「廻し手形とファクタリングって何が違うの?」
「どっちを利用するのがお得?」
廻し手形もファクタリングも、売掛金を活用するという点では共通点のある方法です。しかし厳密に言えばその目的には差があり、どちらを利用するのがいいのかは利用する会社の状況次第ということができます。
では実際に廻し手形とファクタリングにはどのような違いがあるのか?この点に関して解説していきましょう。
廻し手形とは?
まずは、廻し手形とは何ぞや?という点から紹介しておきましょう。
手形には振出人という存在がいます。これは、金融機関に手形を振り出してもらった人ということになります。例えばある企業が100万円分の商品を取引先に納品し、取引先がその100万円を手形で支払うという場合、この取引先が振出人となります。
廻し手形とは、振出人以外の方が手形に裏書きを行った上で支払いに利用するという手形の使用方法です。
買掛金の支払いに手形を活用できる
上で紹介した例で考えてみましょう。ある企業が取引先に100万円分の商品を納品したとします。この企業は、取引先に対して100万円の売掛金を持っている状態です。
その売掛金を、取引先が手形で支払った場合、納品した企業は100万円分の手形を持っていることになります。
納品企業も商品を納品するためには、その商品を生産するための原材料を仕入れる必要があります。そのため仕入れ先に原材料を発注します。この原材料費の支払いに、取引先から売掛金として受け取った手形を活用するのが廻し手形です。
廻し手形を活用する場合は、まずは仕入れ先の了承が必要となります。支払いを手形で行う以上、その手形が不渡りを起こした場合、その回収に時間がかかってしまうため、仕入れ先が拒否した場合は、廻し手形を活用できません。
仕入れ先が廻し手形の活用を了承してくれたら、手元にある手形に裏書を行い、これを仕入れの費用として支払うことができるようになります。
不渡りになったら買い戻し必要あり
廻し手形の特徴として、万が一廻し手形として活用した手形が不渡りとなった場合、その手形を買い戻す必要があるという点があります。
廻し手形の場合、使用する方はその手形の振出人ではありません。そのため、振出人の状況次第では、予期せぬ不渡りという可能性が考えられます。
しかし手形に裏書してしまった以上、その手形が不渡りとなれば、当然のその責任は裏書した方が負うことになります。
廻し手形を活用する場合は、その手形の振出人の信用度などを自社でしっかりと判断する必要があるでしょう。
手形割引との違いは?
同じく手形の活用法としては、手形割引という方法があります。手形割引と廻し手形は何が違うのかを簡単に説明しておきます。
廻し手形は、手形自体を支払いに活用する方法です。一方手形割引は、手形を担保とした資金融資の方法となります。手形割引を利用すると現金が手元に入りますが、後に金利の支払いが必要になります。
廻し手形は手形自体を支払いに充てますので、現金こそ手に入りませんが、支払いの債務がなくなります。
現金を手にするための方法が手形割引で、債務を減らすために活用するのが廻し手形ということになります。
ファクタリングとは?
