一般的にファクタリングで売掛債権をファクタリング会社に譲渡する場合は、請求書がその売掛債権を証明する書類として扱われます。
請求書があるということは、すでに商品やサービスを納品済みという状態。ファクタリングはこうした状態で利用できる資金調達法ということになります。
しかし、最近増えてきているのが請求書ではなく注文書を利用したファクタリングです。
そこでこの記事では、注文書を利用したファクタリングの特徴や、メリット・デメリットなどを紹介。どのようなタイミングで利用すべきかなどに関して解説していきたいと思います。
注文書ファクタリングとは?
一般的な商取引(掛け取引)の流れを確認しておきましょう。
・商品やサービスを提供する企業(以下:提供企業)から取引先に対して【見積書】が発行される
・見積書の内容に納得すれば、取引先から提供企業へ【注文書】が発行される
・提供企業は商品やサービスを納品する際、取引先に対して【納品書】を発行する
・納品された商品やサービスに問題がなければ、取引先から提供企業へ【受領書】が発行される
・受領書を受け取った提供企業は、取引先に対し見積書に沿った【請求書】を発行する
・取引先は請求書を確認し、売掛金を入金期日までに入金する
商取引は基本的にこのような流れで進みます。つまり商取引の契約において、序盤に発行されるのが注文書、終盤に発行されるのが請求書となります。
注文書ファクタリングとは、注文書を売掛債権の証明として提出し契約されるファクタリング契約であり、通常の請求書を利用したファクタリングとの比較すると早い段階で申し込めるファクタリングになります。
注文書を発行した時点で利用可能
商取引において、商品やサービスを提供する企業は、注文書を受け取ってから商品やサービスを準備し、納品を行います。つまり注文書ファクタリングは、商品やサービスを提供する前の段階で利用できるファクタリングということになります。
注文書が現金化されますので、仮に商品やサービスを提供するための資金が足りないというケースでも利用できるファクタリングということになります。
注文書ファクタリングのメリット
請求書による一般的なファクタリングよりも、早い段階で申し込みができる注文書ファクタリング。そんな注文書ファクタリングを利用するメリットに関して紹介していきましょう。
早い段階で売掛金の現金化が可能
注文書ファクタリングの大きなメリットは、現金化できるタイミングが早くなるという点。何しろ商品やサービスの納品前に、その商品やサービスに関する売掛金が現金化されるわけですから、現金化はかなり早いということになります。
見積書を発行し、注文書を受け取ったものの、商品やサービスを準備するための資金が足りないという際でも利用できます。
請求書ファクタリングは、納品後に利用できるファクタリングですので、現金化のタイミングが大きく違うということになります。
支払いサイトが長い債権も取引可能
一般的な請求書ファクタリングで取り扱う売掛債権の支払いサイトは、30~90日間程度です。支払いサイトがこの期間を超えるようですと、そもそも取り扱いがないというファクタリング会社もありますし、取り扱いはあるものの、審査が厳しくなるというファクタリング会社もあります。
しかし注文書ファクタリングの場合、注文書を受け取ってから、売掛金が入金されるまでの期間が長くなるため、支払いサイトの長い売掛債権も取引対象となります。
あくまでも一般論ですが、注文書ファクタリングでは、支払いサイトが最大180日という売掛債権もファクタリング対象となるケースがあります。
業界によっては、支払いサイトが長い債権が多いという業界もあるかと思いますので、こうした業界の方でも利用しやすいファクタリングといえるでしょう。
注文書ファクタリングのデメリット
注文書ファクタリングは取引先との契約の早い段階で利用できるファクタリングです。それだけ現金化のタイミングが早いというメリットがありますが、メリットがあるものにはデメリットもあるもの。
そんなデメリットに関して紹介していきましょう。
手数料相場が高め
まず大きなデメリットとして考えられるのが、手数料の高さです。注文書ファクタリングはファクタリング契約が結ばれてから、売掛金が入金されるまでの期間が長くなります。その分売掛金の未回収リスクは高くなると考えられます。
ファクタリング契約において、売掛金の未回収リスクは、利用した企業ではなくファクタリング会社が負う形となります。ファクタリング会社としては、よりリスクが大きい契約ということになりますので、その分手数料が高くなるわけです。
まだ注文書ファクタリング自体の件数が少ないため、手数料相場はハッキリしないところがありますが、20~30%程度と言われています。一般的な請求書ファクタリング(2社間ファクタリング)の手数料相場が10~30%程度と言われていますので、やや手数料は高めの設定となります。
2社間ファクタリングのみとなる
請求書ファクタリングでは利用企業とファクタリング会社の2社間で契約する2社間ファクタリングと、この2社に取引先も加えた3社間で契約する3社間ファクタリングがあります。
手数料相場は3社間ファクタリングの方が安く、より好条件での契約が可能となります。
しかし注文書ファクタリングでは、2社間ファクタリングしか取り扱いがないのが一般的です。2社間ファクタリングのため、取引先に知られることなく利用できるというメリットはありますが、どうしても手数料が高くなるというデメリットも発生してしまいます。
ファクタリングを利用してより多くの現金を手にしたいという企業にとっては、利用しにくい契約方法といえるでしょう。
審査はやや厳しくなる
注文書ファクタリングの特徴として、手数料相場が高くなると書きましたが、同時に懸念されるのが審査の厳しさです。
注文書が発行された時点では、まだ商品やサービスの提供が行われていないということになります。ファクタリング契約を結んだあとに、商品やサービスを納品し、その後請求書を発行し、その後にようやく売掛金が入金されます。
ファクタリング契約を結んでから売掛金入金までの期間が長いため、審査も慎重となる傾向にあります。
請求書ファクタリングと比較すると審査は厳しくなり、通りにくくなるという点は意識しておいた方がいいかもしれません。
対応しているファクタリング会社が少ない
ファクタリング会社が注文書ファクタリングを提供し始めたのは比較的最近です。
注文書ファクタリングとは、いわゆる「将来債権」のひとつであり、注文書ファクタリングも将来債権ファクタリングの一種ということになります。
将来債権がファクタリングの対象となったのは2020年以降。この2020年の民法改正により、注文書ファクタリングを含む将来債権はファクタリングの対象となりました。
取引できるようになってから日が浅いため、注文書ファクタリングに対応しているファクタリング会社はまだ限定的で、好きなファクタリング会社を選ぶというのが難しいというのがデメリットとなります。
ファクタリング・注文書のまとめ
一般的なファクタリングでは、請求書をもって売掛債権の証拠として契約を結ぶ形になります。しかし、近年では注文書の段階でもファクタリングは申し込めるようになり、注文書ファクタリングとして徐々に浸透し始めています。
注文書ファクタリングは、まだ商品やサービスの納品前の段階で利用できるファクタリングであり、売掛金をより早い時点で現金を手にできるファクタリングサービスです。
より早く現金化ができるというメリットがある反面、手数料相場が高かったり、取り扱っているファクタリング会社が少ないなどのデメリットもある方法となります。
利用するかどうかはその時の企業の経営状況次第。基本的には手数料相場が高い契約方法となりますので、どうしても急ぎ現金が欲しいときに利用する、最後の手段としてこういった契約方法があると知っておくのがおすすめです。