請求書を現金化できるサービスがあるということは知っていても、その内容を詳しく知らないという方も多いかと思います。
請求書現金化サービスは、日本国内では比較的新しいサービスですので、まだそこまで広く浸透していないというのが現状です。
この記事ではそんな請求書現金化サービスの概要や基本的な流れ、知っておくべきポイントなどを紹介していきます。
サービスの内容をきちんと理解し、上手に利用できるように知識をつけておきましょう。
請求書を現金化するサービスとは?
請求書現金化のサービスとは、請求書発行から入金までの期間に、どうしても現金が必要になった場合などに利用できるサービスです。
サービスを提供する業者が、企業から請求書を買い上げ、売掛金が入金されるよりも早く企業に売掛金相当の現金を入金するというもの。
請求書現金化サービスを利用した企業は、売掛金を現金化できる代わりに一定の手数料を支払います。
業者は手数料を手にする代わりに、売掛金が未回収となるリスクを背負います。
これが、請求書現金化サービスの大まかな概要ということになります。
請求書現金化サービスの流れ
請求書現金化のサービスには2つの契約の形があります。
請求書現金化を希望する企業と、買い取る業者による2社間で結ばれる2社間契約と、この2社に加え、請求書の発行先である取引先も含めた3社間で結ばれる3社間契約です。
2社間契約は取引先に相談せずに話を進められるため現金化のスピードが速く、しかも取引先に、請求書現金化サービスを利用したことを知られる可能性が少ないというメリットがありますが、その分手数料が高めというデメリットがあります。
3社間契約は取引先も含めた契約のため、手数料が2社間契約よりも安い傾向にあるというメリットがありますが、取引先にも契約に参加してもらうため、現金化までに時間がかかるというデメリットがあります。
どちらにもそれぞれ特徴はありますが、現状利用されるケースが多いのは2社間契約です。
そこで2社間契約をベースとして、請求書現金化サービス利用の流れを紹介していきましょう。
現金化したい請求書を持ち込む
まずは現金化業者に請求書を持ち込みます。
現金化業者の窓口に請求書や必要書類などを持って訪問する形が一般的ですが、最近では電話での申し込み受付やオンライン申し込みなどに対応している業者も増えています。
いずれかの方法でまずは請求書を持ち込み、事前相談という形で業者の話を聞きましょう。
現金化に関する審査が行われる
請求書現金化のサービスにおいても審査は必ず行われます。
ただし、この審査は金融機関による資金融資の審査と比較すれば非常に緩く、比較的通りやすい審査となっています。
請求書現金化の審査が緩い理由は、持ち込んだ請求書の売掛金が支払われるかどうかのみに注目して審査が行われるからです。
資金融資の審査の場合、融資した資金を長期間にわたって返済できるかどうかが審査されます。そのため、中長期的な視点で申し込んだ企業の業績がどうなるかを審査する必要があります。
融資審査においては、事業計画や返済計画などの提出が必要であり、こうした書面の内容以外にも、申し込んだ企業が属する業界の将来性なども審査対象となるため、審査には時間がかかりますし厳しくもなります。
一方請求書現金化サービスの場合、審査されるのはその請求書に関する取引のみが対象です。そのため主に注目されるのは、申し込んだ企業の状況よりも、取引先企業の信用情報や財務状況となります。
取引先が売掛金を入金するかどうかという点に大きなポイントがある審査ですので、申し込んだ企業がたとえ赤字経営の状態であっても、審査に通過する可能性はあるということになります。
請求書現金化の契約を交わす
審査の結果、請求書の現金化が可能と判断されると、その契約条件が提示されます。
ここで決まるのが手数料や契約の諸条件です。
もちろん契約ですので、すべての条件に関してしっかりと把握することが重要になりますが、特に注目したいのが「手数料」と「掛け目」です。
手数料は現金化の対象金額に対して%で提示されますので、この手数料がどの程度になるのかは必ずチェックしましょう。
あくまでも相場となりますが、2社間契約で10~30%、3社間契約で1~9%程度が多いようです。この相場からかけ離れていないか、高すぎないかなどをチェックしましょう。
掛け目とは、請求書の額面金額の何%が現金化の対象となるかを示した数字です。仮に額面金額100万円の請求書で、掛け目が80%であれば、現金化の対象となるのは80万円ということになります。この80万円から手数料と諸経費が差し引かれた金額が現金化されるという形になります。
