ファクタリングサービスという言葉を聞いたことはありませんか?聞いたことはあるけれども、実際にどんなサービスのことなのか見当がつかないと思う方は少なくありません。
ファクタリングサービスは企業間で行う売掛金を現金化するサービスですが、個人で行う給与ファクタリングのサービスもあります。この記事では、そんなファクタリングサービスはどのように行われるのか説明します。
そして、世の中にはびこる悪質なファクタリングサービスについても言及します。悪質なファクタリングサービスは、どのような手口で行われるものか、実際の裁判事例も併せて紹介します。
また、万が一、悪質なファクタリングサービスにあってしまった場合や疑わしいファクタリングサービス業者に遭遇した場合は、どこに相談したらよいか説明します。
正しい合法的なファクタリングサービスのみでなく、悪質な違法のサービスについても理解しておきましょう。
ファクタリングとはどんなサービス?
ファクタリンサービスは、売掛金を現金化するサービスです。
因みに売掛金とは、取引先からまだ受け取っていない未入金の代金のことです。
日本は掛取引と言われる信用取引が多いため、商品やサービスの提供が先で入金が後に回されます。
入金は早くて1ヶ月後、遅くて数ヶ月後という場合が多いです。
この間に発生するのが売掛金又は売掛債権です。
つまり、お金を受け取る権利を意味します。
企業としては、早めに売掛金を受け取りたいものです。
資金があれば、新しい事業に乗り出したり、ビルの家賃や人件費といった出費に役立てたりできます。
そのためには、ファクタリングサービスを利用して早めに売掛金を現金化するのもありです。
また、ファクタリングサービスは以下の2種類の契約があります。
この2つは似ているところがありますが、異なる点があります。
・2社間ファクタリング
・3社間ファクタリング
それぞれの特徴について説明します。
2社間ファクタリング
2社間ファクタリングは、事業側とファクタリング会社の2社で行う取引です。
まず、売掛債権をファクタリング会社に現金化で買ってもらいます。
そして、取引先の企業から商品やサービスの代金が支払われたら、その売掛金をファクタリング会社に渡します。
つまり、取引先から振り込まれたお金はファクタリング会社が受け取るべきものです。
万が一、自社のお金として使いこんでしまったら、横領罪になります。
たとえ、資金繰りに困っているとしても、他社のお金を使い込むことはNGです。
3社間ファクタリング
3社間ファクタリングは、事業側、ファクタリング会社の他に売掛先の取引企業の3社で結ぶ契約です。
2社間よりも手数料が安くなります。
また、2社間と異なるのは、ファクタリング会社が売掛債権を買い取る前に売掛先の取引企業の承諾を得るところです。
売掛先企業は、商品の代金をファクタリング会社に支払うことになります。
ここで、事業側としては、取引先の売掛先企業に不安を抱かせてしまうのではないかと心配になるかもしれません。
たとえば、「あの会社は資金が乏しく困っているため、こうしたファクタリングサービスを利用しているのではないか」など。
こうした懸念を抱かれてしまうと、今後の取引に支障が出るのではないかと考えるのは無理もないことです。
しかし、それは無用です。
ファクタリングサービスは違法ではなく、国からも推奨されており、海外でも多く取り入れられています。
日本ではまだ取り入れる企業が少ないので、それほど広く知られていませんが、今後は広がっていく可能性があります。
もしも取引先が疑念をもったら、この点についてわかりやすく説明する必要があります。
国に認められているサービスとわかれば、取引先も納得してくれるはずです。
3社間の場合は、このように取引先企業の理解促進が必要です。
違法のファクタリングサービスとは
上記で説明しましたように、ファクタリングサービスは法律で認められている、企業にとって便利な取引ですが、これを利用した違法で悪質な取引も存在します。
正しい取引を行うためには、こうした違法の取引の現状も理解しておきましょう。
ファクタリングサービスとは、事業者の資金調達のための方法で、債券の売買を行う債権譲渡契約です。
しかし、違法のファクタリングサービスの多くはこうした法律にのっとった取引をしていません。
多くはヤミ金業者による貸付です。
それには、高い利息などが発生するので気を付けたいものです。
とくに狙われているのは、中小企業の経営者と言われています。
ここでは、どんな場合の取引が違法ファクタリングサービスと考えられるか紹介します。
受け取る金額が債権額と比較してかなり安い
受け取る金額が債権額と比較してかなり安い場合は、違法業者による取引が疑われます。
とくに狙われやすいのは、ファクタリングサービスに慣れていない中小企業の経営者です。
