最高裁で貸金と判断された給料ファクタリングをご存知でしょうか?
給料ファクタリングは、問題点や悪質業者が多いため、政府から注意喚起されています。令和5年2月には、最高裁でも貸金業と判断されました。その後は廃業する業者も多く、実際に逮捕者も出ています。
この記事では、その違法性について解説します。給料ファクタリングを知っておくことで、正しいファクタリングのあり方を理解できるものです。
給料ファクタリングは違法
給料ファクタリングは、給料を債権としてファクタリング会社に買い取ってもらい現金化する行為です。しかし、中には違法なヤミ金融業者も多く存在したので、給料ファクタリング業者は続々と廃業しています。
ここでは、どんな点が違法なのか、給料ファクタリングとはどんなものか、通常のファクタリングとの違いを考えてみます。
給料ファクタリングとは
給料ファクタリングは、給料を債権としてファクタリング会社に買い取ってもらい、給料が入ったら、ファクタリング会社にお金を払う仕組みです。給料日前に家の都合でまとまったお金が必要になった時、ローンなどを支払わなければならない時、大きな買い物をしてしまった時などに利用するケースなどが考えられます。
しかし、最高裁で貸金業と判断され、金融庁からも注意喚起されています。そのあおりを受けて多くの給料ファクタリング会社が廃業になっています。その背景には、あらゆる問題があり、実際に逮捕者も出ています。
給料ファクタリングが違法になる理由
給料ファクタリングが違法になるのは、法を無視したヤミ金業者が横行したからです。そのために逮捕者も出ました。
そもそも、給料ファクタリングといっても、従来のファクタリングとは異なります。給料ファクタリングはファクタリングではなく、貸金業にあたります。
通常のファクタリングとの違い
通常のファクタリングと給料ファクタリングの違いは、借金であるか否か、合法であるか否かです。
ファクタリング自体は、借金ではなく資金調達の一環です。それは国でも認められた合法行為なので、安心して利用できるものです。それに比べ、給料ファクタリングは、貸金登録済でない悪質な業者がはびこっていました。通常のファクタリングとは本質的に異なります。
金融庁による給料ファクタリングの注意喚起
ここでは、金融庁がどのようなことで、給料ファクタリングに関する注意喚起を行っているかわかりやすく解説します。
・ヤミ金融業者に要注意
・高額な手数料を払わされる
・最高裁で貸金と認められた
・貸金業者を検索できる
これら4点についてです。
ヤミ金融業者に要注意
金融庁は、ヤミ金融業者の注意喚起を促しています。そして、給料ファクタリングを利用しないようにと強く訴えています。その内容は以下です。
ヤミ金融業者は「給料ファクタリング」と自社を紹介し、個人から賃金債権を買い取って現金化します。このように、個人に関する債権を扱うのは貸金業です。
本来、貸金業の場合は、貸金業登録しなければいけません。しかし、中にはこの登録をしていないヤミ金融業者も存在します。こうした業者は法外な手数料を取るので注意が必要です。
人によっては、いろいろな事情があり、その月の給料のみでは生活が厳しい場合があります。そんな時、給料ファクタリングを利用すると助かるように感じてしまいます。
しかし、違法な上に高い手数料を取られるので、生活が余計に困窮してしまいます。給料ファクタリングによって、給料を上回る出費になるからです。
高額な手数料を払わされる
給料ファクタリングを促すヤミ金融業者は、かなり高額な手数料を取ります。それは年率で換算すると通常のファクタリング手数料の何倍にもなります。
こうした高額な手数料を取られてしまうために、生活が大きく破綻する場合も考えられます。そんな方たちの中には、家族に内緒で給料ファクタリングを利用し、後にバレてしまうこともあるでしょう。そのために家族関係にも亀裂が入ってしまうことも考えられるものです。
最高裁で貸金と認められた
ここでは、給料ファクタリングが最高裁で「貸付け」と認められた内容について説明します。
給料ファクタリングは、ヤミ金融業者が利用者にお金を貸す行為と認められました。その判断がなされたのは、令和5年2月20日です。このように貸金業と認められたのには、理由があります。
通常のファクタリングは、債権譲渡です。民法467条によると、債務者になる申込者の取引先企業にファクタリング会社は売掛金を請求できます。