また、契約の諸条件では、債権譲渡登記や債権譲渡通知、償還請求権の有無を確認しましょう。
債権譲渡登記は2社間契約の場合、条件に含まれることが多い条件です。債権が業者に譲渡されたことを登記所に登記することで、債権の二重譲渡を防ぐための条件となります。
債権譲渡通知は、債権が譲渡されたことを取引先に通達するというもの。取引先に知られたくない方は契約に盛り込まれているかどうかを入念にチェックする必要があります。
最後に償還請求権ですが、この条件を設定している契約書にはサインしないことをおすすめします。
償還請求権とは、もし売掛金が入金されなかった場合、利用した企業が請求書を買い戻さなければいけないという契約。つまり売掛金が支払われなかった場合、利用した企業がそのリスクを負うことになる条件です。
請求書現金化サービスとは、業者が、売掛金未払いのリスクを背負う代わりに手数料を得るという契約です。償還請求権がある契約の場合、未払いリスクは利用企業に残ってしまうため、そもそもの前提が崩れることになります。
過去の裁判記録を見ても、償還請求権ありの契約は請求書買取の契約ではなく、請求書を担保とした貸金契約であるとした判例もあります。
契約書に償還請求権を付随する業者は悪徳業者の可能性が高いため、契約はしない方が良いでしょう。
請求書が現金化される
契約が締結されれば売掛金が現金化され、業者から入金されます。
請求書現金化サービスの場合、申し込みから2~3日程度で入金されるのが一般的であり、遅くても1週間程度での入金が見込めます。
近年では現金化のスピードも上がっており、最短で申し込み当日に入金可能という即日対応のサービスを提供する業者も増えています。
この現金化スピードの速さが請求書現金化サービスの大きな特徴といえるでしょう。
取引先から入金があったら業者に入金を行う
請求書現金化サービスでは、請求書の所有者が、利用企業から業者に変更されます。
しかし2社間契約の場合、変更されるのはその権利であり、取引先との契約内容に変更はありません。
つまり、売掛金に関しては、取引先との契約通り、利用した企業の口座に振り込まれる形になります。
請求書現金化サービスを利用した企業は、売掛金の入金があったら速やかに業者に売掛金を入金する必要があります。
この入金が完了した時点で、請求書現金化の契約は完了となります。
請求書現金化サービスのポイント
現金化のスピードが速く、審査も緩い請求書現金化サービス。
ほかにもいくつか注目すべきポイントがありますので、紹介していきましょう。
請求書現金化は借り入れ契約ではない
契約の流れを見ていただいてもわかる通り、請求書現金化のサービスとは、請求書を業者に売却し、売掛金を早期現金化するサービスです。
契約としては「売掛債権譲渡契約」となり、貸金契約とはなりません。
貸金契約ではないということは、利用した企業の借入金が増えることはなく、信用情報が悪化することはないということになります。
また、請求書現金化サービスを利用することで、利用した企業のバランスシートもスリム化され、健全に企業活動が行われているという印象を他社や金融機関に与えることも可能です。
後の新規取引や資金融資審査でも、有利になる可能性が高くなるという特徴があります。
個人事業主やフリーランスでも利用できる業者もある
ここまでは企業が利用するという形で紹介してきましたが、請求書現金化サービスを利用できるのは企業だけではありません。
個人事業主の方やフリーランスとして活動している方でも、手元にある請求書を現金化できるサービスはあります。
ただし、サービスを提供する業者は、自社が取り扱う請求書の上限金額や下限金額を設定しているケースや、個人事業主やフリーランスには対応していないとしているケースがあります。
個人事業主やフリーランスの方は、対応している業者を探して申し込むようにしましょう。
請求書の現金化についてのまとめ
請求書現金化サービスは近年利用する企業が増えている、新しい資金調達の形です。
これまで資金調達となると、金融機関からの資金融資などが中心でしたが、こうした融資よりも審査が緩く、しかも現金化のスピードが速いということもあり、急な支出があった場合に利用されているサービスです。
請求書現金化サービスに関しては、手数料を支払うというデメリットがありますので、過度な利用は問題となる可能性がありますが、上手に利用すれば企業経営を健全化することもできる方法ですので、サービスの内容や仕組みをよく理解し、上手に活用できるようにしましょう。