従来から日本の商取引では手形が活用されていましたが、紙の手形の発行は2006年を最後に停止されました。
これに伴い、現在に至るまで日本の商取引のメインとなっているのが掛け取引で、掛け取引には手形に代わって管理が非常に楽な売掛債権が活用されています。
手形と売掛債権はどちらも決済日に取引先から入金されるような仕組みになっており、それまでの期間は取引先が、手形の場合は紙面、売掛債権の場合は権利を所有しておく決まりになっています。
又、手形の場合は手形割引と呼ばれる方法、売掛債権の場合はファクタリングと呼ばれる方法で、それぞれを現金化するための資金調達方法も確立しています。
この記事では、手形を現金化する資金調達方法である手形割引と、売掛債権を現金化する資金調達方法であるファクタリングのそれぞれの違いなどを詳しく解説していきます。
手形取引をまだ行っており、お手元に手形を所有している事業者様や、売掛債権を所有している事業者様は是非この記事をご一読頂き、手形割引とファクタリングの違いなど、ご理解いただけましたら幸いです。
手形割引とは
手形割引とは、決済日前の手形を金融機関や手形割引業者に売却して、現金化する資金調達方法です。
手形割引では、手形割引専門業者と呼ばれる業者に手形を買い取ってもらい、手数料や利息相当分の割引料を差し引いた残りを現金で受け取ることが可能です。
本稿では、そんな手形割引に関して、その特徴を解説していきます。
主な特徴としては、下記になります。
・手形取引にて利用される
・貸し倒れリスクは利用者の責任
では、一つずつ解説していきます。
手形取引にて利用される
手形割引は、手形取引でなければ当然ながら利用することは出来ません。
現在の企業間取引においては手形が利用されることはかなり少なくなってきており、ファクタリングのような掛け取引では活用できないため、不便さを感じる方もいらっしゃいます。
貸し倒れリスクは利用者の責任
手形割引で現金化した後に、決済日を超えても手形分の金額が回収できず、手形が不渡りになった場合、手形割引の利用者には返還義務が生じます。
額面の金額に利息をプラスした金額を、手形を売却した金融機関、または手形割引専門業者に返さなければなりません。
ファクタリングとは
ファクタリングとは、利用者が掛け取引よって所有している決済前の売掛債権を、ファクタリング会社と呼ばれる専門業者に譲渡し、手数料を差し引いた金額を現金化する資金調達方法です。
本稿では先程の手柄割引のように、ファクタリングの特徴を詳しく解説していきます。
・掛け取引による請求書の現金化
・貸し倒れリスクはファクタリング会社の責任
では、一つずつ解説していきます。
掛け取引による請求書の現金化
ファクタリングは先程の手形割引と違い、掛け取引における請求書の現金化になります。
又、請求書はあくまで売掛債権の内容を書面化しているものに過ぎず、売掛債権には手形のように形があるわけではありません。
ですので、ファクタリングの契約としては手形割引と同じく売買契約になりますが、手形割引と違って売掛債権の権利を利用者からファクタリング会社へ譲渡する、債権譲渡によって取引が行われます。
貸し倒れリスクはファクタリング会社の責任
ファクタリングと手形取引の違いとして最も大きな違いは、売掛債権の貸し倒れリスクはファクタリング会社が負う点が挙げられます。
ファクタリングは前述の通り、売掛債権の権利を譲渡しています。
ですので、貸し倒れリスクに関しても売掛債権と同じくファクタリング会社へ譲渡されます。
手形割引とファクタリングの違い
さて、ここまでは手形割引とファクタリングの仕組みやそれぞれの特徴を解説してきました。
本稿では手形割引とファクタリングの違いに関して、詳しく解説していきます。
主な内容としては、下記になります。
・売掛債権の種類
・現金化のスピード感
・手数料率
・審査基準
・貸し倒れリスクの考え方
では、一つずつ解説していきます。
売掛債権の種類
ファクタリングでは売掛金を現金化しますが、手形割引では受取手形を現金化することが大きな違いになります。
売掛金は、あくまで将来に支払いが確定している金額、という定義になりますが、期限内に支払うことが法的に保障されているものではありません。
仮に売掛先の都合で支払いが実施されなかったとしても、強制的に売掛金を回収するには、裁判での確定判決が必要になります。
