ファクタリングとは、売掛債権を譲渡することで、売掛金を入金期日前に現金化できる資金調達法です。
日本国内ではまだ市場規模はそこまで大きくないものの、世界を見るとファクタリングはすでに多く活用されており、市場規模も非常に大きくなっています。
この記事では2023年現在のファクタリングの市場規模や、今後の市場規模の動向、さらに今後の日本国内におけるファクタリング業界に関して、予想を交えつつ解説していきたいと思います。
2023年のファクタリングの市場規模
株式会社グローバルインフォメーションが公表した資料によると、2022年におけるファクタリングの世界的な市場規模は3兆3362億1000万米ドル(433兆7073億円/1ドル=130円)でした。
これが2023年には3兆6105億4000万米ドル(523兆5283億円/1ドル=145円)にまで成長し、2027年には4兆7992億1000万米ドル(719兆8815億円/1ドル=150円)へと、市場規模は年々拡大していくと予想されています。
特にファクタリングの市場規模が大きいのが、アメリカや中国など。GDPが大きい国ほど市場規模も大きくなる傾向にあります。
今後の日本国内の市場規模は?
世界的には今後の成長が続いていくと予想されるファクタリングの市場規模。では日本国内ではどのようになっていくのか。このあたりに関して予想を交えて解説していきましょう。
日本国内の市場規模を示す数字は見当たらない
2023年現在、ファクタリングの日本国内における市場規模を示した数値は見つかりませんでした。信用できる調査機関、政府発表の数値はないようです。
しかし、世界的にも市場規模が拡大しているということを考えると、日本国内におけるファクタリングの市場規模も、拡大傾向にあることは間違いありません。
そのことを裏付けるような理由に関していくつか紹介していきましょう。
新型コロナ・民法改正で拡大傾向に
日本国内でファクタリングの市場規模が拡大したきっかけとしては、近年では新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。
新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年~2022年にかけては、いろいろな業界が大きなダメージを受けました。海外からの原材料の輸入が難しくなったり、消費者の消費が冷え込んだのが大きな理由です。
収入が減った企業は、経営資金の確保が難しくなり、その中でファクタリングという資金調達法を利用し、急場を凌ぐといったケースが増えたからです。
さらに2020年の民法改正もファクタリングの市場規模拡大に大きな影響を与えています。2020年の民法改正の結果、特にファクタリングに大きな影響を与えたのが以下の2点です。
・譲渡禁止特約付きの売掛債権もファクタリングできるようになった
・将来債権もファクタリングの対象になった
譲渡禁止特約付きの売掛債権とは、取引先と契約をする際、売掛債権の譲渡を禁止する特約をつけた債権です。この民法改正までは、こうした特約付きの売掛債権に関してはファクタリングでの譲渡も禁止されているケースが多かったのが事実です。
ファクタリングしたとしても、後に取引先と特約に関する違反であると問題になり、ファクタリング会社としても売掛金の回収が難しくなるということで、取引を嫌う傾向がありました。
しかし2020年の民法改正で、こうした債権もファクタリングに関しては認められるとされてから、ファクタリングで利用できる債権が増え、ファクタリングを利用する企業が増加しています。
さらにポイントとなるのが将来債権の扱いです。将来債権とは、現状存在しない債権ながら、将来的に発生するであろう債権のことで、こうした債権もファクタリングできるようになりました。
同じ取引先と、定期的にかつ継続的に債権が発生している状況であり、その状況を確認することができればファクタリングを申し込むことができるようになりました。
ファクタリングに関しては、中小企業庁や経済産業省なども公式に利用を推進しており、こうした動きに合わせて、よりファクタリングは利用しやすい環境になりつつあります。
今後もこの傾向が続いていけば、よりファクタリングは利用しやすくなり、市場規模はより拡大していくと予想されます。
今後ファクタリングはどうなる?
