ファクタリングと似た、売掛金に関するサービスとして、「取引信用保険」というものがあります。
資金調達法の一つであるファクタリングサービスと、売掛金に関する保険商品である取引信用保険には、共通する部分もあれば違う部分もあります。また、ファクタリングと言ってもいろいろな契約方法がありますので、契約方法によっては、取引信用保険に近い契約も存在します。
この記事では取引信用保険の特徴を紹介しつつ、ファクタリングとの共通点や相違点に関して解説していきます。
取引信用保険とは?
取引信用保険とは、大手保険会社が提供している金融商品です。商品を利用する目的は、売掛先である取引先の与信管理。特に売掛金が回収できなかった場合に関する保険です。
取引信用保険を利用する企業は、毎月決まった保険料を保険会社に支払います。売掛金が発生したものの、入金期日までに取引先が倒産するなど、売掛金が未回収となった場合に、保険金が支払われる形になります。
売掛金未回収のリスクを回避するための金融商品というのが取引信用保険の特徴です。
ファクタリングとは?
ファクタリングは近年利用する企業も増えている方法ですが、契約方法にはいろいろな形があります。
診療機関が利用できる診療報酬ファクタリングや、海外の取引先との取引において利用できる国際ファクタリング、さらにまだ発生していない売掛債権を対象とした将来債権ファクタリングなど、いろいろな種類がありますが、ここではその中から2つの契約方法に関して紹介していきます。
買取型ファクタリング
一般的にファクタリングと呼ばれるのが、この売掛債権買取型のファクタリングです。
買取型ファクタリングを利用する企業は、手元にある売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を入金期日前に現金化するという契約方法となります。
取引信用保険とはその目的に違いがある契約方法となります。
保証型ファクタリング
保証型ファクタリングとは、売掛債権に対し保険をかける契約方法です。
保証型ファクタリングを利用する企業は、手元にある売掛債権をファクタリング会社に持ち込みます。ファクタリング会社はその売掛債権に関して審査を行い、保険料を決定します。
利用企業はその保険料を支払うことで、保証型ファクタリングの契約は完了です。
取引先から期日までに問題なく売掛金が入金されれば、契約はそのまま完了。ただし、取引先が倒産するなど、売掛金が回収できなかった場合、売掛債権はファクタリング会社が買い取り、売掛金相当分が利用企業に支払われます。
その後、未回収となった売掛金は、ファクタリング会社が取り立てる形になります。
買取型ファクタリングと取引信用保険の違い
ここからは買取型ファクタリングと取引信用保険のサービス内容を比較し、何が違うのかという点に関して、さらに細かく解説していきます。
どちらも売掛金に関するサービスという点では共通点がありますが、そもそもの目的に大きな違いがありますので、そのあたりを中心に説明していきます。
買取型ファクタリングは資金調達が目的
買取型ファクタリングの契約は、ノンリコース契約が基本となります。分かりやすく言えば、売掛金が未回収となった場合のリスクはファクタリング会社が背負うという契約です。
買取型ファクタリングの大きな目的は、売掛金の早期現金化という点です。つまり保険というより資金調達という意味合いが強く、急に現金が必要になった場合など、現金を急ぎ入手するための方法となります。
取引信用保険は売掛金が回収できなかった場合の保険
取引信用保険は、契約したからと言って、すぐに現金が入金されるような商品ではありません。その効果が発揮されるのはあくまでも取引先が倒産するなど、売掛金が未回収になった場合のみです。
取引信用保険の大きな目的は売掛金の未回収リスクを回避すること。仮に未回収が起こらなければ、単に保険料を支払い続けるのみということになります。
買取型ファクタリングは売掛金の早期現金化、取引信用保険は与信管理となり、利用する目的に大きな違いがありますので覚えておきましょう。
保証型ファクタリングと取引信用保険の違い
続いて保証型ファクタリングと取引信用保険の違いに関して解説していきます。上の説明を読んでいただくと、一見同じようなサービスに見えるかもしれませんが、それぞれ特徴がありますので、細かい部分の違いを理解しておきましょう。
目的は同じ
この2つのサービスを利用する目的は同じです。どちらも売掛金の未回収リスクを回避するためのサービスですので、取引先の与信管理を目的とした契約であるという点に違いはなく、目的は同じとなります。
保証型ファクタリングは個別に契約できる
目的は同じでも、この2つのサービスには違いもあります。それが契約の対象となる部分です。
保証型ファクタリングは、個別の取引に関して契約をすることが可能です。
最近売掛金の入金が遅れ気味な取引先に対する売掛債権、新規で契約したものの、支払いに疑問がある売掛債権など、与信情報に問題がある取引のみを選んで契約することが可能です。
一方取引信用保険の場合は、こうした細かな設定はできません。取引信用保険で保険の対象となるのは、「すべての取引」、「売り上げ上位10社」、「合計10社以上」など、保険会社ごと、契約ごとに対象が決められており、個別の取引に関してひとつずつ契約するということができません。
もちろんそれだけ安心ではありますが、売掛金の入金に不安がない取引先に関しても保険契約をする必要が生じるため、保険の必要がない取引に関しても保険料を支払う必要が生じます。
取引信用保険の方が保険料が安い
保証型ファクタリングでは、売掛金に対して一定の手数料を契約時点で支払う必要があります。この手数料の部分が、保険における保険料となります。
保証型ファクタリングの手数料に関しては、ファクタリング会社ごとの独自設定となりますが、一般的な相場で言えば3~8%程度と言われています。
仮に4,800万円の売掛債権に対して手数料が5%であれば、240万円は手数料として事前に入金する必要があり、手にできる売掛金は4,560万円ということになります。
一方取引信用保険の場合、契約した時点で保険料を支払うのではなく、契約成立後毎月保険料を納付し続ける形になります。その保険料相場は1~3%。ファクタリングの手数料と比較するとやや安い傾向にあります。
また、取引信用保険は長期間の契約となるのが一般的ですので、この保険料も年利で設定されます。
仮にある企業が、年間売り上げ4,800万円分の売掛債権で取引信用保険に加入し、その保険料が2%だとします。
保険料は96万円となりますが、これは年間で合計96万円ということ。1ヶ月当たりの保険料は8万円となります。
保証型ファクタリングの手数料とは違い、取引信用保険の保険料は比較的安く設定されているということになります。
ファクタリング・取引信用保険・違いのまとめ
ファクタリングと取引信用保険は似たサービスではあるものの、利用する目的に違いがあります。資金調達のために利用するのがファクタリングであり、取引先の与信管理を強化し、売掛金の未回収リスクを回避するのが取引信用保険であるといえます。
とはいえ、ファクタリングの中にも、取引信用保険と目的を同じとする契約方法があります。
保証型ファクタリングは買取型ファクタリングとは違い、売掛金の未回収リスクに備える契約ですので、この点では取引信用保険に近い契約方法といえるでしょう。
保証型ファクタリングと取引信用保険には違いもあり、契約対象が個別か一括かという点や、保険料(手数料)相場が違うという点です。
この2つを比較した場合、どちらがおすすめというということはありません。どちらも同じ目的で利用するサービスですので、2つのサービスの違いや特徴をしっかりと理解し、利用する企業にとって、より有利になるように使い分けることが重要になります。