引先が健康保険団体連合会ということで、審査の通過率が非常に高いのも介護報酬ファクタリングの大きなポイント。健康保険団体連合会が支払いに遅れる、支払いを行わないというケースはまずあり得ませんので、高い確率で契約ができるでしょう。
現金化対象は介護保険給付費の80%程度が相場
介護報酬ファクタリングの特徴としては、保険給付費全額がファクタリングの対象にはならないという点が挙げられます。
一般的に保険給付費は、介護事業者から請求を行いますが、その中には保険対象外の部分が含まれている可能性があり、申請した請求書通りに保険給付費が支払われるということはまずありません。
健康保険団体連合会では、請求書をしっかりと精査し、保険対象として認めた部分に関して保険給付費を支払います。この点を考慮して、介護報酬ファクタリングでファクタリングの対象となるのは請求金額の8割程度となります。
提供しているファクタリング会社は限定される
医療系ファクタリングに関しては、提供しているファクタリング会社がそこまで多くないというのが現状です。多くのファクタリング会社が提供しているのは、債権買取型のファクタリングや保証型のファクタリングまで。
介護報酬ファクタリングは、まだ取り扱っているファクタリング会社がそう多くはありません。
そのため、どのファクタリング会社を利用するか吟味するというのが難しく、ある程度限られたファクタリング会社の中から、どのファクタリング会社を利用するか選ぶ必要があります。
介護報酬ファクタリングのまとめ
介護報酬ファクタリングとは、介護報酬における保険負担分に関して、健康保険団体連合会からの保険給付費をファクタリングするという契約方法です。
一般的に介護報酬に関する保険給付費は、申請から2ヶ月後の入金となりますが、介護報酬ファクタリングを利用することで、10日~2週間程度で現金を手にすることができるようになり、およそ1ヶ月半ほど早く現金を手にすることができるファクタリング契約となります。
介護報酬ファクタリングに関しては、取引先が健康保険団体連合会という公的機関であり、また3社間ファクタリングでもあることから、非常に安い手数料で契約が可能、また高い確率で審査に通過できるファクタリングサービスとなっています。
急に現金が必要になったケースなど、非常に利用しやすいサービスといえるでしょう。