ファクタリングを行う企業が増えていますが、それに伴って会計処理のやり方に悩む経理担当者もいらっしゃるでしょう。
ファクタリングは、政府に奨励されている資金調達法です。海外で行われることが多いですが、日本ではそれほど多くの企業は取り入れていませんでした。
しかし、借金にはならずに資金繰りを調整できるので、負債を抱えたくない企業や個人事業主などが、取り入れるようになってきました。
そこで、この記事ではファクタリングの会計処理について、どのようなことで悩むものか、ファクタリングの種類別の会計処理のやり方、ファクタリングの会計処理の注意点をお伝えします。
ファクタリングの会計処理は悩みどころ
ファクタリングは比較的新しい手法なので、会計処理となるとわかりにくいものです。従来の方法で行って良いものか、頭を抱えている会計処理担当者も多いのではないでしょうか。
ここでは、ファクタリングの会計処理がいかに難しいか紹介します。仕訳や勘定科目の難しさについて、取り上げてみました。
会計処理における仕訳が難しい
ファクタリングの会計処理では、仕訳が難しいと思うケーズが多いのではないでしょうか。
仕訳は税務申告に必要な作業です。取引を勘定科目に分けて、借方と貸方に分類します。一般的な仕訳のルールは、増えているならば借方、減っている場合は貸方です。
しかし、ファクタリングの場合は、一般的な資産や商品の取引とは異なり、売掛債権による取引です。そんな場合は、どのようにすればよいのか、会計処理担当者は迷うものです。
ただ、ファクタリングの会計処理に伴う仕訳のタイミングは明らかです。売掛金が発生した時点、ファクタリングの契約を交わした時点、売掛金の入金があった時点、売掛金をファクタリング会社に入金する時点と考えられます。
ファクタリングの勘定科目の設定は悩むところ
上記で説明しましたように、ファクタリング利用の仕訳の前に勘定科目に分けます。ファクタリングは、従来の取引とは異なるタイプなので、会計処理担当者にとっては、悩むところです。
会計処理における勘定科目は、取引の内容を示した見出しのことです。会計処理において、一般的な勘定科目は大きく5つに分けられます。
貸借対照表に表示されるのは以下の3つです。
・資産
・負債
・純資産
そして、損益計算書には以下の2つがあります。
・収益
・費用
勘定科目は、上記を基準に取引内容によって、自由に設定できます。しかし、いくら自由に設定できるといっても、ファクタリングは通常の取引とは異なる売掛債権売却の取引です。そのため、勘定科目をどのように設定したらよいのか、会計処理担当者は迷うものです。
ファクタリングの種類による会計処理のやり方
ファクタリングの会計処理は、ファクタリングの種類によってやり方が異なります。ここでは、以下のファクタリングの会計処理を紹介します。
・買取型ファクタリング
・保証型ファクタリング
・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
これら4種類のファクタリングの会計処理について、主に仕訳のやり方を説明します。
買取型ファクタリングの会計処理
会計処理において、買取型ファクタリングの会計処理は、どのようにすればよいか説明します。
買取型ファクタリングは、会社や個人事業主が所有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、現金化して受け取るサービスです。ただし、手数料分は差し引かれます。会社や個人の事情で、早めに現金を用意したい場合に利用することが多いものです。
この買取型ファクタリングは、さらに2種類に分かれます。利用する側とファクタリング会社側の2社で契約する2社間ファクタリング、この2社に取引先が加わる3社間ファクタリングです。
買取型ファクタリングの会計処理は、保有する売掛金の勘定科目を未収入金に変えることから始めます。未収入金とは、後で入金されるお金のことです。売掛金はファクタリング会社に譲渡したままで、受け取っていない段階を想定しています。
この場合の会計処理は以下のようになります。
・借方→未収入金
・貸方→売掛金
やがて、ファクタリング会社から、手数料を引いた分の売掛金が振り込まれたら、会計処理の方は以下に変更しましょう。
・借方→現金預金・売上債権売却損
・貸方→未収入金
因みに、現金預金とは手数料を引いた金額のことです。そして、売上債権売却損は手数料を指します。
保証型ファクタリングの会計処理
保証型ファクタリングの会計処理について説明します。