世界的にも日本国内でも、ファクタリングの市場規模は今後も拡大していくことが予想されています。では、日本国内ではファクタリングはどのように成長していくでしょうか。
日本国内でも市場規模は拡大が予想される
上でも触れたとおり、日本国内では政府機関がファクタリングの利用を推進し、また民法改正などでファクタリングを利用しやすい環境も整いつつあります。そのため、今後も市場規模は拡大していくことが予想されます。
ファクタリング会社は増加傾向
ファクタリングの市場規模が拡大するということは、当然ですがファクタリング会社の数も増えていくことになります。現状日本国内では、特に都市部を中心にファクタリング会社は増加傾向にありますが、これからは全国的にその数が増加していくでしょう。
その数の増加を後押しするのが、ファクタリングのオンライン化です。現状でも申し込みから契約まですべてオンラインで完結できるネット完結のファクタリング会社は増えており、今後はこうしたネット完結型のファクタリング会社が増えていくことが予想されます。
業界特化型のファクタリング会社の増加も
さらにファクタリング会社が増えていくと始まることが予想されるのは、業界特化型のファクタリング会社です。
ファクタリングでは、契約を前に審査が行われます。この審査は、特に取引先の信用情報などが重視されますが、その取引先の業種に詳しいファクタリング会社の方が、より正確に審査が行えるということになります。
新しいファクタリング会社として、顧客を惹きつけるために特徴を持つ必要があるため、こうした業界に特化したファクタリング会社が増えていくことが予想されます。
市場規模拡大で懸念されるポイント
ファクタリングの市場規模が拡大されていくのは、これからファクタリングの利用を考えている方にとってもメリットが大きいといえます。とはいえ、市場規模が拡大されていくことで懸念されるポイントがないわけではありません。
そんな懸念点に関してもいくつか紹介しておきましょう。
悪徳業者の増加が予想される
大きな懸念ポイントとしては、悪徳業者の存在を意識しておく必要があります。
日本国内においては、ファクタリングの市場規模拡大に対して法整備が追いついていないという現状があります。例えば同じ資金調達法である資金融資や商工ローン、手形割引などはすべて貸金契約となり、貸金契約には貸金業法という専門の法律があります。
貸金業者は貸金業法に則って営業する必要があり、開業にも貸金業者としての登録が必要です。そのため悪徳業者が入り込みにくい環境が整っています。
ファクタリングにはこうした専門の法律がないため、開業時の登録や免許取得が不要であり、悪徳業者が入り込みやすい状況です。
悪徳業者はファクタリング契約に見せかけ、暴利の貸金契約を結んだり、厳しい取り立てを行うなど、企業経営に大きなダメージを与える可能性があります。
こうした悪徳業者が増えることは、市場規模拡大における懸念点といえるでしょう。
法規制が厳しくなる可能性も
ファクタリングを利用する企業が増えれば、当然ですがファクタリング契約におけるトラブルも増えることになります。また、上記のように悪徳業者が増えるようになれば、トラブルはさらに多くなることが予想されます。
ファクタリング契約におけるトラブルが多発すれば、政府としても黙ってみていることはできません。トラブルの発生を防ぐために、法律の整備が進んでいくことが予想されます。
法整備の状況によっては、新規でファクタリングの利用がしにくくなる可能性があるのも、懸念すべき点といえるでしょう。
ファクタリング・市場規模のまとめ
ファクタリングは1970年代に日本国内に入ってきたサービスと言われています。しかし当時の日本では手形取引が主流であり、ファクタリングの市場規模はあまり大きくはなりませんでした。
90年代序盤のバブル崩壊後、手形取引の数が減り始め、このころからファクタリングという資金調達法が注目され始め、2000年以降に一気に拡大していくことになります。
企業の資金調達法としてはまだ新しい方法であるファクタリングの市場規模は、今後も拡大していくことが予想されます。今後多くの企業が利用する資金調達法となることが予想されますので、今の内にファクタリングの仕組みや懸念点などをしっかりと理解しておきましょう。