貸金業に登録していないヤミ金業者が、ファクタリングサービス業者を装っている可能性があります。
実際には、ファクタリングサービス業者から、受け取る債権の買取金額が手数料を考慮したとしても、かなり安い金額になることはありません。
仮に契約書が「債権譲渡契約(売買契約)」となっていても疑った方が良いでしょう。
売主が債権を買い戻す
売主が債権を買い戻すのもあり得ないことです。
この場合もヤミ金業者によるなりすましの可能性が考えられます。
売主が債権を買い戻すという行為は、売主がファクタリングサービス業者に自腹を切ってお金を払うことです。
これは本来のファクタリングサービスの意味から外れてしまいます。
つまりファクタリングサービスは貸金業とは異なるため、仮に取引先からの入金が遅れたり、なかったりしても売主がファクタリングサービス業者にお金を払う必要はありません。
給与ファクタリングサービスは危険
給与ファクタリングサービスは、違法な貸金業、つまりヤミ金業者が関与すると考えられているので、危険です。
このサービスは「給与ファクタリング」を名乗っていますが、実際はヤミ金融業者です。
給与ファクタリングは、労働者がファクタリングサービス業者に手数料を引いた賃金債権を現金で買い取ってもらってもらうことです。
そして、労働者は会社から給料をもらったら、ファクタリングサービス業者に賃金債権のお金を返却します。
この行為は貸金業とみなされます。
この場合、ファクタリングサービス業者は高い手数料を取っている可能性があります。
仮にこうした誘いを受けたら、ヤミ金業者を疑った方が賢明です。
悪徳ファクタリングサービス業者の裁判の事例
ここからは、悪徳ファクタリングサービス業者の裁判の事例をお届けします。
いずれもファクタリングサービス業者が貸金業として取引を行ったと判断されたものです。つまり、その違法性や悪質性を裁判で認められたと言えます。
平成29年大阪地裁の判決
ファクタリングサービス業者は、譲渡対象債権が不払いになるリスクを背負っていません。そのため、金銭消費貸借契約になる。
令和3年東京高裁の判決
債務者が弁済しなかったら、売主が負担して債権額よりも多い金額をファクタリングサービス業者に支払うという書類を作成していた、またファクタリングサービス業者は不払いのリスクを背負っていないことから、貸金業法上の貸付になる。
令和3年名古屋地裁
譲渡債権の性質、債券譲渡日から支払い日までの期間が短いことなどから、債務者の非は認められない。そのため、貸金法上の貸付になると判断された。
令和4年3月東京地裁
ノンリコースの規定があるが、抗弁事由がなく、支払えない状態ではない、また、破産手続きの原因はないなど、債務者は不払いになる可能性は低い。それでも売主に債務の保証を求めているように考えられるため、金銭消費貸借契約と判断できる
このように、悪徳ファクタリングサービス業者の非は裁判で認められています。
悪徳ファクタリングサービスを疑う場合はただちに相談を
上記で説明した給与ファクタリングのようなファクタリングサービスは、注意したいものです。
このサービスは貸金業になるので、ファクタリングサービスとは異なります。
仮に貸金業登録を受けていないヤミ金融業者を利用して、上記のようなファクタリングサービスを利用すると、高額な手数料や悪質な取り立てで困ってしまうことがあります。
その結果、受け取るべき給与額より少ない金額しか残らなくなり、家賃が払えない、食費が払えないなど、生活に支障をきたしてしまうケースも少なくありません。
実際に給与ファクタリングが貸金業に認められた判決例もあります。
万が一、ファクタリングサービスを名乗った悪質な金融業者かもしれないと懸念を抱いたら、ただちに信用できる機関に相談しましょう。
信用できる相談機関は以下です。
・金融庁の金融サービス利用者相談室
・日本賃金業協会
・警察
・消費者センター
・消費者センターの消費生活相談窓口
こうした信用できる機関に相談して、適切な判断をしてもらうことが大切です。
「ファクタリングとはどんなサービス?違法な業者・裁判事例をご紹介」のまとめ
ファクタリングサービスは、企業が取引先企業に商品やサービスを提供した売掛金を現金化するサービスです。
日本では、商品やサービスの提供が先、支払は後となっていることが多く、企業によってはすぐに資金が得られず、経営に支障がある場合も考えられます。
そんな場合に助かるサービスです。
しかし、中には、悪質なファクタリングサービス業者も存在します。
債権より安い金額だったり、売主が債権を買ったりなど、いかにも怪しい手口を使います。
このように、怪しいと思われるファクタリングサービス業者に遭遇したら、警察や消費者センターなどに相談して被害を食い止めるようにしましょう。