廻し手形とは、手形という形ではあるものの、売掛金を活用する方法です。同じく売掛金を活用する方法としては、ファクタリングという方法があります。
ではこのファクタリングとはどういう方法なのか?この点に関して簡単に解説しておきましょう。
売掛金の早期現金化でできる
ファクタリングとは手元にある売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金の入金期日前に現金を手にするという資金調達法のひとつです。
資金調達法にはいろいろな方法がありますが、そんな中でも貸金契約ではないというのが大きな特徴といえるでしょう。
金融機関からの資金融資や商工ローン、ビジネスローンなどはすべて貸金契約となりますので、当然返済の義務がありますし、金利の支払いも必須となります。一方ファクタリングは債権を譲渡して、その対価を受け取る契約ですので、返済の義務はないですし、金利の支払いも必要ありません。
また、貸金契約ではないので自社の信用情報にも影響を与えませんし、バランスシートのオフバランス化も叶いますので、第三者に対し健全な経営ができているという印象を与えることもできる資金調達法です。
デメリットとしては、手数料が必要な点が挙げられます。貸金契約の金利のようなものですが、手数料の方が比率が高い傾向にあり、この点がデメリットといえばデメリットとなるでしょう。
ノンリコース契約が基本
ファクタリングの特徴としては、ノンリコース契約が基本という点も挙げられます。
ノンリコース契約とは、いわゆる償還請求権のない契約。つまりファクタリングを利用した企業は、売掛金の未払いリスクを負わないという契約です。
ファクタリング契約においてファクタリングを利用する企業は、手数料を支払う代わりに、売掛金の早期現金化という希望を叶えます。ファクタリング会社は、売掛金の未払いリスクを負うものの、手数料という収益を受け取ります。
この関係性がファクタリングの基本のため、売掛金の未回収リスクはファクタリング会社にあり、利用した企業にはないという形となります。
廻し手形とファクタリングの違い
廻し手形とファクタリングは、どちらもまだ現金として手にしていない売掛金を活用するという点では同じですが、もちろんまったく違う資金の活用方法となります。
では具体的に何が違うかという点を解説していきましょう。
利用の目的が違う
廻し手形とファクタリングでは、そもそも利用の目的が違います。もちろん手元の現金に余裕を持たせるという点では同じですが、細かく見れば目的には違いがあります。
廻し手形は、受け取った手形を活用し、ほかの支払いに充てるという方法。必要経費の出費に現金を使用しないことが大きな目的ということになります。
一方ファクタリングは、手元にある売掛債権を現金化するのが目的で、その現金の使い道に関しては原則自由です。
細かな違いではありますが、廻し手形は「手元の現金が減ることを防ぐ」ための方法で、ファクタリングは「手元の現金を増やす」ことが目的の方法となります。
自社にとって今必要な方法はどちらなのかを冷静に判断し、どちらを利用するかを決める必要があります。
売掛金未回収リスクの有無
廻し手形とファクタリングの大きな違いとしては、売掛金の未回収に対するリスクの有無です。
廻し手形は手形に裏書を行うため、万が一手形が不渡りとなった場合、廻し手形を利用した会社がその責任を負うことになります。そのため手形を振り出した方の信用度が非常に重要であり、廻し手形を活用する企業としても、慎重になる必要があります。
一方ファクタリングはノンリコース契約が基本です。売掛金の未回収リスクはファクタリング会社が負うため、利用する企業は未回収のリスクを負う必要はありません。
もちろんそのためにファクタリングには契約前に審査があり、審査の結果未回収のリスクが高すぎると判断されれば、売掛債権を買い取ってもらうことはできなくなります。
取引先の了承の有無
廻し手形を活用する場合は、事前に取引先に申し入れ、廻し手形での支払いで問題ないかどうか了承を得る必要があります。取引先が廻し手形による支払いを拒否した場合は、廻し手形を利用できません。
ファクタリングに関しては契約方法によって取引先の了承が不要か必要かが決まります。
一般的に利用企業が多い2社間ファクタリングの場合、取引先の了承は一切不要。むしろ取引先に知られることなく利用できますので、自社の判断次第で利用できるということになります。
3社間ファクタリングを利用する場合は、取引先も契約に加わってもらう必要があるため、取引先の了承が必要になります。とはいえ、廻し手形とは違い、ファクタリングは取引先にとってはなんのリスクもない契約ですので、了承を得やすいというのが特徴として挙げられます。
ファクタリング・廻し手形のまとめ
ファクタリングも廻し手形も、売掛金を活用する方法であり、この点では共通点が大きい方法といえます。
ただしこの2つの方法では、目的が違います。ファクタリングは「手元の現金を増やすため」に行う方法で、廻し手形は「手元の現金を減らさないため」に行う方法となります。
また、売掛金の未回収リスクに関しても違いがあり、リスクを負うのが廻し手形、リスクがないのがファクタリングです。ただし、廻し手形には手数料がなく、ファクタリングには手数料が発生します。
どちらの方法がベストというわけではありませんので、自社の目的や状況に合わせて使い分けるといいでしょう。