「歯科医院を経営しているけど、個人事業主だからファクタリングの利用は難しい?」
「診療報酬ファクタリングというのは歯科医院でも利用できるの?」
一般的なファクタリングでは、売掛債権が譲渡の対象となるため、売掛債権をあまり持たない、特に医療機関は利用が難しくなります。
しかしそんな医療機関に特化した、診療報酬ファクタリングというサービスが存在し、この診療報酬ファクタリングは、個人事業主でも歯科医院でも利用が可能なファクタリングとなります。
では診療報酬ファクタリングとはどんな契約なのか?なぜ歯科医院でも利用可能なのか?このあたりを解説していきましょう。
ファクタリングは企業が資金確保のために活用
ファクタリングとは、企業が資金を確保するための資金調達法です。多くのファクタリング会社は企業・法人を顧客としており、個人事業主やフリーランスの方は顧客対象外となっています。
もちろんファクタリングする売掛債権の取引先が個人事業主やフリーランスというケースでも審査には通りにくく、なかなか利用しづらいのが現実です。
売掛債権を譲渡して売掛金を早期現金化
ファクタリングにはいろいろな契約方法がありますが、もっとも一般的な契約方法が、債権買取型のファクタリングです。
ファクタリングの利用を希望する企業が、手元にある売掛債権をファクタリング会社に持ち込みます。ファクタリング会社はその売掛債権に関する審査を行い、契約条件を決定。契約条件に問題がなければ契約となり、売掛債権がファクタリング会社に譲渡されます。
それと同時にファクタリング会社から、売掛金から手数料、諸経費を差し引いた金額が、利用企業に入金されます。
利用企業は売掛金を早期現金化することができるという契約です。
売掛債権のない業種は利用できない?
一般的なファクタリングの形を考えると、そもそも売掛債権を持たない企業や個人事業主は、ファクタリングを利用できないということになります。
例えば個人経営の小売店などの場合、顧客に商品を販売し、その場でその対価を受け取ります。商店街の八百屋や美容室などを想像してもらえれば分かりやすいでしょう。こうした業種の場合、掛け取引をしていませんので、基本的には売掛債権を持たないということになります。
同じく売掛債権を持たないのが歯科医院や病院など、医療関係の事業者です。しかし、医療関係の事業者に関しては、売掛債権ではなく、ほかの債権でファクタリングが利用可能となります。
歯科医院でも利用できる診療報酬ファクタリング
医療関係、特に歯科医院でも利用できるのが診療報酬ファクタリングです。歯科医院を始め、病院や介護事業者、調剤薬局などは、この診療報酬ファクタリングが利用可能です。
では診療報酬ファクタリングとはどのようなシステムなのか?そのあたりを簡単に紹介していきましょう。
診療報酬債権を早期現金化
歯科医院や病院といった医療機関では、患者を診察し、その診療報酬をその場で受け取ります。とはいえ、その場で受け取るのは、診療報酬のうち本人負担分となる部分のみです。
現状社会保険でも国民保険でも、医療費の本人負担額は3割です。つまり、歯科医院や病院などでは、診療報酬としてまずは3割分だけを受け取っているということになります。
残りの7割は保険からの支払いとなりますので、国民健康保険団体連合会など、健康保険団体連合会に請求を出し、後日受け取る形となります。つまり、診療というサービスを提供した代金の一部は、後日の支払いとなり、いわゆる掛け取引と同じ構図になるわけです。
こうした健康保険団体連合会に対する請求を診療報酬債権と呼び、この診療報酬債権がファクタリングの対象となります。
個人事業主でも利用可能
診療報酬ファクタリングのポイントとしては、個人事業主でも法人と同様のサービスの提供を受けることができるという点です。
大きな病院などは法人が経営していますが、街の歯科医院や、小さな病院に関しては原則個人が経営しており個人事業主です。最初に触れたとおり、一般的なファクタリングの場合、個人事業主が利用するにはハードルが高く、利用できても契約条件が厳しくなるのが一般的です。
しかし、診療報酬ファクタリングの場合、個人開業医の歯科医院でも、医療法人と同様の条件で利用可能。この点は大きな違いといえるでしょう。
歯科医院の診療報酬ファクタリングの特徴
歯科医院のような個人事業主の方でも、大手の医療法人と同様のサービスを受けることができるには、それなりの理由があります。その理由を知るためには、診療報酬ファクタリングの特徴を知る必要があります。
基本的には債権買取型のファクタリングと同じような流れでの利用となりますが、一部診療報酬ファクタリング特有のポイントがありますので、そのあたりを中心に紹介していきましょう。