一方、手形割引で売買される受取手形に関しては、決済されなかった時点で社会的信用を失い、半年間の間に二度の不渡りで、銀行取引が継続できなくなるという、重大な罰則が科せられています。
ですので、売掛金よりも手形の方が支払いの意識は当然高く、未回収リスクが低いと言えます。
現金化のスピード感
ファクタリングの場合、最短即日での現金化が可能です。
一方、手形割引の場合は、必要書類の提出や手続きなどが比較的煩雑なため。ファクタリングほどスムーズに資金調達できない違いがあります。
即日での現金ニーズにはファクタリング、大きな金額で融資よりも早く資金調達したい場合には手形割引が適切でしょう。
手数料率
ファクタリングでは手数料が発生し、手形割引では割引料が発生することも、違いとして挙げられます。
それぞれの割合としては、手形割引の場合は年利で約1.5~5.5%ほどで、日割りで費用が発生します。
一方ファクタリングの場合は、3社間ファクタリングであれば1%~9%、2社間ファクタリングの場合は10%~20%の手数料相場で、一回の取引ごとに発生します。
このように、手形割引とファクタリングには、手数料の違いがあります。
審査基準
ファクタリングも、手形割引もそれぞれ審査が実施されますが、この審査基準も違いと言えるでしょう。
ファクタリングで重視されるのは、売掛先の信用力になりますので、仮に利用者側が赤字決算であっても、売掛先の信用度が高ければ、問題なく審査に通過することが出来るでしょう。
一方、手形割引の場合は手形の売却ではあるものの、厳密には融資の扱いになりますので、審査では手形の振出人ではなく、手形を売却する利用者の信用情報に関与しますし、利用者の信用力が審査通過のためには非常に重要になります。
売買の契約か、担保とした融資になるか、この点はファクタリングと手形割引の大きな違いと言えるでしょう。
貸し倒れリスクの考え方
ファクタリングは、売掛債権の権利そのものを譲渡する形式の売買契約に基づいて取引されますので、未回収リスクも売掛債権の権利と共に譲渡されます。
一方、手形割引は、あくまでも受取手形を担保とした融資になりますので、未回収の場合は手形の額面金額に利息まで合わせた金額を、未回収の場合は利用者が弁済します。
この、貸し倒れリスクの考え方が、ファクタリングと手形割引の大きな違いとなります。
手形割引とファクタリングに共通するメリット
ファクタリングと手形割引にはこのように様々な違いがありますが、共通するメリットもあります。
本稿では、ファクタリングと手形割引の共通するメリットに関して詳しく解説していきます。
・売掛債権の流動化
・資金繰りの改善
・借り入れよりも早く資金調達
では、一つずつ解説していきます。
売掛債権の流動化
手形割引とファクタリングは、売掛債権の流動化という共通点があります。
手形割引は融資であり、ファクタリングは売買契約という違いがあるものの、どちらも売掛債権の流動化による資金調達であるという共通のメリットがあります。
資金繰りの改善
資金繰りの改善に非常に有効な点は、手形割引とファクタリングの共通のメリットと言えます。
どちらも決済前の売上金を先んじて現金化することによって、支払サイクルを短縮して資金繰りを改善できるメリットがあります。
借り入れよりも早く資金調達
手形割引とファクタリングは、多少スピードの差はあれ、どちらも銀行や金融機関からの借り入れよりも、早く資金調達できます。
緊急性の高いシーンでの資金調達ニーズに対応できる点が、共通のメリットと言えるでしょう。
ファクタリングと手形割引の違いのまとめ
ファクタリングは売掛金を、手形割引は受取手形を、それぞれ決済日よりも前に現金化する資金調達方法です。
しかし、売掛金と比較して受取手形は振出人の不渡りリスクがかなり重大なため、未回収リスクがかなり低いという特徴があります。
その代わり、ファクタリングはあくまで売掛債権の売買契約である一方、手形割引は融資に該当します。
又、ファクタリングは売掛債権の未回収があっても利用者がリスクを負わないのに対し、手形割引は満額+利息分の弁済リスクを利用者が負うことで資金調達します。
この記事をご一読頂いた事業者様は、ファクタリングと手形割引の違いやメリットを加味した上で、状況に合わせてご利用をご検討頂けましたら幸いです。