売掛金を早めに現金化できるファクタリングは便利です。そのため、ファクタリングを行う会社や個人が増えてきました。
そんなファクタリングを考える際は消費税の問題が気になります。この記事では、ファクタリングに消費税がかからないことや、場合によってはかかることについてお伝えします。
ファクタリングを考える前に知っておきたい消費税のしくみ
ファクタリングに消費税がかかるか否かを知る前に、まずは消費税のしくみを知っておきましょう。ここでは、以下のことについて説明します。
・消費税は間接税の一種
・消費税の流れ
このように、ファクタリングに消費税がかからない理由を知る前に、消費税とはどんな税金であるか理解しておくと今後のファクタリング取引の参考になります。
消費税は間接税の一種
消費税は間接税の一種です。まずは間接税とはどのような税金なのか理解しておくことが大事です。
消費税のように商品やサービスにかかる税金は間接税と呼ばれます。負担するのは消費者で税金を納めるのは事業者になるからです。
消費税がかかる取引は以下です。
・国内で行われる取引
・事業者が行う事業上の取引
・対価が発生する取引
・資産の譲渡、貸付、役務の提供になる取引
消費税の流れ
ここでは消費税の流れを説明します。
消費税は以下の流れで課税され、納付されていきます。家具を例にしてみます。
1 原材料の木材を収穫
売上30万円
消費税3万円
↓
納付税額3万円
2 工場で家具に加工
売上50万円
消費税5万円
仕入れ30万円
消費税3万円
↓
納付税額
売上の消費税-仕入れの消費税=2万円
3 卸業者
売上70万円
消費税7万円
仕入れ30万円
消費税3万円
↓
納付税額
売上の消費税-仕入れの消費税=4万円
4 小売業者
売上100万円
消費税10万円
仕入れ70万円
消費税7万円
↓
納付税額
売上の消費税-仕入れの消費税=3万円
5 消費者Aさん
10万円の箪笥を買い上げ
消費税1万円
↓
納付税額1万円
このようにして、消費税は納付されていきます。
ファクタリングに消費税はかからない理由
売掛金を現金化するファクタリングには、消費税がかかりません。ここでは、その理由について説明しましょう。
・非課税取引にあたるため
・手形の割引料と似た仕組みのため手数料に消費税はかからない
こうした理由を踏まえて、ファクタリングに消費税がかからない理由を理解しておくと、取引の際に役立ちます。
非課税取引にあたるため
ファクタリングに消費税がかからないのは、非課税取引にあたるためです。
国税庁で定めている非課税取引の一つに「有価証券などの譲渡」が存在します。その内容として国債、株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などの譲渡を挙げています。
ファクタリングはこの金銭債権の譲渡に当たると考えられます。つまり、金銭債権は売掛債権と捉えられるでしょう。
手形の割引料と似た仕組みのため手数料には消費税がかからない
ファクタリングに消費税がかからない理由として、手形の割引料と似た仕組みであることが考えられます。そのため、ファクタリングの手数料にも消費税はかかりません。
国税庁の公式ホームページによると、「預金や貸付金の利子など」に関して以下の内容が記されています。
・消費税はサービスの流れで消費に負担を求める税金なので、預金や貸付金の利子は非課税
そして、非課税となる金融取引の中にあるのが手形の割引料です。手形割引は売掛金と同じように、支払期日の前に銀行や手形割引業者に譲渡して現金化する資金調達方法です。
手形の買取側と位置づけられる銀行や業者は、手形の金額から割引料を引いた金額を手形の持ち主に渡します。その際、割引料に消費税はかかりません。
ファクタリング取引も上記と似た仕組みです。そのため、割引料にあたるファクタリング取引の手数料に消費税はかからないと考えられます。
ファクタリング取引で消費税がかかる場合
上記のようにファクタリング取引には消費税がかかりませんが、費用の一部としてかかる場合、ありえない消費税がかかるとする悪徳商法の場合があります。
・債権譲渡登記の費用の一部
・悪徳商法の可能性
これらについても正しく理解しておきましょう。そうすることで、正しい取引ができ、払わなくても良いものを払ってしまうトラブルを避けられます。
債権譲渡登記の費用の一部
ファクタリング取引おける債権譲渡登記にかかる費用の一部に消費税がかかります。以下で詳しく説明しましょう。
ファクタリングで、「債権譲渡登記」は2社間ファクタリングの場合に必要となることがあります。その場合、費用の一部に消費税がかかります。
