売掛債権を二重譲渡するとどうなるのか?
売掛債権は目に見えない資産のため、取り扱いが難しい資産といえます。そのため二重譲渡をする、もしくはしてしまうというケースは考えられます。
最初にハッキリしておくと、売掛債権の二重譲渡は犯罪行為ですので、決して行わないようにしましょう。
では、ファクタリング契約において債権の二重譲渡をするとどうなるのか?しないためにはどうすればいいのか?二重譲渡が発生するのはどのようなケースかなどを考えてみたいと思います。
債権の二重譲渡とは?
債権の二重譲渡とは、ひとつの売掛債権を複数の第三者に譲渡する行為です。仮にその第三者が、ファクタリング会社の場合、複数のファクタリング会社から売掛金の早期現金化をしてもらえるということになります。
してもらえるといっても二重譲渡は犯罪です。
売掛債権を二重譲渡するということは、すでに第三者に譲渡した売掛債権をほかの第三者に譲渡するということです。とはいえ最初の譲渡契約で、その売掛債権の所有権は移動していますので、結果としては存在しない(所有権のない)売掛債権を譲渡して対価を得るという形になりますので、当然犯罪行為となるわけです。
売掛債権という資産は、現物資産と違い、実物があるわけではありません。目で見て確認できる資産ではないため、場合によっては二重譲渡ということが発生するということになります。
債権の二重譲渡が発生するケース
債権の二重譲渡が発生するケースは大きく分けて2つです。
・ファクタリングを利用する企業が意図的に二重譲渡する
・意図的ではなく二重譲渡になってしまう
それぞれのケースに関して考えてみます。
二重譲渡と承知でファクタリング会社に申し込むケース
二重譲渡と承知の上でファクタリングに申し込むのは非常に悪質なケースと考えられます。
なぜそうなるのかと言えば、「資金繰りが厳しく、とにかく現金が多く欲しい」といった思考から二重譲渡を承知でファクタリングを申し込むということになるのでしょう。
もちろんこれは犯罪行為。しかも犯罪と知った上で行っていると見做されますので、二重譲渡が発生した場合、告訴され刑事罰を受ける形になるでしょう。
多くの場合は禁固刑が科される犯罪となりますので、債権の二重譲渡となるファクタリング契約は結ばないようにしてください。
利用する企業のミスで二重譲渡になってしまうケースも
ファクタリングを利用する企業に二重譲渡をするつもりがなくても、結果的に二重譲渡になってしまうケースも考えられます。
多くの企業では、常に複数の売掛債権を持っているかと思います。この売掛債権の管理が杜撰な場合、すでにほかのファクタリング会社と契約している売掛債権を、まだファクタリング未契約と勘違いしてほかのファクタリング会社に持ち込んでしまう可能性があります。
仮に意図的ではなくても、債権の二重譲渡でファクタリング契約を結んでしまうと、犯罪となる可能性がありますのでご注意ください。
ファクタリングで二重譲渡が発生する条件
ファクタリングでは、売掛債権の二重譲渡で契約してしまうケースがあります。ただし、そうなってしまうには、ある程度条件が揃っている必要があります。
売掛債権の二重譲渡が発生する、ファクタリング契約の条件に関して紹介していきます。もしこの条件でのファクタリング契約を考えている方は、債権の二重譲渡にならないよう、十分注意して申し込みましょう。
2社間ファクタリングである
ファクタリング契約には2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。
2社間ファクタリングは、ファクタリングを利用する企業と、ファクタリング会社の間で結ばれるファクタリング契約、3社間ファクタリングは上記の2社に加えて、売掛先である取引先も含めた3社の間で結ばれるファクタリング契約です。
3社間ファクタリングでは、売掛先である取引先が一緒に契約をしますので、債権の二重登記になるケースは契約の前に判明します。そのため3社間ファクタリングでは、二重譲渡はまず発生しません。
2社間ファクタリングの場合、取引先に知られることなく契約ができるため、場合によっては二重譲渡での契約が可能ということになります。
債権譲渡登記が不要な契約である
もうひとつ二重譲渡が発生する条件としては、債権譲渡登記が不要な契約、また留保という形で契約できるファクタリング契約です。
ファクタリング契約、特に2社間ファクタリングの契約においては、多くの場合債権譲渡登記が必要です。債権譲渡登記とは、債権が誰から誰に譲渡されたかを、登記所に登記する行為です。
そもそもこの債権譲渡登記とは、債権の二重登記を防ぐために行われます。すでに債権譲渡登記を行っている債権の場合、債権の所有権が利用企業にないことが判明しますので、二重譲渡での契約は行えないということになります。
債権譲渡登記の留保とは、契約後債権譲渡登記を行うものの、契約の時点では登記を行わないという契約。契約後すぐに現金が振り込まれると考えると、債権譲渡登記を行う前に現金が利用企業に振り込まれますので、二重譲渡が可能となるケースもあります。
ファクタリングで二重譲渡をするとどうなる?
ファクタリング契約で債権の二重登記をしてしまうとどうなるのか。この点に関しても紹介しておきましょう。
損害賠償請求をされる可能性がある
まずは、ファクタリング会社から損害賠償請求が行われるケースが考えられます。
すでにファクタリング会社から利用企業に入金が行われている場合、ファクタリング会社としては大きな損失を被る形になります。
こうなるとファクタリング会社としては、まずは契約は無効であることを主張し、また損害賠償請求を利用企業に行うことになります。
損害賠償請求を受けた利用企業は、速やかに指定された金額をファクタリング会社に支払う必要が生じます。
詐欺罪・横領罪などで告訴される
損害賠償請求に応じることで、それ以上の事態には発展しない可能性もありますが、利用企業が意図的に二重譲渡をしたとなれば、それ以上の制裁が行われるでしょう。
自社が所有権を持っていない売掛債権で、ファクタリング契約を行った場合、そもそも詐欺罪が成立する可能性があります。また、譲渡したはずの売掛債権の売掛金が、ファクタリング会社に入金されないという場合、横領罪という可能性もあるでしょう。
こうした刑事罰で告訴された場合、当然ですが経営者は逮捕となり、二重譲渡と知った上でファクタリングに申し込んだとなると、有罪判決が下される可能性が高くなります。
実刑判決になるかどうかはその取引の内容次第ではありますが、仮に執行猶予がついたとしても、有罪判決になるのはほぼ確定的です。
経営者が有罪判決を受ければ、当然その企業と取引をする取引先は減りますし、会社が経営を続けていくのは難しくなるかと思います。
売掛債権の二重譲渡をすることで、最終的に自社の倒産といったケースを引き起こしかねませんので、決して二重譲渡が起こらないように注意しましょう。
ファクタリング・二重譲渡のまとめ
ファクタリング契約において、売掛債権の二重譲渡という事態が発生する可能性は否定できません。ファクタリングを利用する企業が意図的に二重譲渡をするのはもちろん、売掛債権の管理が杜撰で、結果的に二重譲渡になってしまうケースでも、最悪の事態に発展しかねません。
二重譲渡はファクタリング会社としても避けたい事態です。そのためファクタリングの審査では売掛債権の譲渡登記がされていないか照会を行ったり、持ち込まれた売掛債権が実在するかどうかをチェックするわけです。
売掛債権の二重譲渡は、例え意図的ではなくても起こすべきではありません。ファクタリングを利用する場合は、まずは持ち込む債権の所有権が確実に自社にあるかどうかを確認の上、申し込むようにしましょう。