原則3社間ファクタリング
債権買取型のファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。
2社間ファクタリングとは、ファクタリングの利用を希望する企業と、申し込みを受けたファクタリング会社の2社間で契約される契約方法です。
2社間ファクタリングの場合、利用企業の一存で申し込み・契約が可能なため、申し込みから契約までが非常に早く、現金が欲しいタイミングで即現金化ができるのが大きなメリット。一方手数料相場がやや高めになるのがデメリットとなります。
2社間ファクタリングの2社に加え、売掛先である取引先も含めた3社間で契約されるのが3社間ファクタリングです。
3社間ファクタリングの場合、取引先にも契約に参加してもらう必要があるため、現金化されるまでに多少の期間が必要になるのがデメリット。また、取引先にファクタリングの利用が知られ、後の取引に悪影響を及ぼす可能性があるのもデメリットとなります。
3社間ファクタリングのメリットは手数料相場の安さです。2社間ファクタリングの相場が10~30%に対し、3社間ファクタリングでは1~9%と言われていますので、この点は大きなメリットといえるでしょう。
歯科医院が利用する診療報酬ファクタリングは、原則3社間ファクタリングとなるため、手数料は安く抑えることができます。
なぜ3社間ファクタリングとなると言えば、取引先が健康保険団体連合会という公的な機関のためです。仮にファクタリングを利用したからといって、後の取引に悪影響が出ることはありませんし、健康保険団体連合会もファクタリングというものを理解しているため、3社間ファクタリングの契約もスムーズに進みます。
つまり3社間ファクタリングにおけるデメリットがほぼないのが診療報酬ファクタリングということになります。
手数料は安く審査も通りやすい
歯科医院が利用する診療報酬ファクタリングは、3社間ファクタリングとなりますので手数料を非常に安く抑えられます。加えて言えば、債務者が健康保険団体連合会という公的な機関となるため、支払いが遅れる、未回収になる可能性はほぼ0です。つまり売掛金の未回収リスクがほぼないため、かなり高い確率で審査に通るということになります。
個人事業主の場合、通常の売掛債権ではファクタリング契約が難しい、契約できても手数料が高いというのが普通ですが、同じ個人事業主でも歯科医院や病院の場合はファクタリングを利用しやすいといえるでしょう。
長期間契約が可能なケースも
一般的な債権買取型ファクタリングの場合、1つの債権ごとに契約を結ぶのが基本です。継続的に取引がある場合、長期間の契約というのも可能ですが、取引先が変わる、発注が減る、増えるケースも多いため、なかなか長期間契約というのは難しい部分があります。
一方歯科医院の診療報酬ファクタリングの場合、毎月必ず債権が発生します。さらに言えば取引先も健康保険団体連合会で同じ取引先となります。そのため長期的な契約も難しくないという特徴があります。
もちろん1回の診療報酬債権のみをファクタリングすることも可能ですし、1~2年といった長期間の契約も可能。一般的には長期契約を結ぶ方がより手数料はより安くなる傾向にあります。
診療報酬債権の額面金額通りでは契約できない
歯科医院の診療報酬ファクタリングの場合、診療報酬債権の額面金額通りで契約することはほぼできませんのでその点は注意が必要です。
診療報酬の請求は、歯科医院が提出した書類を参考に、健康保険団体連合会が精査し、保険の対象で間違いないと判断された分のみが支払われます。つまり額面金額以下の支払いになるケースがあるということです。
そのため歯科医院の申し込む診療報酬ファクタリングの場合、額面金額の80%程度がファクタリング対象になることが多くなります。
ファクタリング対象を超えた分は、健康保険団体連合会からの支払い後に差額が歯科医院に振り込まれますので、大きな損はしませんのでご安心ください。
ファクタリング・歯科のまとめ
ファクタリングを利用できるのは、企業や法人が中心であり、個人事業主やフリーランスでは利用が難しいというのが基本です。
しかし個人事業主が多い歯科医院が利用できる診療報酬ファクタリングに関しては、この基本から外れ、個人事業主である歯科医院でも、ほかの医療法人と同様のサービスを受けることが可能になります。
個人事業主のため急な出費が必要なライフイベントや、歯科医院の設備の見直しなど、現金が必要になるタイミングも多いかと思います。そんなタイミングで利用することで、非常に有利な条件で契約が望める、おすすめの資金調達法となります。