保証型ファクタリングは、万が一取引先から売掛金が入金されなかった場合に保証するサービスです。損害保険とも似ているサービスで、保証限度内で保証します。
この場合、取引先が売掛金を支払ったケースと支払えずに倒産したケースによって、会計処理の対応が分かれます。
まず、取引先が売掛金を支払ったケースを説明します。このケースの場合は、通常と同じ会計処理です。仕訳は以下です。
・借方→現金預金
・貸方→売掛金
次に取引先が倒産したケースの会計処理です。この場合は勘定科目が変わり、借方が貸倒損失、貸方は売掛金になります。
・借方→貸倒損失
・貸方→売掛金
2社間ファクタリング・3社間ファクタリングの会計処理
ここでは、2社間ファクタリングの会計処理を説明します。
まずは、ファクタリング会社と契約段階の会計処理です。
・借方→未収入金
・貸方→売掛金
未収入金にする理由は、ファクタリングは営業売掛金でなく、金融サービスだからです。
次にファクタリング会社から利用者側に入金があった際の会計処理です。
・借方→現金預金・売上債権売却損
・貸方→未収入金
そして、取引先から入金があった際の会計処理です。この場合は「預り金」の勘定科目を使用します。ファクタリング利用者がファクタリング会社に代わって、取引先から売掛金を回収する形になるからです。
この場合は借方が現金預金、貸方が預り金です。
・借方→現金預金
・貸方→預り金
さらに、入金された売掛金をファクタリング会社に支払う際の会計処理です。
・借方→預り金
・貸方→現金預金
2社間ファクタリングに取引先が加わる3社間ファクタリングの場合の会計処理は、2社間ファクタリングと同じです。
ファクタリングの会計処理の注意点
ここからは、ファクタリングの会計処理における注意点を3つ取り上げてみました。
・ファクタリング取引に税金はかからない
・決算期末をまたぐ場合は未入金でも課税される
・手数料の勘定科目である売上債権売却損を忘れないように
これらについて詳しく説明します。
ファクタリング取引には税金はかからない
ファクタリングは非課税取引なので、消費税はかかりません。なぜならば、ファクタリングは資金調達の一種で商品の売買取引とは異なるからです。
ファクリングで重要になる売掛債権の売却は「金銭債権」の譲渡という扱いです。たとえば、食品や文房具、家具などを売買するような通常の商品取引とは異なります。
仮に契約したファクタリング会社が手数料に消費税を上乗せしていたら、要注意です。悪徳業者の可能性があるので、取引を中止しましょう。
そのような事態にならないように、手数料に消費税がかからないことを確認しておいてください。手数料が通常より高い場合は、消費税分と言ってごまかしている可能性があります。
しかし、債権譲渡登記が必要なために司法書士に依頼する場合は、上記のケースと異なります。司法書士に報酬を支払うことになるからです。報酬には消費税が発生するので、会計処理においては、消費税の勘定科目が必要です。
決算期末をまたぐ場合は未入金でも課税される
ファクタリング会社と契約して、売掛債権を売却した代金が支払われるまでに決算期末をまたぐ場合もあるものです。その際、お金が入金されていなくても、売上は課税されます。ご注意ください。
つまり、売上を現金として受け取る前に、その売上額に課税される法人税、消費税を納めなければいけません。会計処理の際にも税金の勘定科目を用意しましょう。
手数料の勘定科目である売上債権売却損を忘れないように
ファクタリング会社には、手数料を支払うことになっています。そのため、会計処理の際は手数料も記録しておかなければいけません。
ファクタリング会社に支払う手数料の勘定科目は、売上債権売却損です。売掛債権売却損または、売掛債権譲渡損と呼ぶ場合もあります。
ケースバイケースですが、これらの勘定科目の扱いがないことも考えられます。その場合は、雑損失で会計処理しても大丈夫です。
ファクタリングの会計処理についてのまとめ
ファクタリング取引の際は、会計処理が難しいものですが、勘定科目や仕訳を抑えておけば大丈夫です。何度も繰り返し行うことで、会計処理に慣れてくるでしょう。
仕訳はファクタリングの種類によって異なるため、どんな種類のファクタリング取引であったか、きちんと把握しておく必要があります。また、ファクタリング取引に税金がかからないこと、決算期末をまたぐならば未入金でも売上に税金がかかること、ファクタリングに手数料がかかることも押さえておいてください。