これに対し、給料ファクタリングの場合は、給料をもらう会社員がファクタリング会社に、給料をもらう権利である賃金債権を譲渡することで、給料日前にお金を払ってもらえます。
しかし、通常のファクタリングとは異なり、給料ファクタリング業者側は、会社員に給料を支払う会社側とは、何の関係もありません。
労働基準法24条1項により、会社は労働者に賃金を支払う義務があるとなっています。そのため、会社の役目は会社員に給料を支払うことのみです。たとえ会社員が給料ファクタリングの会社に賃金債権を譲渡しても、会社には何の影響もありません。
そのため、給料ファクタリング業者は、万が一、会社員が用立てた給料分を返さなかったら、会社ではなく会社員に取り立てます。つまり、消費者金融と同じ個人を対象にした構造です。それを最高裁によって認められました。
登録貸金業者を検索できる
金融庁のホームページでは、登録貸金業者が検索できるようになっています。つまり、ここに載っていない貸金業者は、違法業者です。
給料ファクタリングの被害に遭った人も多かったため、金融庁の方でも、注意喚起に力を入れています。
そのために破綻したヤミ金融業者は少なくありません。こういった業者の多くは、違法の給料ファクタリングを行っていました。
貸金業者に関わることがありましたら、金融庁のホームページを見てみましょう。
給料ファクタリングに代わる資金調達
給料ファクタリングは、上記の理由で利用できません。そのため、ここではそれに代わる資金調達法を考えてみました。
・個人事業者向きの少額ファクタリング
・公的制度
この2点について説明します。
個人事業主向きの少額ファクタリング
個人事業主であれば、少額でも可能なファクタリングがおすすめです。ファクタリングは企業同士で行うことが多いものですが、個人事業主向きのファクタリングを行うファクタリング会社も存在します。
ファクタリングであれば、政府にも奨励されている資金調達法なので安心です。給料ファクタリングのようなヤミ金融業者とは異なります。取引先の売掛金を売掛債権として、ファクタリング会社に買い取ってもらいます。売掛金が支払われたら、ファクタリング会社にお金を払うという仕組みです。
取引先の企業にファクタリングを知らせたくないなら、債権の売主とファクタリング会社のみの2社間ファクタリングもできます。
また、手数料を安くしたい、売掛先の企業がファクタリングに理解がある場合は、3社間ファクタリングで取引先と3社で行うことも可能です。この場合、取引先が売掛金をファクタリング会社に支払います。
公的支援
公的支援として、生活福祉資金貸付制度を利用することも可能です。その内訳として以下の支援があります。
【総合支援資金】
・生活支援資金
・住宅入居費
・一時生活再建費
【福祉資金】
・福祉費
・緊急小口資金
【教育支援資金】
・教育支援費
・就学支度費
【不動産担保型生活資金】
・不動産担保型生活資金
・要保護世帯向け不動産担保型生活資金
・総合支援資金
・臨時特例つなぎ資金貸付
このような生活福祉資金貸付制度は、所得が低い人、高齢の方、障害をお持ちの方の生活を支えます。この支援を行うのは、都道府県の社会福祉協議会です。
貸付の対象になるのは、以下の方々です。
・他の機関からお金を借りられない「低所得者世帯」
・障害者手帳を交付された
・65歳以上
減収などによる生活困窮者が生活の立て直しができるために行う支援制度です。平成21年の改正により、柔軟な貸付ができるようになりました。貸金の種類を整理したり、貸付利子を引き下げたりしています。
給料が減り、生活に困窮してしまったという場合は、公的機関に相談することをおすすめします。給料ファクタリングのような高額な手数料は取られません。
給料ファクタリングは違法かどうかについてのまとめ
給料ファクタリングは、最高裁の判断により、従来のファクタリングではなく、貸金とされています。その中でもヤミ金融業者のように、高額の手数料を取る悪質な手口があります。そんな業者は貸金登録をしていない違法な業者です。
最高裁の判断により、破綻した給料ファクタリングは多いものです。しかし、中にはまだ営業しているヤミ金融業者いますので、お気を付けください。
金融庁のホームページには、登録済の貸金業者の記載があります。疑わしい場合は、こちらでチェックしてみましょう。