そもそもファクタリングには、2種類の契約方法があります。1つめは利用側とファクタリング会社の2者で行う2社間ファクタリングです。2つめは利用側、ファクタリング会社、利用側の取引先の2者による手法が3社間ファクタリングです。
この2つの契約方法を比べると2社間ファクタリングの方がファクタリング会社にとっては、不安の要素が強いものです。利用者が売掛債権を売った現金を持ち逃げしてしまう可能性が考えられるからです。
そのようなことにならないためにも、またファクタリング会社が買い取った債権を安全に所有するためにも、ファクタリング会社は債権譲渡登記を行う場合があります。
債権譲渡登記により、ファクタリング会社は債権の所有を主張できるようになります。
ただし、債権譲渡登記を行うには、登記費用が発生し、それには消費税がかかります。かかる費用は以下です。
・登録免許税:1件7,500円か15,000円
・司法書士の報酬:5~10万円くらい
これらの費用は、消費税も含めて利用者側が負担することになっています。
悪徳商法の可能性
ファクタリングに消費税がかかるのは、悪徳商法の可能性も考えられます。
上記で説明した通り、ファクタリングに消費税はかかりません。それをかかると主張するファクタリング会社があれば、悪徳商法の会社かもしれません。下記で事例紹介しましょう。
1 イラストレーターのKさん
個人事業主のイラストレーターKさんは、あるファクタリング会社と契約しました。その時、ファクタリング会社の社員は以下のことを告げました。
「ファクタリングには、手数料だけでなく、消費税もかかります。なので、お支払いする売掛金からその分を引かせて頂きます。」
売掛金から手数料と消費税も引かれてしまうと、Kさんの手元にはいくらも残りません。どこかおかしいと感じたKさんは、いろいろと調べ、ファクタリングに消費税がかからないことを知りました。そのため、早い段階で契約を破棄できたのです。
2 小さな部品工場を営むYさん
小さな部品工場を営むYさんは、資金繰りに困ってしまいました。しかし、これ以上借金を増やしたくなかったので、ファクタリングを行うことにしました。
ファクタリングに手数料がかかることは理解していましたが、消費税に関しては考えたことがありませんでした。そこで、なるべく手数料の安い会社を探したところ、A社とB社が見つかったのです。
相見積もりを取って、手頃な方に決めようとしたところ、A社にはかからない消費税がB社にかかることが判明しました。「ファクタリングに消費税はかかるのか?」と不思議に思ったYさん詳しく調べてみました。
その結果、ファクタリングに消費税がかからないことがわかり、B社との契約は考えないことにしたのです。
3 ラーメン屋のEさん
Eさんのお店は、コロナをきっかけに売上が落ちてしまいました。しかし、コロナの制限がなくなり、客足も戻ってきたので、何とか継続できそうな兆しが見えてきたのです。
そんな時、家の都合でしばらく店を閉めなければならなくなり、また売上が厳しいことになりました。しかし、今回は店と並行して行っているオンラインショップの売上で何とかなりそうです。
Eさんはカードファクタリングで資金を調達しようと考えました。手数料の安いファクタリング会社を探して申し込んだものの消費税がかかると言われたのです。
ファクタリングに消費税がかかると思っていなかったEさんは、他のファクタリング会社も調べてみました。その結果、ファクタリングに消費税がかかることはないとわかったのです。
もちろん、消費税がかかると言われた会社とは契約しませんでした。
これらの事例からもわかりますように、ファクタリングに消費税がかからないことを理解しておけば、悪徳商法に引っかからずに済みます。お気を付けください。
ファクタリングと消費税についてのまとめ
ファクタリングに消費税はかかりません。ファクタリングは非課税取引の一つになっているからです。
また、ファクタリングの手数料にも消費税はかかりません。ファクタリングの仕組みは、非課税になっている手形の割引料と似ています。そのため、手形の手数料にあたるファクタリングの手数料も非課税になると解釈できます。
ただし、2社間ファクタリングにおいて、債権譲渡登記が必要な場合は、司法書士の報酬などに消費税がかかります。
こうしたことを踏まえて、ファクタリングを行うようにしてください。仮に消費税がかかるというファクタリング会社があれば、それは悪徳商法の可能性があります。警察や消費者センターなどに相談し、取引は至急中止しましょう。